Ep.6 / THE ELUSIVE NIGHT WATCH #6(脚本)
〇荒れた公園
久常紫雲「ナイトホークのヴィランハンター攻略WEB生へようこそ! 」
久常紫雲「では早速、今日の攻略ヴィランを紹介しよう」
久常紫雲「こいつだ!」
蝙蝠を思わせる服を着た凶悪な面相のマッチョ「BadBat」が現れる。
コメント欄では、視聴者たちが大盛りあがりしている。
『BatBadかよ。無理ゲー』
『無謀。骨は拾ってやる』
久常紫雲「そう。1週間前に実装」
久常紫雲「でもあまりの難易度に全世界10万人のヴィラハンプレイヤーの誰も攻略できていない」
『10万? そんなにいる?』
『ヴィラハン、マイナーだよなぁ』
『ゲームとしては、クソゲーだし』
久常紫雲「まぁ確かに」
久常紫雲「ARで表示されるヴィランを、プレイヤー自身の格闘技術を駆使して倒せって」
久常紫雲「・・・ゲームとしては、たいがいだよね」
『BadBat、格闘技のプロでもダメだったぜ』
『その動画見た』
久常紫雲「むふふ。しかし我に秘策あり!」
久常紫雲「というわけで、イッツ・ショータイム!」
画面に「Fight!」の文字が浮かび上がる。
久常紫雲「まずは小手調べ! いくぞっ!」
距離を詰め、連続パンチを放つが、BadBatは素早く動き、全弾回避する。
久常紫雲「はやっ! いまのコンボかわすか!」
『ナイトホーク、やっぱすげぇな』
『でも全然当たらねぇ』
『国内トップレベルでこれか』
直後、BadBatが反撃を開始してくる。
猛烈な速さだ。
残像をまとった怒濤の連続パンチが、僕の身体に命中する。
体力ゲージが一気に、残り20%ほどに激減した。
『全然ダメじゃん!』
『BadBat速ぇえ!』
久常紫雲「うひゃあ! 速っ! いてて! 痛くはないけどライフが! やばいやばい!」
僕はたまらず、BadBatの間合いから逃げだした。
『逃げた』
『無様すぎる』
BadBatから少し離れたところで、再び構える。
久常紫雲「はぁはぁ。 このように、マトモにやってもダメです」
久常紫雲「普通に手も足も出ません」
『せやな』
『人間の反応速度を超えてるって噂あるね』
久常紫雲「そうそれ。反応速度」
久常紫雲「人間は状況を見てから身体が動くまでに、約0.03秒ロスがあるけど、たぶん奴にはそれが無い」
『やっぱ無理ゲーじゃん』
『つまり、クリア不能?』
久常紫雲「というわけで、ここからが秘策!」
久常紫雲「見よ! この充実のアイテム欄を!」
僕は無数のアイテムが羅列されたウィンドウを表示させる。
『アイテム多すぎィ!』
『どうするのこれ?』
久常紫雲「手榴弾に煙幕に地雷など。 このアイテムを全部一度に使うのさ」
久常紫雲「実行!」
直後、BadBatの周囲で、爆発や閃光、煙幕が一気に発生する。
さながら、夜空に咲く花火のようだ。
『たまやー!』
『かぎやー!』
『でもアイテムじゃダメージ入らなくね?』
久常紫雲「その通り。 このゲーム、アイテムじゃ敵を倒せない」
久常紫雲「目的は、別にあるのさ」
その時、BadBatの動きが止まり、小刻みに震えはじめた。
久常紫雲「今だ! 勝負は一瞬! うおおっ!」
僕は一気に距離を詰め、怒濤の連続攻撃を加える。
無数の「HIT!」のロゴが踊る。
久常紫雲「もう一撃! 」
久常紫雲「はぁ! やったか!?」
BadBatの震えが止まると同時に、体力ゲージがぐい~んとゼロになった。
「YOU WIN!」
と勝利のロゴが画面に大きく表示される。
久常紫雲「いやったぁあああ!」
コメントも歓喜と祝福の弾幕で埋まる。
『おめでとう』
『おめでとう』
久常紫雲「ありがとう! ありがとう!」
『どういう裏技?』
『やり方は?』
久常紫雲「ネタばらしをすると、さっきのは処理落ち」
久常紫雲「アイテム一斉使用で処理速度以上の情報が発生したから、サーバに負荷がかかって動きが止まったわけ」
ビーーーー!!
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