エピソード4(脚本)
〇けもの道
PM23:00
倉田は花と一緒に山林に向かう。
倉田 薫「ねぇ、花ちゃん・・・」
倉田 薫「ほんとにここがお気に入りの場所なの?」
倉田 薫「何にもないし、危なくない?」
倉田はスマホのライトを頼りに、
足場の悪い林の中を
花の後に付いて歩いていた。
花「危ないですけど、もうすぐで着きますから」
倉田 薫「ふ~ん、そうなんだ」
倉田 薫「そういや、山林で思い出したんだけどさ」
倉田 薫「若い男が山林で殺害された事件知ってる?」
倉田 薫「あれさ、犯人捕まってないじゃん?」
倉田 薫「ったく、警察は何やってんのかねぇ 不祥事ばっか起こしてさ」
倉田 薫「こないだもどっかの警部補がさ、 勤務中に動画観てたらしいよ?」
倉田 薫「って、花ちゃん聞いてる?」
花「えぇ、聞いてますよ。 ほんと早く犯人捕まえてほしいですね」
倉田 薫「そうだよ」
倉田 薫「もしかしたら、 次に殺されんの俺かもしんねーしさ」
倉田 薫「まっ、それはないか」
静かな山林の中に、倉田の笑い声が聞こえ
花は進めていた足を止めた。
倉田 薫「花ちゃん、どしたの?」
〇森の中
花「目的地に着きましたよ。倉田さん」
倉田 薫「えっ?ここが?」
花「はい」
花「ここがお気に入りの場所で、 誰にも邪魔されない場所です」
花は目の前に咲いている一輪の花に歩み寄る
花「ねぇ、倉田さん。 この花、何の花か知ってますか?」
倉田 薫「花?知んねーな」
花「この花は、月下美人って花なんです」
倉田 薫「月下・・・美人?」
花「はい。月下美人の花言葉は、艶やかな美人。そして儚い恋って意味なんです」
倉田 薫「艶やかな美人か。 まるで、花ちゃんみたいだね」
花「本当ですか?」
倉田 薫「あぁ、ほんとに花ちゃんはキレイだよ」
倉田は、自分の顔を花の顔に近付け
口付けをしようとする。
だが花は、そんな倉田の顔をすかさず避けた
花「・・・けど、この花には もう一つ別の花言葉があるんです」
倉田 薫「別の花言葉?」
花「はい。危険な快楽という意味が」
倉田 薫「へぇ、危険な快楽かぁ。いいねぇ」
倉田はその意味を知り、一瞬
ニヤついた表情を見せた。
花「倉田さん、私に声掛ける前 色んな女性に声掛けてましたよね?」
花「それはどうしてですか?」
倉田 薫「実はさ、俺マッチングアプリで 出会いを探してたんだけど」
倉田 薫「いい女がいなくてさ」
倉田 薫「で、この際ナンパでもして イイ女見つけようかなって思って 声掛けまくってたの」
倉田 薫「そしたら、とびきりキレイな花ちゃんを 見つけて、声掛けたってわけ」
花「それは恋愛の為?それとも下心ですか?」
倉田 薫「んなの、どっちでもいいじゃん」
倉田 薫「けどさ、大抵の男は下心ありで 女に近付いて来るようなもんだよ?」
花「じゃあ、倉田さんも その中の一人ってことですか?」
倉田 薫「もう、そんな難しい話しはいーじゃん」
倉田 薫「折角、静かな場所で 誰にも邪魔されない場所に来てんだからさぁ」
花「倉田さんだけは、そんな人じゃないって 思ってたのに残念です」
花「倉田さんと会うのは、 これが最後かもしれませんね」
倉田 薫「何ごちゃごちゃ言ってんだよ。 そんな薄着で誘うアンタがわりぃんだろ?」
倉田は強引に、花を強く抱き寄せ
キスをしようとした。
その時
闇夜の山林に、倉田の叫び声がこだました。
ニアミスの寺島刑事は気付かぬまま、またもや次なる事件が……
花さんが口にする意味深な言葉、その真意が気になってしまいます。
捜査をくぐり抜け、殺害していく花。短いストーリーの中にも緊張感が走ります。