〇ハイテクな学校

〇おしゃれな教室
久常紫雲「おわった！ 疲れた！ さぁ飯だ！」
御子柴歩「授業中、ずっと寝てたくせに」
久常紫雲「おぉ。歩。いや、昨日は大変でさ」
御子柴歩「またゲーム？ ヴィランなんとかって」
久常紫雲「ヴィランハンター。 それもだけど、昨日はあれだよ」
久常紫雲「また出たんだよ」
久常紫雲「巷で話題の正義のヒーロー、ナイトウォッチが！」
久常紫雲「近所に！ 夜中に！ 現場すごくて」
御子柴歩「例の、犯罪組織を襲ってまわってるっていう、仮面の怪人？」
御子柴歩「しゅーちゃん、そういうのやめなって。 この街の治安、本当にやばいんだから」
久常紫雲「だからヒーローが必要なんだって。 でさ、昨日・・・」
久常紫雲「ネットの目撃情報あったんで、ヤクザの事務所行ったら・・・ほら！」
　　昨日撮った、ビルの上に立つNIGHT WATCHの写真を歩のAR端末に表示させる。
久常紫雲「このあとすぐ、いなくなっちゃったけどね。 もっと近づければなぁ」
辻崎美結「しゅーちゃんは相変わらず、ヒーローお馬鹿だね・・・」
辻崎美結「もう自分でなっちゃえば？」
久常紫雲「美結さんや。 ヒーローは遠くにありて想うもの、さ」
久常紫雲「そんな根性もないし」
辻崎美結「昔のしゅーちゃんならワンチャン？」
久常紫雲「お馬鹿なガキ大将時代は黒歴史！」
久常紫雲「人間は成長するものなの。 ね。歩」
御子柴歩「まぁね」
　　歩のイケメンスマイルに教室の女子生徒たちが反応する。
　　キャーッ！ 歩くーん！
久常紫雲「イケメンは爆発しろ！　 昔は可愛げがあったのに」
久常紫雲「そんなことより、昼飯だ！」
久常紫雲「・・・って、あれ。 鞄に弁当が、ない？」
辻崎美結「あー。またやっちゃったね」
辻崎美結「忘れんぼ怪人。朱丹(すに)ちゃんに怒られるぅ」
　　僕のAR端末に着信音と共にメールが届く。
　　「お弁当。裏庭。朱丹」
久常紫雲「ううっ・・・呼び出しきた」
御子柴歩「妹に叱られるとか、ご褒美じゃん？」
久常紫雲「実妹がいないやつは黙っとれ」

〇野球のグラウンド
久常紫雲「その、朱丹。あの」
久常朱丹「・・・手間かけさせるな。クソ兄貴」
久常朱丹「・・・お弁当、さっさと持ってって」
　　と、弁当箱を２つ僕に渡してくる。
久常紫雲「あ、ありがとう・・・」
久常朱丹「お前のためじゃない。あんたの分はついで」
　　そのとき、歩と美結がやってきた。
御子柴歩「おーい！ 朱丹ちゃん。久しぶり！」
久常朱丹「あ、あゆ、歩しゃ、歩先輩！」
　　そう。こいつは、そうなのだ。
　　僕は意地悪く笑い、朱丹を歩の方に勢いよく押すと、歩はスマートに朱丹を受け止めた。
御子柴歩「おっと。大丈夫？ 朱丹ちゃん？」
久常朱丹「えっ。あっ。その・・・」
久常紫雲「歩！ 朱丹がたまには、自分で弁当、渡したいってよ！」
久常朱丹「なっ！ クｓ・・・おにーちゃん！？」
御子柴歩「本当？ 嬉しいなぁ。 いつも、しゅーちゃん経由だから」
　　歩のイケメンスマイルが炸裂した。
　　朱丹は赤面し目をぐるぐるさせている。
久常朱丹「は、はい！ これ、おべんとれす！」
久常朱丹「あ、あたひはこれで！ 失礼しまふ！」
　　パニクった朱丹は、歩に弁当を押しつけると、脱兎のごとく逃げだした。
久常紫雲「フッ。わが妹ながらチョロい」
辻崎美結「しゅーちゃん、意地悪。 だから嫌われるんじゃないの？」
御子柴歩「年頃の子は難しいよね。お義兄さん？」
久常紫雲「お義兄さん言うな」
久常紫雲「うちのツンデレ妹貰うつもり？　 イケメン大明神？」
御子柴歩「イケメン大明神としては、それでみんなとの、今の関係が変わっちゃうのは嫌だなぁ～～って」
御子柴歩「俺たち、ズッ友だし」
久常紫雲「女子か！ あとネタが一世代古い！」
御子柴歩「朱丹ちゃんも、同じだと思うけどね」
御子柴歩「まぁ、告白されたら、誠実に応えますとも」
久常紫雲「・・・お前に告白するって、女子の間で死亡フラグらしいんだが」
御子柴歩「振るのも、誠実さのうちだよ」
久常紫雲「ぐぬぬ。しれっと。余裕たっぷりに。 やっぱイケメンは敵だ！」
御子柴歩「なにその敵意。 羨ましいなら彼女作れば？」
御子柴歩「そうだ。明日来るっていう転校生。 噂だと美少女らしいよ？」
御子柴歩「この経験豊富なイケメン大明神が、サポートしようか？」