月下美人

ホマ

エピソード3(脚本)

月下美人

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〇警察署の廊下
  警察署に戻ると、長谷川が待っていた。
長谷川「お疲れさん。寺島、何か分かったか?」
寺島「いや、トゲの付いた植物も 一切見当たりませんでした」
長谷川「そうか」
寺島「ここまで犯人に繋がる糸口が無いと 正直、犯人を捕まえる自信がありませんよ」
長谷川「弱気になってんじゃねぇ!!」
長谷川「寺島、俺との約束忘れたのか!?」
長谷川「居酒屋で、一緒に犯人捕まえるって お前言ってたじゃねぇか」
寺島「確かに言いましたけど、難しすぎませんか?指紋も凶器すらも見つかりませんし──」
長谷川「だから諦めんのか?」
長谷川「遺族はな、犯人逮捕を望んでるんだ。 清水だって言ってただろ?」
寺島「・・・」
長谷川「俺は諦めねーぞ。 犯人捕まえずして死んでたまるか」
長谷川「寺島、今日はこれで帰れ。 そのまんまじゃ風邪引くぞっ」
寺島「はっ、はい・・・」
  長谷川に言われ、寺島は
  そのまま署を後にした。

〇森の中
  数日後、宮間の遺体は遺族に引き取られ
  葬儀はしめやかに行われた。
  再び殺害現場を訪れた寺島は
  花束を殺害現場に手向け、手を合わせる。
  その時
山林ボランティア「こんにちは。こんな所で何してるんですか?」
  年配の男性が、寺島に声を掛けてきた。
寺島「私、県警の寺島と申します」
寺島「今日は、こちらで亡くなられた 被害者の方々に花束を手向けに参りました」
山林ボランティア「そうでしたか。暑いのに大変ですね」
寺島「失礼ですが、あなたは?」
山林ボランティア「私は、ここの山林ボランティアの者です」
山林ボランティア「散歩がてらに、 ゴミ拾いや草むしりなんかをしてましてね」
寺島「そうだったんですね。暑い中、ご苦労様です」
山林ボランティア「犯人、まだ見つからないんですか?」
寺島「──はい。凶器も指紋も見付からず、」
寺島「目撃者もいないことから 捜査が行き詰まっておりまして・・・」
山林ボランティア「確かに、ここの山林は 滅多に人など来ませんからね」
寺島「そうなんですよね」
寺島「ですが、ご安心下さい。 必ず我々が捕まえますから」
寺島「更なる被害者が出ない為にも、 全力で捜査致します」
山林ボランティア「頼みますよ?刑事さん」
寺島「はい。しっかし、 きれいに草むしりされてるんですね」
寺島「お一人で手入れされてるんですか?」
山林ボランティア「さすがに一人では無理ですよ」
山林ボランティア「何人かで定期的にしてるんです。でないと、草が生い茂って大変ですからね」
寺島「なるほど」
寺島「この花は抜かないんですか? 萎んでますけど・・・」
山林ボランティア「今は萎んでますが、この花は 夜になると咲くんですよ」
山林ボランティア「"月下美人"って花、知りませんか?」
寺島「月下美人ですか?聞いたことないです」
山林ボランティア「この花は年に数回しか咲かない、 白くてキレイな神秘的な花なんですよ」
山林ボランティア「花言葉も良くてね」
山林ボランティア「なんて言う花言葉だったかな。 ちょっと忘れちゃいました」
寺島「神秘的な花かぁ・・・ 一度見てみたいな。咲いてるとこ」
山林ボランティア「見る価値はあると思いますよ。何しろ、 咲く時間も限られてるんで」
山林ボランティア「あれ?おかしいな・・・」
寺島「どうしました?」
山林ボランティア「いや、この月下美人・・・」
山林ボランティア「花弁が白じゃなくて、赤っぽい。 こんな月下美人は初めてだ」
寺島「赤っぽい月下美人が 咲くとかではないんですか?」
山林ボランティア「いや?この花は白にしか咲かないはずだ」
山林ボランティア「妙だな・・・」
  寺島とボランティアの人は、赤く色付いた
  月下美人を暫く黙って見ていた。

〇警察署の食堂
  署に戻り、食堂で昼食を済ませていると
  長谷川が現れた。
長谷川「おっ、寺島。帰ってたか」
寺島「長谷川刑事、お疲れ様です」
長谷川「お疲れさん。お前、今朝どこに行ってた?」
寺島「例の殺害現場です。 花を手向けに行ってました」
長谷川「そうか」
寺島「そこで、 山林ボランティアの方に会ったんです」
長谷川「山林ボランティア?」
寺島「はい。散歩がてらに 草むしりやゴミ拾いをされてるみたいで、」
寺島「定期的に何人かで 手入れをしてるそうなんです」
長谷川「そうなのか・・・」
寺島「まぁ、それだけなんですけど・・・」
長谷川「それだけでも、 収穫は収穫なんじゃねーのか?」
長谷川「寺島。良くやったな」
寺島「はい」
寺島「ハセさん、」
長谷川「ん?何だ?」
寺島「俺も諦めません。犯人捕まえるまでは」
長谷川「おう。寺島、今夜一杯付き合え!!」
寺島「はいっ」

〇SHIBUYA109
  9/29
  PM20:00
倉田 薫「はぁ~、今日のアプリもダメだったかぁ。 どっかにイイ女いねーかな」
  倉田薫は、
  マッチングアプリで出会いを探していたが
  空振りに終わってしまった為、
  ナンパする女を街中で探していた。
「おねーさん、かわいいね。今一人?」
「よかったら、お茶でもどう?」
「私、今急いでるんで・・・」
  倉田は手当たり次第、女に声を掛けるが
  誰にも相手にされず、イライラしていた。
  その時、花が現れた。
倉田 薫「あの女、すんげー美人じゃん。 声掛けちゃおっかな」
倉田 薫「こんばんはぁ」
倉田 薫「おねーさん、すんげー美人だね」
倉田 薫「ここで何してんの?今一人?」
花「はい。ちょうど一人で暇してた所です」
倉田 薫「マジで?」
倉田 薫「俺もちょうど暇してるからさ、 どっか行かない?」
花「えぇ、いいですよ。行きましょ」
倉田 薫「おねーさん、ノリ良いね。で?どこ行く?」
花「実は私、ご飯まだなんです。 だから何処かで食べに行きたいです」
倉田 薫「いいよ。何食べたい?俺、奢るよ」
花「いいんですか?」
花「嬉しい。有難うございます」
倉田 薫「俺の方こそ感謝だよ」
倉田 薫「こんなキレイなおねーさんと 飯行けるんだからさ」
倉田 薫「ファミレスとかでも大丈夫?」
花「はい。大丈夫です」
倉田 薫「よしっ、じゃあ行きますかっ」
  花と倉田はファミレスに向かう為、
  街中を後にした。

〇おしゃれなレストラン
倉田 薫「ごめんね。ファミレスじゃなくて」
花「いえ。気にしないで下さい むしろ、こっちの方が落ち着きます」
倉田 薫「ならよかった。あっ、名前なんて言うの?」
倉田 薫「俺は倉田薫。年は28。ヨロシクね」
花「私の名前は花。年齢は25です」
倉田 薫「花ちゃんって言うんだ。可愛い名前だね。 仕事は何してんの?」
花「私、つい先日まで入院してたんです」
倉田 薫「えっ、病気とかで?」
花「まぁ、そんな感じです」
倉田 薫「病気は治ったの?」
花「はい。もうすっかり良くなりました」
花「なので、久しぶりに外に出てみようかなって思ったんです」
倉田 薫「外の空気も悪くないからね。 けど、ここは街中だから空気はイマイチかな」
  倉田はコーヒーを一口飲んだ。
花「倉田さん、お住まいはこの辺なんですか?」
倉田 薫「まぁ、この辺かな。花ちゃんは?」
花「私は山沿いの静かな所です」
倉田 薫「山沿いなら、空気もおいしいのかな」
倉田 薫「ところでさぁ、花ちゃん 薄着だけど寒くない?」
倉田 薫「上着貸そうか?」
花「えっ?」
花「少し肌寒いかもです。 良ければ上着、お借りしてもいいですか?」
倉田 薫「はい。どうぞ」
  倉田は花に、自分の上着を貸した。
花「すごくあったかいです。有難うございます」
  それから二人は、
  店内で他愛もない会話をした。

〇SHIBUYA109
  PM10:00
  寺島は、事件の情報提供協力の為
  街中に来ていた。
寺島「もし何か分かりましたら、どんなことでも 構いませんので、私の方に連絡下さい」
「分かりました」
寺島「もうこんな時間か。そろそろ家に帰ろう」
  その時、花と倉田が現れた。
花「倉田さん、今日は有難うございました。 すごく楽しかったです」
倉田 薫「俺も楽しかったよ」
倉田 薫「花ちゃんはもう家に帰るの?」
花「はい。そろそろ帰ろうかなって思ってます」
倉田 薫「え~、寂しいなぁ」
倉田 薫「俺、もう少し花ちゃんと 一緒に居たいんだけどなぁ」
花「ほんとですか?実は私も、倉田さんと もう少しお話しがしたいです」
倉田 薫「ほっ、ほんとに?」
倉田 薫「じゃあさ、俺ん家来る?家すぐそこだからさ」
花「よかったら、 私のお気に入りの場所でお話ししませんか?」
花「誰にも邪魔されない場所で・・・」
倉田 薫「邪魔されない場所?」
倉田 薫「いいよ。そこでじっくり話そう」
  倉田は花の肩を優しく抱きながら、
  寺島とすれ違い歩いて行った。

次のエピソード:エピソード4

コメント

  • 月下美人の花弁が白から赤に転じている……すごく印象に残ります! 花さん出現、そして寺島刑事とニアミス、お話がまた動き始めましたね!

  • 久しぶりの花の登場で、今後の花の行動から、目が離せなくなりました。

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