お稲荷様 燈の相談 2(脚本)
〇古民家の居間
お稲荷様の橙「晴彦さま!」
巴 朱織「燈さん!?」
安倍 晴彦「どうなさいました?」
お稲荷様の橙「あやかしの子が かまいたちに攫われてしまいました!」
安倍 晴彦「!!」
お稲荷様の橙「封印を解かれてしまってから、あやかしの子達を私たちの神社で匿っていたのですが、いつの間にか・・・」
安倍 晴彦「直ぐに向かいます。 必ず、助け出しましょう!」
お稲荷様の橙「はい・・・! ありがとうございます・・・」
〇洞窟の深部
かまいたち「かかかッ! やはり、あやかしの子の妖気は美味い!」
あやかしの子「うぅ・・・ かあさま・・・燈さま・・・助けて・・・」
かまいたち「九尾一族どもめ この俺さまを封印し続けた恨み、これで終わると思うなよ・・・?」
〇神社の本殿
安倍 晴彦「ここに子供たちを匿っていたんですね?」
お稲荷様の橙「はい」
安倍 晴彦「では、妖気の残穢を探ってみましょう」
巴 朱織「あ、足跡が!」
安倍 千明「あれは妖気の残穢って言ってな、あやかしや物の怪は妖気を常にまとっているんだが」
安倍 千明「それがいた場所にも微かに残るんだ。その残った妖気の残り、つまり残穢を浮かび上がらせる術なんだぜ」
巴 朱織「そんなこともわかるんだ....! 千明もできるの?」
安倍 千明「おう この術は陰陽術の基本だからな、俺にもできるぜ。もちろん兄貴には敵わないけどな」
安倍 千明「ただ、妖力が強い物の怪ほど、残穢を隠すのが上手いからな。簡単に残穢を感じ取れない相手には注意しなきゃいけないんだ」
巴 朱織「物の怪も、賢いものは巧妙なんだね」
安倍 千明「まあ、今回は大丈夫みたいだな」
安倍 晴彦「かまいたちはこっちに逃げたみたいですね」
お稲荷様の橙「あの先には洞窟があります! そこに逃げたのかもしれません!」
安倍 晴彦「なるほど・・・ では、そこに行ってみましょう」
お稲荷様の橙「はい!」
安倍 晴彦「・・・・・・」
〇洞窟の深部
安倍 晴彦「確かに残穢はここにあるんですが・・・」
安倍 千明「姿が見えないな」
お稲荷様の橙「かまいたちはずる賢いですから 巧妙に姿を隠しているのでしょうか」
安倍 晴彦「!!」
お稲荷様の橙「!!」
安倍 晴彦「奥から聞こえてきたようですね 行ってみましょう!」
お稲荷様の橙「はい」
〇洞窟の深部
お稲荷様の橙「おかしいです ここまで深い洞窟ではないはずですから」
安倍 晴彦「ふむ」
安倍 晴彦「なるほど そういうことですか」
巴 朱織「何かわかったんですか?」
安倍 晴彦「はい 妖術でかまいたちとあやかしの子の姿を隠しているようですね」
お稲荷様の橙「まさか...かまいたちはずる賢いですが、妖術なんて使える物の怪では!」
安倍 晴彦「かまいたちの封印を解いたのもそうですが、誰か協力している者がいるようですね この妖術もその者の仕業でしょう」
お稲荷様の橙「そんな・・・・・・」
安倍 晴彦「少々、荒っぽいですがこの程度の妖術であれば解けそうです みなさん、少し離れていてください」
安倍 晴彦「幻視・「散」」
〇洞窟の深部
安倍 晴彦「妖術を解きました この先にいるはずです!」
お稲荷様の橙「行きましょう!」
安倍 晴彦「いました!」
お稲荷様の橙「かまいたち! 貴様よくも・・・その子を渡しなさい!」
かまいたち「チッ! あーあ、バレちまったかぁ あの野郎の妖術も大したことねぇってことだな」
あやかしの子「燈・・・さま、晴彦・・・さま!」
お稲荷様の橙「すぐに助けてあげますからね」
かまいたち「ああ? 渡すわけねえだろうが! 俺様を100年も封印しやがって・・・! まずは、狐 お前から殺してやる」
お稲荷様の橙「いいだろう! 封印など生ぬるいものでなくここで祓ってやる!」
かまいたち「おいおい、平和な世の中で鈍ったか? そんな攻撃、効かねえよ!」
お稲荷様の橙「くっ!」
かまいたち「カカッ! 口ほどにもねえな!」
「幻攻・「斬」!」
安倍 晴彦「ここからは私が相手になりましょう」
お稲荷様の橙「晴彦さま!申し訳ありません・・・」
安倍 晴彦「無理せず休んでいてください 隙を見てあやかしの子の救出をお願いします」
お稲荷様の橙「はい・・・!」
かまいたち「なにをコソコソと! テメェ、安倍の子孫か あいつにも散々邪魔されたからなぁ テメェも殺してやるよ!」
安倍 晴彦「幻隠・「迅」」
かまいたち「なっ! 当たらない!」
安倍 晴彦「その速さでは当たりませんよ」
かまいたち「ッ! クソ、クソ!」
お稲荷様の橙「早くこちらへ!」
あやかしの子「燈さま!!」
あやかしの子「うわーん!!」
お稲荷様の橙「よくがんばりましたね!」
かまいたち「くそ! あやかしの子が」
かまいたち「くっ・・・そがぁー!」
安倍 晴彦「この狭い空間で何度もその攻撃は良くありませんね そろそろ、終わりにしましょうか」
かまいたち「なんだと!?」
安倍 晴彦「幻帯・「縛」」
かまいたち「なっ!動けねぇ!」
安倍 晴彦「さぁ、あなたの封印を解き、妖術を使った者について教えていただきましょう」
かまいたち「くそ、くそ!」
〇洞窟の深部
かまいたち「揃いも揃って、俺様をコケにしやがって! あいつもだ! 俺を助けにも来ない! くそ、くそぉー!」
安倍 晴彦「100年前はあやかしが少なく陰陽師も力が弱まっていました。 だから、当時の我らはあなたを封印することを選んだのでしょう」
安倍 晴彦「ですが、今は違う 全盛期とまではいかなくともあなたを封印ではなく祓うことができるまで幻術も我々自身も強くなったのですよ」
かまいたち「ぐっ」
安倍 晴彦「あなたの協力者は誰ですか?」
かまいたち「協力者は──」
かまいたち「ぐあああ!」
安倍 晴彦「なっ!」
安倍 晴彦「消滅・・・した?」
お稲荷様の橙「これは一体・・・!」
安倍 晴彦「おそらく、協力者の仕業でしょうね」
お稲荷様の橙「しかし、こんな芸当ができる物の怪は・・・」
安倍 晴彦「並大抵な物の怪ではないということでしょう」
お稲荷様の橙「!!」
安倍 晴彦「ひとまず、あやかしの子を帰してあげましょうか 話し合いはそれからです」
お稲荷様の橙「そうですね・・・」
〇神社の本殿
あやかしの母「・・・」
あやかしの子「あ、かあさまー!」
あやかしの母「坊や!」
あやかしの母「よかった・・・無事でよかった」
お稲荷様の橙「本当によかったです」
安倍 晴彦「ええ、本当に」
あやかしの母「燈様、晴彦様、あやかし相談所の皆様、本当にありがとうございました」
あやかしの母「このご恩は一生忘れません」
安倍 晴彦「では、私たちは「五芒星」に戻りましょう」
お稲荷様の橙「はい」
〇広い畳部屋
お稲荷様の橙「晴彦さま、本当に今回はお世話になりました。あのこだけではなく、私のことも救っていただいて」
安倍 晴彦「いえ 皆、無事で何よりですよ 燈さんもお疲れ様でした」
安倍 晴彦「では、本題に入りましょうか」
お稲荷様の橙「・・・」
安倍 晴彦「かまいたちの封印を解き、妖術を使い、口止めをその場にいなくとも行う」
安倍 晴彦「明らかに、並の物の怪ではありません」
坂口 龍弥「晴彦たちが戦っている間、俺と斗亜で辺りを探っていたが特に怪しい点はなかったな」
一ノ瀬 斗亜「うん 遠くから観察されてる気配も感じなかったよ」
安倍 晴彦「二人にも勘付かれないかれないとは、相当なやり手のようですね」
巴 朱織「すごい お二人はそんなこともわかるんですね」
坂口 龍弥「ああ、言ってなかったか 俺と斗亜はあやかしと人間のハーフ、つまり半妖なんだよ」
巴 朱織「え! あやかしと人間のハーフ!?」
坂口 龍弥「そうそう 俺は烏天狗との半妖で・・・」
一ノ瀬 斗亜「僕はぬらりひょんとの半妖なんだー!」
巴 朱織「半妖の人もいるんですね・・・ 知らなかった」
坂口 龍弥「大体が普段は人間として生きてるけどな やろうと思えばあやかしの姿にもなれるぜ」
一ノ瀬 斗亜「僕たち、戦いもできるけど物の怪に対して晴彦とか千明のほうが戦いやすいからね」
一ノ瀬 斗亜「いつもは戦いの間、他に物の怪がいないか見張ってるんだよ」
巴 朱織「なるほど」
安倍 千明「話を戻して悪いが、俺も残穢を探ってみたけど特になにも見つからなかったな」
お稲荷様の橙「私もなにも感じませんでした」
安倍 晴彦「誰も異変を感じていないとなるとますます厄介ですね」
安倍 晴彦「ただ、最初に残穢を探ったとき 少しだけ、かまいたちより上位の物の怪の残穢を感じました」
安倍 晴彦「ここまで巧妙に姿を隠されるとわざと残穢を残したのでしょうね」
安倍 千明「ッチ 挑発のつもりかよ」
安倍 晴彦「とりあえず、その物の怪の正体と目的も探っていきましょう」
お稲荷様の橙「私も何か分かり次第すぐ連絡いたします」
安倍 晴彦「お願いします」
安倍 晴彦「さて、今日はもう解散にしましょうか」
〇廃倉庫
お稲荷様の橙「改めて、皆様 本日は本当にありがとうございました これからも我々、あやかしのことをよろしくお願いいたします それでは」
安倍 晴彦「朱織さんもお疲れ様でした 明日はカフェはお休みですが、色々と教えたいことがあるので申し訳ありませんが来ていただけますか?」
巴 朱織「はい、もちろんです」
安倍 晴彦「ありがとうございます それでは気をつけてお帰りください」
巴 朱織「ありがとうございます」
〇女の子の一人部屋
巴 朱織「はぁ 今日は疲れたー!」
巴 朱織「あんな、戦闘シーンとか陰陽師の力なんてなんて初めてみた・・・」
巴 朱織(・・・いや、初めてじゃない気がする)
巴 朱織(そうだ、あやかし相談所の話も半妖の話もなんで私あんなふうにすんなり受け入れられたんだろう? 普通、もっと戸惑うよね・・・)
巴 朱織「・・・うーん」
巴 朱織「考えてもわからないや もう寝よう」
〇祈祷場
???「天地の御力賜りて」
???「皆の艱苦を癒やしたもう」
???「舞えや 謳えや 人が為」
???「舞えや 謳えや あやかしが為」