声優 イン ポッシブル〜アラサー女が演技未経験で声優を目指したら〜

星名 泉花

voice【3】セリフをかけろ! 君のハートにロイヤルストレートフラッシュ★(脚本)

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〇仮想空間
サーシャ(石動 凛子)「ふへっ・・・ふへへへ」
サーシャ(石動 凛子)「アイアムナンバーワン★」
サーシャ(石動 凛子)「声を聞いてもらえるって嬉しいね」
アナスタシア「1位おめでとー!」
サーシャ(石動 凛子)「ありがとー! アナをはじめとした台詞家さんのおかげだよ!」
アナスタシア「サーシャが読んでくれるから アタシの台詞家としての注目度もあがる」
アナスタシア「ありがたいことですな」
サーシャ(石動 凛子)「私にも需要あるんだなって思うと やっぱり嬉しいよ」
アナスタシア「なーに言ってるの?」
アナスタシア「サーシャはプロになってアニメや吹き替えで バンバン活躍するんだから!」
アナスタシア「サーシャは本当に声優になるって思うんだ」
アナスタシア「声優になりたいって子はゴロゴロいるけど、 サーシャは本当になる」
アナスタシア「台詞家側の直感。 サーシャが声を入れると、ただのセリフにキャラクターが宿るから」
サーシャ(石動 凛子)「・・・ありがとね、アナ」
サーシャ(石動 凛子)「絶対に声優になる! そのために養成所に行ってるんだから!」
アナスタシア「声優になるために、養成所で学ぶ。 そこから声優の卵をみつけて事務所所属」
アナスタシア「負けないでね。 サーシャは他の人にはないパワーがあるんだ」
サーシャ(石動 凛子)「うん」
アナスタシア「それではまた☆ サーシャの声、待ってるよー!」
サーシャ(石動 凛子)「応援してくれる人がいる。 それだけで私はがんばれる」
サーシャ(石動 凛子)「まだまだがんばるぞー!」

〇説明会場(モニター無し)
小鳥遊 真緒「今日はセリフのかけあいをやります」
石動 凛子(やっと演技だー!)
九条 大志「おーい、こっちにあったぞー!」
石動 凛子「こっちにもあったよー!」
小鳥遊 真緒「それはどういう距離感での会話?」
九条 大志「え?」
小鳥遊 真緒「石動さん、相手はどこにいるか。 どういう状況で返事をしたの?」
石動 凛子「えっと・・・探しものをしててお互い離れた場所にいる・・・」
小鳥遊 真緒「九条さんはどういう状況でセリフを言ったの?」
九条 大志「お・・・同じ部屋で、ささ探しものをしてるイメージです」
小鳥遊 真緒「距離は?」
九条 大志「いま立ってる位置と同じ距離です」
小鳥遊 真緒「だとしたら九条さんの声の大きさに対して、石動さんの反応はあってる?」
石動 凛子「いいえ。 相手を考えての反応ではありませんでした」
小鳥遊 真緒「ちゃんと相手のセリフを聞いて」
小鳥遊 真緒「じゃあ次の人」
「ありがとうございました!!」
石動 凛子(私は・・・一人で喋っていた?)
石動 凛子(相手の声は聞いてた。 なのに聞いていなかった)

〇オフィスビル前の道
石動 凛子(どうしよう。 セリフのかけあいは一人じゃ練習できない)
石動 凛子「・・・いいな」

〇駅の出入口
近藤 悠太「あ・・・」
石動 凛子「近藤くん?」
近藤 悠太「おつかれさまでーす。 この駅使ってたんすね」
石動 凛子「A駅利用してる人の方が多いよね。 こっちの利用者、私だけだと思ってた」
近藤 悠太「どっち方面なんすか?」
石動 凛子「●●方面だよ」
近藤 悠太「じゃあ途中まで一緒ッスね」

〇電車の座席
石動 凛子「へえぇ、映像制作かぁ。 楽しそうだねー!」
近藤 悠太「みんなで映画作ろうって話してるんですけど、まぁ人がいないので役者兼任ッス」
石動 凛子「そうなんだー」
近藤 悠太「あー! 今、笑ってます!?」
石動 凛子「いや、そんなことは・・・」
近藤 悠太「わかってますよ。 演技下手って言いたいんスよね?」
近藤 悠太「自分でもわかってますー。 才能ねぇと痛感してますよ」
石動 凛子「どうして声優養成所に?」
近藤 悠太「オレ、音響監督になりたくて。 音響監督ってアニメや吹き替え映画の役者の選定や指導することもあるんスよ」
近藤 悠太「まぁ、役者側の勉強して損はないかなーって。 それで通いはじめました」
石動 凛子「大学生で目標に向かって努力するのはすごい。 頑張ってるんだ」
近藤 悠太「石動さんはどうして声優を?」
石動 凛子「・・・変わりたいから、かな」
近藤 悠太「そう・・・なんスね」
近藤 悠太「養成所って色んな人がいて面白いッスよね」
石動 凛子「若い子と関わるなんてないから新鮮だよ」
近藤 悠太「制服とか、高校生の特権アピール凄いっスよね」
近藤 悠太「なんで女子って寒いのに冬でもハイソックスなのか聞いたら『若いですから』って言われたんスよ?」
石動 凛子「そんな時期、私にもあった!」
石動 凛子「若いっていうだけで、根拠のない自信あった。 それしかなかったのに」
石動 凛子(本当に、何もなかった)
石動 凛子「あ、私ここで乗り換えだから! またね! おつかれさまです!」

〇線路沿いの道

〇女性の部屋
石動 凛子「あえいうえおあお! かけきくけこかこ・・・」

〇配信部屋
こいなり きょうこ「『今日も声に恋して』 現役声優でボイストレーナー・こいなり きょうこです!」
こいなり きょうこ「このチャンネルは”現役声優でボイストレーナー”が、声優になりたいあなたへ有益な情報をお届けします」
こいなり きょうこ「本日のテーマはこちら」
こいなり きょうこ「案件に対してオーディションを受ける。 ベテランも新人も役をとるために戦います」
こいなり きょうこ「さて、声優志望者のうち、事務所所属のプロにはどれだけの人数がなれるか」
こいなり きょうこ「そのうちの何パーセントが食べていける声優になれるのか」
こいなり きょうこ「あなたに才能はありますか?」
こいなり きょうこ「努力してください。 謙虚に、努力をしないとダメです」
こいなり きょうこ「そしてプロになる前も後も 戦いはずーっと続きます」
こいなり きょうこ「そしてプロとして名乗るためにはどうやって戦い、勝ちを取らなくてはならないのか」
こいなり きょうこ「それでは皆さんの声優人生がより良いものでありますように」
こいなり きょうこ「『今日も声に恋して』 こいなり きょうこでした!」

〇女性の部屋
石動 凛子「・・・努力、か」

〇説明会場(モニター無し)
木嶋 萌奈「お風呂わいたよー!!」
石動 凛子「まーってー!! すぐに入るからあ!!」
木嶋 萌奈「早くしなさーい!!」
小鳥遊 真緒「うん、いいね。 どういう状況で、どんな感情なのかよく伝わってきたよ」
「ありがとうございます!!」
小鳥遊 真緒「来週はこの原稿やりまーす。 おつかれさまでした」

〇説明会場(モニター無し)
石動 凛子(今日は上手く出来たー! なんかこう・・・セリフ聞けたって感じ!!)
石動 凛子「おつかれさまでしたー!」
廻 心春「お、おつかれさまです」
近藤 悠太「どうしたの?」
木嶋 萌奈「いや、石動さんご機嫌だなと思って」
近藤 悠太「それが?」
木嶋 萌奈「なんだか可哀想だなーって」
廻 心春「可哀想?」
木嶋 萌奈「どう考えたって、事務所オーディション受けられないでしょ」
廻 心春「そんなことないよ! 石動さん一生懸命だし、声だって良いし、一番ハキハキしてる!」
木嶋 萌奈「ああいうのを悪目立ちって言うのよ」
木嶋 萌奈「努力ってのは後から可視化されるから綺麗なのよ」
近藤 悠太「気にしない方がいいよ? 廻さんは廻さんで頑張ればいいんだから」
廻 心春「・・・うん」
近藤 悠太「・・・天然と作った謙虚。 女ってこわっ・・・」

〇仮想空間
サーシャ(石動 凛子)「この花をくれるの? ありがとう!!」
サーシャ(石動 凛子)「君の無邪気な笑顔をみてると安心する」
サーシャ(石動 凛子)「信頼してるよ。 君にもフリージアの花の祝福を!」
サーシャ(石動 凛子)「ありがとう! 私、もっともっとがんばる!」
サーシャ(石動 凛子)「私は”サーシャ”・・・前例を作る型破りな女になるんだから!!」
サーシャ(石動 凛子)「君のハートにロイヤルストレートフラッシュ★」

次のエピソード:voice【4】感情パニック! 私と役とマリオネット

コメント

  • 2人での演技は勝手が違うのか、なかなか今まで通りにいかないのが大変なところですね😓それでも前を向いて頑張ろうと思える凛子に勇気をもらえます
    アナスタシアさんのような応援してくれる人が1人でもいるだけで全然心の持ちようが違うのもありがたいことですよね…

    凛子の前にはいくつもの壁があって、本当に努力だけでどうにかなるとは思えない立ち位置かと思いますが
    それでも前向きな彼女は本当に素敵な人です

  • うわぁ……クラスメートの言葉、キツいですね。
    陰口には反発を覚えますが、前のめりな前向きさは、時に空回りとなることも事実で。
    それでも頑張って欲しいですね、凛子さん😣

  • 声優がアイドル化してから見た目は本当に重視されていますよね。アラサーと言うだけで狭き門どころか、すでに閉じてしまっている所もあるかもしれない。その中でどう奮闘していくのかも見どころです。
    養成所など仲間でありライバルが集う場所で、本人の居ない所で聞こえてくる会話はとっても怖そうです

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