第2話『かなしい、ミライ』(脚本)
〇黒
第2話
『かなしい、ミライ』
〇電脳空間
着信
羽田ミライ
「はいはい、ミライ」
「ちょっと待ってね」
羽田ミライ「こんばんは、お婆ちゃん」
羽田ミライ「今、仕事終わったよ」
お婆ちゃん「はいはい」
お婆ちゃん「お疲れ様だったね」
お婆ちゃん「今日も、頑張ったかい?」
羽田ミライ「うん」
羽田ミライ「お婆ちゃん、またアバター変えたの?」
お婆ちゃん「なんか、すぐ飽きちゃってねぇ」
羽田ミライ「これもカワイイけど」
お婆ちゃん「そうでしょ?」
羽田ミライ「うん」
羽田ミライ「でも、たまにはお婆ちゃんの顔見たいな」
お婆ちゃん「え?そうかい?」
お婆ちゃん「これ、どうやって切り替えるのかね」
お婆ちゃん「あれ?どこ押すん?」
お婆ちゃん「ちょっと解らんわぁ」
羽田ミライ「じゃあ、今日はいいからさ」
お婆ちゃん「そう?ごめんねぇ」
お婆ちゃん「ねえ、ミライ」
お婆ちゃん「アンタ、無理してない?」
お婆ちゃん「なんか、顔が疲れてるんやけど」
羽田ミライ「うん、今ちょっと忙しいかな」
お婆ちゃん「デパートのお仕事も大変だねぇ」
お婆ちゃん「ちゃんと休まないとダメだよ!」
お婆ちゃん「アンタ、いつも頑張りすぎるんだから」
羽田ミライ「うん、大丈夫」
羽田ミライ「もしかしたら しばらく連絡できないかも知れないんだ」
お婆ちゃん「そうなの?」
お婆ちゃん「無理しちゃダメだよ!」
羽田ミライ「うん、わかった」
お婆ちゃん「時間出来たら、いつでも遊びにおいで」
羽田ミライ「うん、ありがとう」
〇黒
〇田舎道
〇黒
はい、ミライです
あ、ミライ、こっちに来て欲しいの
わかりました。すぐ向かいます
うん、よろしく
〇廃ビルのフロア
〇怪しい研究所
〇近未来の開発室
羽田ミライ「すみません、遅くなりました」
島崎アイ「あ、来たわね」
島崎アイ「じゃあ、トムを起動するわ」
羽田ミライ「はい」
トム「アイさん、ミライ」
島崎アイ「はい、トム」
羽田ミライ「・・トム」
島崎アイ「じゃあ、始めるわよ」
羽田ミライ「はい」
島崎アイ「昨夜、シャドーが いくつかのモニターに引っ掛かったの」
島崎アイ「ミライの予測通り すでにエリア23から出てるわね」
羽田ミライ「そうですか」
島崎アイ「そして、これもアナタの言った通りで」
島崎アイ「初対面と思われる女性の車で移動してる」
〇車内
シャドー(影沼ノエル)「俺・・・アナタに運命を感じてます」
赤坂文華「・・・え?」
赤坂文華「・・・そんな」
〇近未来の開発室
島崎アイ「でも、途中で電波障害が発生して」
島崎アイ「周辺のモニターは全滅、って感じね」
島崎アイ「もちろんヤツの仕業だけど」
島崎アイ「ゲームでもしてるつもりね」
島崎アイ「・・楽しんでるわ」
羽田ミライ「・・・そうですか」
島崎アイ「ミライ、何か解る事あるかな?」
羽田ミライ「そうですね・・」
羽田ミライ「予測の範囲が広すぎますね」
羽田ミライ「公安は もう一切、協力してくれないんですか?」
島崎アイ「もちろん情報協力はしてくれるわ」
島崎アイ「正直、及び腰だけどね」
島崎アイ「そして実際に 現場でヤツと対峙するのは」
島崎アイ「ここにいる私達」
羽田ミライ「・・・そうですか」
島崎アイ「・・うん」
羽田ミライ「目撃情報が一切無い状態では、 ちょっと厳しいですね」
島崎アイ「じゃあ、トムの意見は?」
トム「はい」
トム「要注意人物、通称『シャドー』は特定のパターンで行動しません」
トム「証拠を残す場合は、捜査撹乱の為、と考えて間違いありません」
トム「それに加え、 モニターで追跡不能な現在の状況では」
トム「彼の居場所を特定するのは、非常に困難です」
トム「今回、発生するであろう、もしくは発生した可能性のある事件を未然に防ぐ事は」
トム「ほぼ不可能です」
トム「残念ですが、事件発生後」
トム「現場より、行動開始するしかありません」
トム「それ以外、考えられません」
島崎アイ「・・・うん」
島崎アイ「本当に残念だけど・・・それが現実ね」
島崎アイ「悔しいけどね・・」
島崎アイ「犯罪が行われるのが解っていても」
島崎アイ「何も出来ないなんて」
羽田ミライ「悲しい未来ですね」
羽田ミライ「本当に・・・」
羽田ミライ「もしかしたら、昨晩のうちに」
羽田ミライ「シャドーは 新しい犯罪を犯してるかも知れません」
羽田ミライ「胸が苦しいです」
島崎アイ「・・・うん」
島崎アイ「ミライ・・・ 被害者の方に対するその想いは」
島崎アイ「シャドーと対峙した時にぶつけるの」
羽田ミライ「・・はい」
〇車内
赤坂文華「・・ねえ?」
赤坂文華「・・今日、私の部屋に来ます?」
シャドー(影沼ノエル)「・・え?」
シャドー(影沼ノエル)「それは・・」
シャドー(影沼ノエル)「正直言うと嬉しいけど」
シャドー(影沼ノエル)「大丈夫かな?」
シャドー(影沼ノエル)「アナタの恋人とかさ」
赤坂文華「え?」
赤坂文華「・・・うん、大丈夫」
シャドー(影沼ノエル)「そう」
赤坂文華「なんか 軽い女みたいに思われちゃったかな?」
赤坂文華「あ、私、いつもはこんな事」
赤坂文華「絶対に言わないよ」
シャドー(影沼ノエル)「率直に嬉しいですよ」
赤坂文華「え?・・そう」
赤坂文華「・・・はぁ、良かったぁ」
〇怪しい研究所
〇近未来の開発室
島崎アイ「じゃあ、トム」
島崎アイ「ミライを送って行ってあげて」
羽田ミライ「え?」
羽田ミライ「大丈夫ですけど」
島崎アイ「そんな事言わないでよ」
島崎アイ「君達はパートナーなんだから」
トム「はい、承知しました」
羽田ミライ「では さよなら、アイさん」
島崎アイ「うん、ゆっくり休んでね」
〇怪しい研究所
トム「ねえ、ミライ?」
羽田ミライ「何?」
トム「今日は心拍数が、いつもより安定してるね」
羽田ミライ「え?ああ・・」
トム「何があったの?」
羽田ミライ「うん・・」
羽田ミライ「昨日、お婆ちゃんと話したら」
羽田ミライ「夢にお婆ちゃんの田舎が出てきたんだ」
羽田ミライ「私の好きな場所」
〇空
〇田舎道
〇草原
〇怪しい研究所
羽田ミライ「それでじゃないかな」
トム「そうなのか」
トム「夢は、まだ僕には理解できない領域だけど」
トム「とても素晴らしいもの、なんだろうね」
羽田ミライ「・・え?」
羽田ミライ「うん・・」
羽田ミライ「疲れた脳のバグって説もあるけど」
羽田ミライ「私は違うと思う」
トム「どうして?」
羽田ミライ「うん、上手く説明できないけど」
羽田ミライ「誰かからのメッセージ、みたいに感じる」
トム「へえ、素敵な話だね」
羽田ミライ「うん。見ると、心が安らぐよ」
羽田ミライ「あ、でも怖い夢もあるみたい」
羽田ミライ「私は見た事ないけど」
トム「そう、どうしてだろう?」
羽田ミライ「・・・多分」
羽田ミライ「現実より怖い物が無いからかも」
トム「そうなのかな?」
〇中規模マンション
着いたよ、私のマンション
いい所だね
ええ~、そうかなぁ
どうぞ、入って
お邪魔します
〇明るいリビング
シャドー(影沼ノエル)「いい部屋だね」
赤坂文華「そ、そう思う?」
赤坂文華「普通じゃない?」
赤坂文華「あの・・取り敢えず何か飲む?」
シャドー(影沼ノエル)「いや、後で水もらうよ」
赤坂文華「え?アルコールは?」
シャドー(影沼ノエル)「飲まない」
シャドー(影沼ノエル)「思考を鈍らせるからね」
赤坂文華「・・・へえ」
赤坂文華「アナタって、ちょっと変わってるよね」
赤坂文華「いい意味でユニーク」
赤坂文華「すごく魅力的・・」
シャドー(影沼ノエル)「・・・・」
赤坂文華「あの、これ、本当なんだけど」
赤坂文華「アナタって」
赤坂文華「昔、好きだった人にそっくりなの」
赤坂文華「声かけられた時、本当に驚いたもん」
〇満車の地下駐車場
〇明るいリビング
シャドー(影沼ノエル)「こんなの、どこにでもいる顔だよ」
赤坂文華「そんな訳ないって!」
赤坂文華「ホントは自分でも判ってるんでしょ?」
赤坂文華「普通の人とは、ぜんぜん違うよ」
シャドー(影沼ノエル)「・・・普通の人ねえ」
赤坂文華「あ、うん、それでね」
赤坂文華「私、その人の事が」
赤坂文華「好きで、好きでたまらなかったんだけど・・」
赤坂文華「何も出来ないまま、離ればなれになって」
赤坂文華「以来、何年も逢ってないんだ」
赤坂文華「でも、まだ忘れられないの」
赤坂文華「だから今日、逢えたのは」
赤坂文華「私の想いがアナタを呼んだんじゃないかって」
赤坂文華「おかしいかな?」
シャドー(影沼ノエル)「・・・・いや」
シャドー(影沼ノエル)「別に」
赤坂文華「そ、そう・・」
赤坂文華「あ、あの・・アナタにはいない?」
赤坂文華「それくらい強く想った人って」
赤坂文華「いたら、聞かせて欲しいな・・」
シャドー(影沼ノエル)「だから、さっき言ったでしょ」
シャドー(影沼ノエル)「君に運命を感じてるって」
赤坂文華「・・・ホントに?」
シャドー(影沼ノエル)「ああ・・」
シャドー(影沼ノエル)「でも、少し前に気になる女性に会ったな」
〇廃ビルのフロア
〇明るいリビング
シャドー(影沼ノエル)「あれ以来、彼女がずっと心に残ってる」
赤坂文華「ええ~、ちょっとぉ!」
赤坂文華「今、運命だって言ったばかりなのに、 よくそんな事言えるよね」
シャドー(影沼ノエル)「いや、その人は恋愛対象じゃないからね」
赤坂文華「ホントぉ?」
赤坂文華「怪しいなぁ」
赤坂文華「じゃあ 恋愛対象じゃなかったら何なの?」
シャドー(影沼ノエル)「じっくり話してみたい人だね」
シャドー(影沼ノエル)「心の中を覗いてみたい」
〇黒
〇明るいリビング
赤坂文華「ふ~ん・・」
赤坂文華「よく解んないけど」
赤坂文華「じゃあ、その人に」
赤坂文華「どうしても逢いたくなったら、どうする?」
シャドー(影沼ノエル)「・・・その時は」
シャドー(影沼ノエル)「こっちに来てもらうよ」
赤坂文華「え? 連絡先、知ってるの?」
シャドー(影沼ノエル)「知らないよ」
赤坂文華「じゃあ、どうやって?」
シャドー(影沼ノエル)「原始的な方法さ」
赤坂文華「え?何、原始的って、ふふふっ」
シャドー(影沼ノエル)「君にも手伝ってもらうよ」
赤坂文華「え・・何を?」
シャドー(影沼ノエル)「君は何もしなくていい」
赤坂文華「あの・・話がよく解らないんだけど」
シャドー(影沼ノエル)「解りやすく言うと」
シャドー(影沼ノエル)「人間の持つ、根源的な欲求だよ」
赤坂文華「え?」
赤坂文華「ど、どういう意味?」
シャドー(影沼ノエル)「・・・じゃあ、教えてあげるよ」