〇渋谷駅前
　　いつもいるはずのジニーの姿が見えない渋谷の街は少し物足りない。ジニーは只今海外出張中。

〇渋谷駅前
フミオ「僕はこうして毎日渋谷でジニーを待っている」
フミオ「ジニー！いったいいつになったら帰ってくるんだよ。いい加減、待ちくたびれてきたよ―ォ！」

〇ポップ2
　　ジニーは僕の彼女。仕事は写真家。

〇花模様
ジェニー「カメラマンじゃなくて、カメラガールと呼んでね！」
　　彼女はいつもそう言って言る。
　　分かってるよ、カメラガール！

〇音楽スタジオ
　　ジニーは僕らのバンドがメジャーデビューするときに”アーチスト写真”を撮影しにやって来た。

〇音楽スタジオ
　　緊張してガチガチにカタくなってる僕らを笑わせてくれた、明るい人。

〇公園のベンチ
　　初めて会ったときから気が合って、僕らは付き合い始めた。
　　バンドマンとカメラガールのカップルって、なかなかでしょ。

〇渋谷の雑踏
　　彼女はいつも渋谷の街なかで写真を撮っている。渋谷も最近は人気の街になってきた。

〇渋谷の雑踏
　　人も大勢やってくるようになってきた。
　　それにつれて、彼女の写真も認められて、忙しくきた。

〇シックなカフェ
　　僕のバンドの方も、ぼちぼち売れてきたけど、忙しくてもジニーとはいつもこの店で待ち合わせることにしている。

〇シックなカフェ
　　彼女が出張でいない時も僕はなんとなくここにきてしまう。渋谷の街の一角にあるこの喫茶店に。

〇シックなカフェ
　　この店にはジニーが撮った写真が何点か飾られている。

〇寂れた雑居ビル
　　ジニーの写真・・・カラフルなアクセサリーや、安くて珍しい品物でいっぱいの雑貨屋の店先で。

〇ライブハウスの入口
　　ジニーの写真・・・小さいけど有名なライブハウスで、ミュージシャンやお客たち

〇公園の砂場
　　ジニーの写真・・・放課後、公園に集まる子供たち

〇空
　　皆の顔は明るくて、生き生きしている。ジニーの写真の中で。

〇空
　　でも、どうしてなんだろう、ジニーはまだ帰って来ない

〇シックなカフェ
ジェニー「フミオ、起きて！」
フミオ「あ、ジニーか・・・帰って来たんだね。僕、待ちくたびれて寝ちゃってたのかな？」

〇シックなカフェ
ジェニー「私はジニーじゃないわ。私はジェニー」
フミオ「ジニー、悪ふざけはやめてくれよ。ずっと君のことを待っていたのに」

〇シックなカフェ
ジェニー「ジニーはもう何十年も前にカメラはやめたのよ」
フミオ「は？ジニーはもうカメラガールじゃない？何十年も前から？じゃあ、君は未来から来たとでもいうのかい？」」

〇シックなカフェ
ジェニー「違うわ。あなたがいる今が未来なのよ」
フミオ「なんだって？タイムスリップかよ」

〇シックなカフェ
ジェニー「フミオ、写真を撮らせてね！」

〇シックなカフェ
フミオ「これが、僕？　　浦島太郎か？ いったい今はいつなんだ？」

〇時計
フミオ「それに、撮った写真がすぐ見れるなんて、これが未来のカメラなのか！」

〇時計
ジェニー「落ち着いて、フミオ。写真を順番に見ていくわよ」

〇時計
フミオ「ああ、僕だ」

〇時計
　　僕らのバンド

〇時計
　　ジニーと僕

〇時計
　　そうだった、やがてバンドは解散したんだ

〇時計
　　僕とジニーとは結婚して

〇時計
　　僕は作曲家として仕事を続けた

〇時計
　　いくつかヒット曲も出て、この店のオーナーにもなれたんだ

〇シックなカフェ
　　ああ、さっきの写真だね。そうだった。
　　これは僕の人生だ。僕はいったいどうしてたんだろう？
　　ジニーとはいつも一緒だったんだ

〇シックなカフェ
　　ジェニー、すると、君はいったい？」

〇シックなカフェ
ジニー「フミオ、起きて！」
フミオ「ああ、ジニー」

〇シックなカフェ
ジニー「あら、私のことがわかるの？フミオ。 このところ毎日毎日、「ジニーが帰って来ない」って言っては、私を困らせていたのに」
フミオ「さっき、ジェニーが来て、昔からの写真を見せてくれたんだ」

〇シックなカフェ
ジニー「ジェニー？それは誰？」
フミオ「若いころの君にそっくりなカメラガールだよ」

〇シックなカフェ
ジニー「そう、夢でも素敵ね。会ってみたかったわ」
フミオ「それより、ジニー、またカメラを始めないか？今の君の撮った写真が見たいな」

〇シックなカフェ
ジニー「そうね、それもいいわね。今はスマホでも写真が撮れるしね」
フミオ「スマホ？なんだっけ、それ」

〇渋谷のスクランブル交差点
ジニー「さあ、今日はもう帰りましょう。久しぶりに二人で一緒に渋谷の街をゆっくり歩いて」

〇シックなカフェ
　　ふたりは店内に飾られた写真の中に、ジェニーの撮った「今の」フミオの写真があるのに気づかず帰って行った。

〇シックなカフェ
　　僕のカメラガール