エピソード1「この失敗が雨と共に流れればいいのに……」(脚本)
〇川に架かる橋
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・・・・」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・雨、強いな」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・うん」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「偶然、折り畳み傘を持ってて良かったよ!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・私も」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「さすが! 陽葵は準備がしっかりしてるよな!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・ありがとう」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あー・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あー・・・」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「大丈夫? 寒くないか?」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・大丈夫」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「ま、そうだよな。 もう春も終わるし・・・」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あー・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あー・・・」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「今日の授業、つまらなかったよなぁ! 大学2年から必修も増えて、しんどくなったよなぁ!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・そうかも」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あー・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あー・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「えーっとぉ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「そういや、今週の土曜日、デートだな!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・うん」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「た、楽しみだな!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・うん」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・えっと、映画館に行くんだよな!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・うん」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・って、この質問、昨日もしたっけ」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「ははっ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・なんでもない」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・たの、しみ」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「え? あ、あぁ!」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「俺も、すっげぇ楽しみ!」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「わりぃ、俺、帰り道こっちだわ」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・ついて、行く?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「いや、大丈夫! 雨もまだ止まなそうだし!」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「帰って、休みなって」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・わかった」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「じゃ、また明日な!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・また明日」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「も、もう駄目だぁ・・・ お終いだぁ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)(付き合ってもう3週間、会話が弾まない)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(ついて行く? って聞かれたのに、ろくな返答も出来なくて・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(喋り声も、幸せな一時も、生きる希望も、全て雨水に溶け、排水口から流れ落ち・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(大学2年目の初彼女に、晒す醜態、流れる涙、そんな涙もこの雨の中では溶けて消えてしまうような・・・・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(今夜もまた、彼氏失格と振られてしまう恐怖と戦うのか、俺は・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)「そんなのぃゃぁだぁょぉぅぉうぉう・・・」
〇一人部屋
月見 時雨(つきみ しぐれ)「付き合ってもう3週間、会話が弾まない。喋り声も、幸せな一時も、生きる希望も、全て雨水に溶け、排水口から流れ落ち・・・」
結斗「あぁはいはい、まーた会話が盛り上がらなかったんだな」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「結斗ぉ、助けてくれよぉ・・・。 高校時代からの仲だろぉ・・・?」
結斗「とりま、暗くなるな。お前はすーぐ、暗くなるんだから」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「おーいおいおい、おーいおいおい・・・」
結斗「気色悪い泣き方すんな、生きてるだけで気持ち悪いんだから」
結斗「彼女だって、お前のことが好きで付き合ってるんだろ? もっと自信持てよ」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「おいおいよぉ、おいおいよぉ・・・」
結斗「・・・電話、切るぞ?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「縁だけは、切らないでくれぇ・・・」
結斗「お前が前向きになったら考える」
結斗「まずは彼女が楽しめるよう、お前からも話題振ってやれよ」
結斗「っつか、今度彼女の好きな映画見に行くんだろ? それでいいじゃん」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「また、醜態を晒して嫌われるんだぁ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「映画館で寝て、いびきをかいて、嫌われるんだぁ・・・」
結斗「前日に寝とけよ、この屑が」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「この恐怖から逃れるなら、いっそ別れてしまった方が・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「って別れるわけねぇだろっ!! やっと愛する人が見つかったんだぞ!?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「陽葵のことは死ぬまで愛する、それが彼氏ってもんだろがぁ!!」
結斗「急に叫ぶな、お前一人でさっさと地獄に行け」
結斗「ちな、電話とかしないの?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「で、電話ぁっ!?」
結斗「お前は電話を知らんのか。別に、彼女と夜に電話することぐらい普通だろ」
結斗「ってか、逆に電話したことねぇの?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「で、電話か。 確かにそれだったら夜にあいつとも喋れ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「なにを喋ればいいんだぁぁぁ!!!!」
結斗「知るか、消えろ」
結斗「せいぜい頑張れよ。切るからな」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「結斗ぉ、待ってくれよぉ・・・」
結斗「とっととしn」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・電話、してみるか」
陽葵「時雨・・・?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あ、陽葵!」
陽葵「・・・どうしたの?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あ、いや、その、えと・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「なんか、声が聞きたくなって・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「ほら、今度のデートのこともちょっと話そうかなって」
陽葵「・・・そっか」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・って、待ち合わせ場所も時間も決めてるけど」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「他に、行きたい所とか、ある?」
陽葵「あ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あ、ご、ごめん。 変なこと聞いちゃった?」
陽葵「・・・考えてみる」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「そ、そっか。ごめんな、急に! 俺も調べてみるわ!」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「じゃ、じゃあまた明日な!」
陽葵「うん、ありがとう・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「何も喋れなかった・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「気を遣わせてしまった・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「キョドってしまった・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「お終いだぁ・・・」
〇女性の部屋
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「はぁ・・・///」
朝喜 千華(あさき ちか)「お姉ちゃんが突然入るよ~」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・ウザ優しいお姉ちゃん」
朝喜 千華(あさき ちか)「ウザいは余計、優しいだけ」
朝喜 千華(あさき ちか)「陽葵~、聞いてよ~。 ま~た、マッチングアプリうまくいかなくてさぁ・・・」
朝喜 千華(あさき ちか)「26にもなると、ちょっと焦る~」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・大好きな人、探すだけじゃないの?」
朝喜 千華(あさき ちか)「それが難しいんだよぉ・・・。 もうそろ、妥協しなきゃかなぁ・・・」
朝喜 千華(あさき ちか)「陽葵も大学入って2年目にして、やっと彼氏が出来たんでしょ?」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「出来た・・・///」
朝喜 千華(あさき ちか)「幸せそうで何より! この時期の恋愛、大切にしろよ~!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「する・・・!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・今日も、一緒に帰ったの」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・時雨、かっこよかった!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・電話もしたの!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・オドオドで可愛かった!」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「だい、好き・・・///」
朝喜 千華(あさき ちか)「そうかそうか~」
朝喜 千華(あさき ちか)(しっかし、無愛想極まりないこの子に彼氏が出来るなんて・・・)
朝喜 千華(あさき ちか)(優しい彼氏さんだなぁ・・・)
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・なに?」
朝喜 千華(あさき ちか)「なんでもなーい」
〇一人部屋
月見 時雨(つきみ しぐれ)「うぇーんうぉーん・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「ぐすりぐすぐす・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「俺に彼氏なんて無理だったんだぁ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)(根暗で陰キャだった俺が、彼氏になるなんて笑止千万、不可能だったんだ、俺は可能を不可能にする男だし・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(穴があったら入りたい、無くても掘って、住み込みたい・・・、そして誰にも見つからず、そこで朽ちて養分となって・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・でも、」
〇教室
学生時代、俺はずっと教室の片隅で大人しく過ごしてた
そんな自分が嫌で、いつか自分を変えたいと思っていた
〇大教室
大学に入ってすぐ、ここぞとばかりにデビューに励んだ
いわゆる陽キャを目指して、お洒落をして、サークルに入って・・・
それでも、どこか馴染めなくて・・・
〇居酒屋の座敷席
ホラーモットノメヨー
ゲームシヨウゼー
カノジョイルノー?
月見 時雨(つきみ しぐれ)「もう無理、気持ち悪・・・」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・大丈夫?」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あ、ごご、ごめん! 急に隣に来ちゃって!!」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「いや、あいつらのノリについて行ったら飲み過ぎちゃってさ、はは・・・」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・頑張ってて、凄い」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「え、な、なに!?」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・お酒、得意じゃないのに」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・お酒を飲んで、偉い」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「え? お酒得意じゃないの知ってた?」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・一年生から、クラス一緒」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「あ、そうだったっけ、ごめん!! クラスで集まることあんまり無かったから気づかなくて・・・」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・初めの頃から、いっぱい変わった」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・お洒落して、色んな人とお話しして」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・どんどん、かっこよくなって」
朝喜 陽葵(あさき ひまり)「・・・尊敬してたの」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「え、あっ・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「ありがとう・・・」
陽葵は、初めて俺の努力に気づいてくれた
それが嬉しくて、嬉しくて、もっと頑張ろうってなって
気が付いたら、陽葵にかっこいいって思われることが、一番の目標になっていて
〇一人部屋
月見 時雨(つきみ しぐれ)(それで、やっとの思いで告白して、あの陽葵が彼女になったんじゃねぇか・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(あいつのために頑張れなくて、なんの為なら頑張れるんだよ・・・)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(陽葵のために頑張れないで、何が彼氏だ!)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(次のデートは、もっと彼氏らしく振舞う!!)
月見 時雨(つきみ しぐれ)(俺が、陽葵の彼氏だぁっ!!!!)
月見 時雨(つきみ しぐれ)「・・・・・・」
月見 時雨(つきみ しぐれ)「不安だぁ・・・」
エピソード1
「この失敗が雨と共に流れればいいのに・・・」
~完~
この2人の初々しさ、たどたどしさ、見ていてドキドキします😳
時雨クンの豪快な泣きっぷりとネガティブさに笑ってしまいながら、その奥にある繊細な感情の描写に胸を打たれました✨
こんばんは!しぐれ君のネガティブと彼女の心の中では凄く幸せという対比がとても面白かったです!
個性的なカップル、どうなっていくのでしょうか
時雨くん…泣きすぎ!😂
陽葵ちゃんは、時雨くんのことをずっと見てたんですね✨
二人とも初々しくて、可愛いです♪