1話 七月某日『渋谷紛争』(脚本)
〇ミリタリー
宣誓
私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、
日本国憲法及び法令を遵守し、
一致団結、厳正な規律を保持し、
常に徳操を養い、人格を尊重し、
心身を鍛え、技能を磨き、
政治的活動に関与せず、
強い責任感をもって
専心職務の遂行にあたり、
事に臨んでは危険を顧みず、
身をもつて責務の完遂に務め、
もって国民の負託にこたえることを
誓います。
自衛隊、服務の宣誓より
〇空
平成の時代、
僕達は沢山の”厄災”を経験した。
2002年疫病、
2008年金融危機、
2011年大震災。
ゆとり世代の男性「俺らってさぁ、 もうこんだけ経験したんだからさあ、 これ以上不幸な事が起こりようがなくね」
ゆとり世代の男性「だから心配しなくても未来は明るいって!」
そんな風に皆思ってた。
でも、勿論キナ臭い事も起きてはいたけど、
見て見ぬふりしてやり過ごし、
なんだかんだ言って、世界のお偉いさん達はバカじゃないし
やっぱり平和が一番で、
この生活がずっと続くと思っていたんだ。
そう、それこそまさに──
千代に八千代に、
さざれ石の巖となりて
苔のむすまで・・・
〇東京全景
七月某日、早朝
人々はいつものように
通勤通学をしていた。
〇渋谷駅前
サラリーマン「なんなんだあの”集団” コスプレか何かか?」
隊列を組む兵士達
侵攻軍指揮官「・・・」
侵攻軍指揮官「すぅ~・・・はぁ~・・・」
侵攻軍指揮官「この”世界”は空気がマズイな」
侵攻軍指揮官「全軍! 突撃せよ!!」
「オオオオオオッーー!!」
サラリーマン「えっ、ちょ・・・待って! こっち来んの!?」
謎の兵士「セェェエエエイッ!!」
サラリーマン「グハッ・・・!?」
サラリーマン(おいおい、嘘・・・だろ? 痛い・・・血が・・・止まらない)
一般女性「・・・あ、あ・・・」
謎の兵士「女! こっちに来い!」
一般女性「いや、行きたくない! 離して! 誰か助けて!」
子供「うえええん!! ママぁ〜」
謎の兵士「へっ、ガキか・・・。 剣の練習がてら斬り殺すか」
子供「ヒッ・・・」
謎の兵士「ガッ──な、なんで急に、 身体に穴が・・・グフッ」
警察官「早くこっちに来なさい!」
警察官「本部、本部! 応答願います!」
警察官「現在渋谷で”武装集団”による”暴動”が発生!」
警察官「なお、暴動はエスカレートして近隣住民を刃物で殺戮中!」
警察官「我々では対処しきれません! 応援を要請します!」
無線機「了解した。 現在機動隊を現場に向かわせている」
〇センター街
警察──機動隊、現場到着
警察官「ここで奴らを食い止めるぞ! 発砲用意!」
警察官「撃て」
謎の兵士「グハッ・・・”マーガル帝国”・・・万歳」
侵攻軍指揮官「なんだあの小型の武器は・・・」
侵攻軍指揮官「兵士達が穴だらけで倒されている!!」
侵攻軍指揮官「ええい・・・魔法使い、前へ!」
侵攻軍指揮官「防御魔法を展開しろ!」
魔法使い「プロテクト!!」
侵攻軍指揮官「よし! 次は炎の魔法で焼き払え!」
魔法使い「ファイヤ・プロージョン」
〇センター街
警察官達「ぎゃあああ!! 熱い! 熱いいいい!!」
もはや、警察では対処しきれなかった。
こうして渋谷は謎の武装集団に占領され、
荒廃した。
〇上官の部屋
総理大臣の部屋
防衛大臣「総理! 渋谷は、暴動レベルではありません!」
防衛大臣「これは紛争です! 相手も単なる武装集団では無く、軍隊です!」
総理大臣「ぐぬぬ・・・、ではやるしか無いのかね」
防衛大臣「ハイ、 でないと被害が広がり続けるかと・・・」
総理大臣「仕方が無い、”伝家の宝刀”を抜くか」
総理大臣「自衛隊に”治安出動”を命ずる」
総理は戦後始めて
治安出動を命じた。
〇荒廃したセンター街
魔法使い「なっ・・・魔法が、効かない!?」
侵攻軍指揮官「な、なんなのだ、 あの移動する鉄の塊は・・・!?」
74式戦車「前進用意・・・」
74式戦車「前へ!!」
謎の兵士「うわああ!! こっちに来る!」
謎の兵士「退却! 退却!」
侵攻軍指揮官(マズイ! 兵達が動揺して陣形が崩れている)
侵攻軍指揮官「使いたくなかったが仕方ない、 魔獣を投入せよ!」
侵攻軍指揮官「行け魔獣! 燃やし尽くせ!」
魔獣イフリート「ウヲヲヲヲヲヲッ!!」
74式戦車「・・・」
74式戦車「・・・装填よし!」
74式戦車「・・・照準よし」
74式戦車「──テッ!!(撃て)」
・・・
侵攻軍指揮官「ま、魔獣が・・・ 一撃で木っ端微塵だと!?」
侵攻軍指揮官「退却! 全軍退却するんだ!」
〇黒背景
謎の兵士「死にたくない・・・死にたくない・・・」
謎の兵士「うぅ・・・”ファージア”に帰りたい」
侵攻軍指揮官「くっ・・・兵も士気もボロボロ、壊滅状態」
侵攻軍指揮官「誇り高き精鋭『マーガル帝国軍』が このような無様な姿に・・・」
侵攻軍指揮官「・・・クソっ!」
侵攻軍指揮官「”この世界”に侵攻するべきではなかった!」
侵攻軍指揮官「魔法使い達よ! 急ぎ魔法陣に魔力を注いで”ホール”を開け!」
侵攻軍指揮官「”ファージア”に帰還するぞ!」
呪文と魔力を展開中
〇魔法陣2
侵攻軍指揮官「よし! 無事にホールが開いたな」
魔法使い「殿下、お先に早くご帰還を・・・」
侵攻軍指揮官「いや私はまだいい、 指揮官として兵達が無事に全て帰還するのを見届けてからだ」
魔法使い「殿下・・・流石でござい──」
侵攻軍指揮官「魔法使い!?」
侵攻軍指揮官「ガッ・・・ここまで、か・・・」
侵攻軍指揮官「マーガル帝国・・・万歳・・・」
木村英介「ハァ、ハァ・・・」
木村英介「制圧完了・・・」
木村英介「なんなんだ、この光は・・・」
〇黒背景
こうして、後に『渋谷紛争』と呼ばれる
この騒動は幕を閉じた。
だがしかし、
とある隊員が発見した光の渦
──通称『ホール』は極秘とされ
国民全体に存在が秘匿された
〇東京全景
そして世間は犠牲者を追悼し、
二度とこのような事が起きないよう
祈りを捧げ
再び渋谷の街を復興させるのだった。
〇ミリタリー
──某陸上自衛隊駐屯地──
第16偵察隊司令官「我々第16偵察隊隊員は、8月15日、 『ホール』へと潜入する!」
第16偵察隊司令官「なおこの任務は、 大変危険な”命がけ”の任務であるため、」
第16偵察隊司令官「隊員諸君は悔いのないように」
第16偵察隊司令官「『物心両面』の準備をしてもらいたい! 以上!」
・・・
木村英介「・・・え?」
続く
れこんさんお久しぶりです!お邪魔致します〜
うわ〜これは新しい!
警察ってタップノベルでよく出てくるんですけど自衛隊✕ファンタジーキャラ、中々想像つかなくてわくわくです!
キャラクターもデザインされてるんですね!魅力的です!
主人公の出番がもう少し欲しかったですが、これからですね。しかし異世界に進出して撤退せざるを得ないというのは、敵ながらなかなかカッコ悪いですね。この展開は斬新です。
異世界からの軍隊の侵攻に対し、自衛隊による治安出動という現行法令に基づいた対応!?
この設定が緊張感と生々しさを生んで面白いですね!