この手紙がどうかあなたの元へ

南実花

この手紙がどうかあなたの元へ(脚本)

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〇古い本
  拝啓 お母様
  普通はこういう かしこまった手紙では、冒頭に季節や時期にあった挨拶文を書くと思うけど、
  生まれてこの方、手紙というものをあまり書いてこなかった私は
  なんと書いていいか全く分からないので省略させて頂きます。
  さて今私はお母さんのいる場所から遠いところに住んでいますが、
  この場所では、とあるブームが来ています。
  そうです。今書いているこれ。手紙です。
  ブームなど どうでもいいと思っている私ですが、
  先日友達にお前も書けと脅しのような勢いで言われたので、
  今書いている。という状況です。
  手紙自体は好きですけど、いざ自分が書くとなったら、
  何を書いていいか分からないし、
  どういう口調で書いていいのか分からなくなるから苦手です
  現にお母さんに向かって、普段は絶対使わない敬語を使ってますしね(^^)
  そしてもう既に何を書けばいいのか分からなくなっています。
  とりあえず、思い出話でもしようかな?
  私の小さい頃は、近所の友達とよく山に遊びに行ってましたね

〇村の眺望
  勿論ご存知の通り田舎生まれ 田舎育ちで
  歩いて遊びに行けるお店や公園はなかったので、
  山に登ったその先が唯一の遊び場でした。
  そこでは景色を眺めたり、
  今の私じゃ考えられないけど、
  友達と虫を捕まえて遊んだりしてました。
  友達と言っても、同い年の男の子1人ですけど・・・
  その友達とは虫取りだけでなく もっと大きな事をして遊んでいました。
  例えば・・・

〇山中の川
  魚をたくさん取っては、
  逃して をひたすら繰り返す
  今考えると、何が楽しいのか分からない遊びをしたり、

〇山の中
  山全体を使った かくれんぼとか・・・
  見つからない時は平気で2,3時間見つからないから、
  見つける方も探す方も途中から大焦りで(笑)
  それで、やっと出会えた時には
  安心して、互いに大号泣したり
  全部楽しい思い出だったな〜
  こういった遊びが高じて、
  あの事件が起きたのです。

〇山並み
  それは私が友達と山で遊び始めて、約1年くらいたった頃。
  そろそろ山での遊びにもマンネリ化がやってきて、
  何か別な、もっともっと大きいことをして遊びたい!
  と思った時です。
  その日は珍しくその友達から、遊びの誘いがありませんでした。
  あれば良かったのに・・・
  あればあんなことにならなかったのに。

〇山の中
  幼い私が考えた<大きいこと>は、
  友達にドッキリを仕掛けることでした
  山で出来るドッキリといえば、落とし穴しか無いと考えた私は、
  持てる時間を使って、大きく、深く、穴を掘りました。
  ほら、あの時のこと覚えていませんか?
  私が急にハシゴ貸してと言った日のこと。
  お母さんは不思議そうに「何に使うの?」って言ってきたよね?
  言い訳を考えていなかった私は アフアフ しながら答えていたと思います(笑)
  借りたハシゴを使って、友達はどんな顔をするだろうと考えながら、
  一生懸命掘っていました。
  ちなみに 私の計画では、次の日に友達を誘導して落とす予定です。

〇広い玄関
  次の日学校が休みだったので、朝早くから友達の家へ遊びに行きました。
  もちろん落とし穴に落とすため。
  でも家に友達はいなく、私を迎えに行ったというのです。
  「何やら楽しそうに迎えに行ったよ」と友達のお母さんは言っていました。
  その時の私はこの言葉を気に止める ということはなかったけど、
  今考えたら、そういうことだよね・・・

〇山の中
  友達はきっと私のお母さんから話を聞いて、もう山に向かっていると 踏んで
  私も山へ向かいました。
  ただ、山のどこを探しても見つけることが出来ず、
  なので、普段は足を踏み入れないような場所に行ってみよう と向かった時 それは起きました。
  その場所には友達が大切にしている
  ストラップが落ちてました。
  私はこの近くにいるのかもしれない!
  と辺りを探しました。
  そしてその時__
  そう、落とし穴に落ちたのです。
  まず1番に(しまった)と思いました。
  友達を落とす穴に自分が落ちてんじゃん
  と自分の不注意に落胆してましたね。
  でもそのうちに焦りが出てきたんです。
  落とし穴を仕掛けたことを知っているのは私だけ、
  それも仕掛けたのは山の奥深くに当たる場所
  もしかしたからずっと見つけられず、ずーっとこのままではないのか・・・!?
  だったら、自分で脱出するしかない。
  脱出方法を考える前に、まず冷静になって、仕掛けた時のことを考えて見よう!
  自分で言うのは何ですが、子供ながらによく考えたと思います。
  まず、仕掛けた時。
  私は場所が分からなくならないように、
  そして、友達を誘導する理由作りのために
  私の大事なぬいぐるみを置いておいたのでした。
  ・・・。
  私は気づきました。
  この落とし穴の近くにはぬいぐるみではなく、
  ストラップが落ちていた事に。
  この意味分かりますか?
  その日
  その友達も
  私と全く同じことを考えていたのでした。
  そうなると、もしかしたら友達も私の落とし穴にはまっているかもしれない
  それを考えると余計に平常心じゃ居られなくなりました。
  私は焦りました。
  焦って、焦って、焦って。

〇山の中
  でも焦っても日が暮れるだけ。
  それでも私は焦ることしか出来なかった。
  泣くことしか出来なかった。

〇山の中
  そんな私を批難するように、太陽は逃げていき、
  嘆くように、雨が降ってきました。
  山の夜は寒い。
  平気で気温は1桁になる。
  それに加え、山奥で、雨が降っていて、私の服装も軽装のため
  私の体は凍えていき、
  感触がなくなっていき・・・
  ・・・・・・

〇黒
  これが・・・
  私の最後の
  記憶です。
  私が亡くなるまでの
  すべて です。
  ちなみにその友達とは今も仲良くて、不思議なことにお互い 精神の部分だけ成長していってます
  そして、この手紙を書けと言った友達がこの人です。
  この意味は・・・分かりますよね?
  だから、どうか・・・

〇古い本
  この手紙がどうかあなたの元へ
  届きませんように。
  〜fin〜

コメント

  • うわ~っ! 悲しいな~っ!
    自分も子供のころ、落とし穴、掘りましたよ!
    公園の砂場でですけど!
    子供って落とし穴が好きですからねー。
    うううっ(ToT)

  • 読み進めるうちに怖くなってきました。
    この手紙が届いたらどうなるんだろう?とか、彼女はまだ生きているのか?とか、いろいろと考えてしまいました。

  • 同じような発想をして同じように穴に落ちて亡くなってしまったなんて、ふたりが過去も今も本当に仲良しだったことが伝わってきました。あちらの世界からきた手紙でも、受け取ったらお母さんは嬉しいんじゃないかなとも思いました。

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