エピソード11 何の為、頭は固め(脚本)
〇空き地
来栖 誠司「お」
来栖 誠司「花に水やりしてんの?」
佐々波 命「ん? ああ、来栖くん」
佐々波 命「そうだよ。最近、雨降ってなかったから念のため」
来栖 誠司「ここって、私有地じゃないの?」
佐々波 命「かもね。だからこそ、誰かがあげないと」
来栖 誠司「なるほど」
来栖 誠司「俺もやっていい?」
佐々波 命「もちろん」
佐々波 命「これ使って」
来栖 誠司「買ったの?」
佐々波 命「まさか。再利用だよ」
佐々波 命「花にはかけず、土に含ませるようにするんだ」
来栖 誠司「りょーかい」
俺たちはちょっとの間、黙々と水やりをしていた。
来栖 誠司「なぁ」
佐々波 命「ん?」
来栖 誠司「佐々波は、何も聞かないんだな」
佐々波 命「何もって、何を?」
来栖 誠司「初めて会った時、俺に悩みがあることを見抜いたじゃないか」
来栖 誠司「でも、それが何なのか聞いて来ないから」
佐々波 命「それは君個人の問題だよ。僕がとやかく言うことでもなければ」
佐々波 命「面白半分で問い詰めることもしない」
佐々波 命「君の悩みは、君だけのものなんだ。だから他人は関係ない」
来栖 誠司「あはは」
佐々波 命「あれ? 僕変なこと言った?」
来栖 誠司「ああ、いやごめん。そういう意味じゃないんだ」
来栖 誠司「ただこの前、常世にも同じようなこと言われたなと思って」
佐々波 命「なるほど」
来栖 誠司「なぁ、佐々波は」
来栖 誠司「どうして、そんなにしてまで命を大事にしたいと思うんだ?」
佐々波 命「この世で最も尊いものだからだよ」
来栖 誠司「いや、それはそうなんだろうけどさ。そうじゃなくて、」
来栖 誠司「佐々波個人の理由だよ」
佐々波 命「僕の?」
来栖 誠司「そうそう」
来栖 誠司「そう思うようになったきっかけとか、そうすることによって求めていることとかさ」
来栖 誠司「例えば、その・・・来世の為とか」
佐々波 命「来世?」
来栖 誠司「ああ、いや。何でもない」
来栖 誠司「別に無理に答えなくてもいいや」
佐々波 命「いいのかい?」
来栖 誠司「うん。この前、常世に同じようなこと聞いて怒られたの思い出したや」
佐々波 命「あはは。じゃあ、まずいね」
来栖 誠司「そうなんだよ、あいつなかなか気難しいところあってさ」
佐々波 命「いつも不愛想だしね」
来栖 誠司「あ、わかる? もう大変なんだよ」
〇マンション前の大通り
来栖 誠司「そっか、じゃあ佐々波も戦林にあったのか」
佐々波 命「うん。この前ね」
佐々波 命「なんというか、僕はああいう人の嫌いだな」
来栖 誠司「まぁ、わからなくもない」
来栖 誠司「実際、どう扱ったらいいかわからないよな」
佐々波 命「ん?」
来栖 誠司「どうかした?」
佐々波 命「あの、煙・・・」
来栖 誠司「・・・火事か?」
来栖 誠司「え、あ! ちょっと!」
〇一戸建ての庭先
〇住宅街の道
来栖 誠司「はぁ・・・はぁ・・・」
来栖 誠司「いきなりどうしたんだよ」
佐々波 命「いや、できることがあるんじゃないかと思って」
来栖 誠司「あんまりないと思うけど・・・」
子供「ポチ助! ポチ助がー!」
「・・・・・・」
佐々波 命「あの家の中にいるのかい?」
子供「うん・・・」
子供「あのままじゃ・・・」
子供「ポチ助が死んじゃうよぉ」
佐々波 命「・・・・・・」
来栖 誠司「なぁ、佐々波。わかってると思うけど」
来栖 誠司「あ、おい!」
来栖 誠司「だぁぁぁ! クソッ!」
〇おしゃれなリビングダイニング
来栖 誠司「クソッ、あいつどこ行った?」
来栖 誠司「佐々波! 佐々波!」
来栖 誠司「上か!」
〇一階の廊下
佐々波 命「くっ・・・」
来栖誠司「佐々波! 佐々波!」
来栖 誠司「待てって!」
佐々波 命「なんで来た」
来栖 誠司「放っておけるかよ!」
来栖 誠司「無茶にもほどがあるだろ!」
佐々波 命「でも、助けられるかもしれない命を見過ごすことはできない」
来栖 誠司「だからって・・・」
佐々波 命「君は先に戻っていてくれ」
来栖 誠司「ちょ!」
来栖 誠司「それが出来てたら、ここまで来てないっての!」
〇勉強机のある部屋
佐々波 命「どこだ! ポチ助くん!」
佐々波 命「飼い主が君の帰りを待ってるぞ!」
来栖 誠司「返事をしろ! ポチ助!」
佐々波 命「なっ!」
佐々波 命「先に戻ってくれと言っただろ!」
来栖 誠司「ここまで来てできるかよ!」
来栖 誠司「いいから、さっさとポチ助見つけて帰ろうぜ!」
佐々波 命「・・・わかった」
佐々波 命「どこだ! ポチ助くん!」
???「僕はここにいるよー」
「え!」
ポチ助「僕の名前はポチ助。僕とお話ししよう」
ポチ助「大丈夫、ゆっくり話して。僕はここにいるよ」
「・・・・・・」
〇住宅街の道
ポチ助は、飼い犬でもなんでもなく、ただのお喋り機能のあるぬいぐるみだった。
来栖 誠司「ほい」
子供「ポチ助!」
ポチ助「僕はここにいるよ。何でも話してみて」
子供「ポチ助ー!」
子供「よかった、よかったよぉ」
「・・・・・・」
子供「お兄ちゃんたち、ありがとう」
来栖 誠司「ああ、いや。大したことは・・・ねぇ?」
佐々波 命「・・・・・・」
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