第1話 王子様なんてどうでもいい(脚本)
〇西洋の城
これは、
とある小さな王国の
王室を巡る恋のお話──
〇謁見の間
国王は、あることで悩んでいた。
国王「うーむ、双子の王子・・・どちらが王位を継ぐか」
「国王様・・・」
ジャック「それなら、私が」
ロイド「いや、私が」
国王「ロイドはしっかり者だが少々突っ走るところがある」
国王「ジャックは優しいが少々頼りないよな・・・」
国王「よし、あの娘に決めてもらうか・・・」
国王は古くからの友人、
ナサニエル伯爵に手紙をしたためた。
〇立派な洋館
同日、
ナサニエル家──
〇貴族の応接間
エリカ「何よ、この手紙っ!」
エリカ「とうして私が選ばなきゃいけないのよっ!」
私は手紙をテーブルに投げつけ、ソファにどさっと腰を下ろした。
バン「お嬢様、そうおっしゃらずに。 心を落ち着ける紅茶を御用意致しました」
エリカ「はぁ・・・」
テーブルの上にそっと置かれた紅茶。
私の大好きな香りがする。
もちろん、
それはお茶から香るのではなく──
エリカ(ああ、バン。 どうしてこんなにいい香りがするの?)
私の好みを熟知している彼が淹れる紅茶からも、大好きな香りはするのだけれど。
バン「お嬢様の伴侶となるお方です。 お嬢様が決めなくて、どなたが決めるのです?」
エリカ「はぁ、もう・・・ そもそもなんで王子が二人もいるのよ」
バン「またそのようなことをおっしゃって・・・」
エリカ(まあ、一人だろうが二人だろうが、 関係ないか)
エリカ(私が好きなのは、 バン、貴方だけなんだから・・・)
王子からの求婚なんて、心底どうでもいい。
バンが私に仕えてくれるなら、
どちらと結婚しようが関係ないから。
エリカ「お紅茶、美味しいわ」
バン「それは何よりです、プリンセス」
エリカ「『プリンセス』だなんて・・・」
私はカップをテーブルに戻すと、膝に頬杖をついてお茶を片すバンを見上げた。
バン「もうすぐ、そうなられるのですから。 プリンセスとお呼びするのは嫌でしたか?」
エリカ「い、嫌なわけないじゃない!」
エリカ(でも、私の王子様は貴方だけ・・・)
私は子どもの頃を思い出していた──
〇貴族の応接間
エリカ(幼少期)(あーもう、勉強なんて嫌いっ!)
先生「エリカ様、集中してください」
エリカ(幼少期)「ええ・・・分かったわよっ!」
先生「つまり、ここが・・・で、 ・・・・・・となり・・・」
エリカ(幼少期)(あー退屈。 どうにかして抜け出せないかな・・・)
私は窓の外に目を向けた。
エリカ(幼少期)「ねえ、私のどが乾いたわ。 お茶を淹れてくださる?」
先生「はぁ、仕方ないですね・・・ 少々お待ちくださいませ」
エリカ(幼少期)(よし、今のうちに・・・)
ここは2階。
私は窓にそっと身を乗り出して、隣の大木に飛び移った。
エリカ(幼少期)「えいっ!」
〇木の上
エリカ(幼少期)(よし、飛び移れた。 あとはここを降りて・・・)
慎重に、足を踏み外さないように、そっと木を降りていく。
エリカ(幼少期)(・・・うう、どうしよう?)
──あと、2メートルくらいだろうか。
枝が無くなり、それ以上降りれなくなったのは。
エリカ(幼少期)(ええい、こうなったら・・・!)
私は意を決して飛び降りた。
エリカ(幼少期)「えいっ!」
ヒュンッ──
〇養護施設の庭
・・・・・・
エリカ(幼少期)(あ、あれ? 痛くない・・・)
エリカ(幼少期)(っていうか、あったかくて優しい感じ・・・)
私はそっと目を開けた。
エリカ(幼少期)「・・・」
エリカ(幼少期)「バ、バン!?」
間近に迫る、バンの顔。
私は、バンに抱き止められていたのだった。
バン「おやおや、エリカお嬢様でしたか」
バン「てっきり、天使が空から落ちてきてしまったのかと・・・」
エリカ(幼少期)(天使、ですって・・・)
抜け出したことを咎めもせず、
バンは私をその場にそっと下ろしてくれた。
バン「では、私はこれで」
庭から去っていく彼を見つめる。
心臓がうるさいくらいに騒いだ。
エリカ(幼少期)(分かる・・・私、恋に落ちたんだわ)
〇キラキラ
それからは、私は勉強に勤しんだ。
バンに手紙を書くために、文字を覚えた。
いつかバンと踊るために、ダンスも覚えた。
バンと一緒に居られるのなら、
誰と結婚しても構わない──
〇貴族の応接間
バン「ああ、すっかり忘れるところでした。 明日・・・」
バンはティーカップを片す手を止めてこちらに振り返る。
エリカ「分かっているわ。 王子たちが訪ねてくるのでしょう?」
エリカ「私は誰とも会わないわ」
バン「いえ、そうではなく──」
バン「明日より1週間、王宮で過ごしていただきたいと通知が──」
エリカ「嫌よっ! 絶対に嫌っ!!」
バン「はぁ・・・ エリカ様ならそうおっしゃると思っておりました」
エリカ「じゃあ、何で──」
バン「私も同行致します。 それならよいのでしょう?」
エリカ「ええ、バンが行くなら私も行くわ」
バン「やれやれ・・・」
バンはそのまま、ティーセットを手に部屋を出ていく。
エリカ(ふふ。 バンは私のことは何でもお見通しなんだわ)
エリカ(つられる私も私だけど。 でも、バンと一緒なら・・・)
こうして、私は明日から1週間、
王宮で過ごすことになった。
1話から引き込まれる展開で、お嬢様がバンに惹かれる理由が分かる気がします。見た目も中身もイケメンですよね✨
1番近くにいるのに想いを伝えられない、、、切なさに胸がきゅーっとなりました。バンはお嬢様の気持ちに気づいてる??バンはどう思ってるんだろう?など続きがめちゃくちゃ気になります!
きゅんきゅんしました!次回作もはやく読みたいです。
バンはお嬢様の気持ちに気づいているのかな?ずっと側にいてほしいなと思いました!