隔世遺伝(脚本)
〇おしゃれなリビング
ケンタ「・・・」
ケンタ「はあ~」
母「どうしたのケンタ難しい顔して」
ケンタ「母さん」
ケンタ「皆が俺のことを馬だ馬だって言うんだよ」
母「ケンタも自分の見た目が気になる年頃か」
母「一丁前に色気づいて」
ケンタ「前から気になってはいたんだけど、ちょっと最近馬が過ぎるというか」
母「まあ馬面の人っているじゃない、先代の円楽師匠とか」
母「それも個性よ」
ケンタ「そういうレベルじゃない気がするんだよな」
母「ほら、さかなクンだって頭だけ魚だし」
ケンタ「あれは外付けでしょ、たぶん風呂でははずしてると思う」
ケンタ「ねえ母さん」
母「・・・」
ケンタ「俺は皆と同じ人間なの」
母「・・・」
母「どうやらあんたに本当のことを話す時が来たようね」
ケンタ「・・・」
母「今まで黙ってたけど、実はあんたの父親はケンタウロスなのよ」
ケンタ「ケンタウロス!」
ケンタ「そうだったのか」
ケンタ「そういえば俺ちょっと足が速い」
母「遺伝の力よ」
ケンタ「そんな秘密があったとは。長年の謎が解けた」
ケンタ「いや待て」
母「?」
ケンタ「ケンタウロスって、上から人・馬だよね」
母「ええ」
ケンタ「で、母さんは人・人」
ケンタ(となると──)
ケンタ「なんでこっち(上)に馬出た?」
母「・・・」
母「あんたに本当のことを話す時が来たようね」
ケンタ「ああまだあるんだ」
母「家系図を書いて説明するわ」
ケンタ(自分がどうやって生まれたのか・・・)
ケンタ(この問いは決して避けて通ることができない)
母「いいかしら」
母「ケンタがいて、母と、ケンタウロス」
ケンタウロス―――母
|
ケンタ
ケンタ「なんかケンタの意味合いが変わってくる」
母「で実はあんたの父さんの両親が馬と人なのよ」
馬―人
|
ケンタウロス―――母
|
ケンタ
母「馬と人のハイブリッドでケンタウロス」
ケンタ「言い方」
母「でおじいちゃんからあんたへ隔世遺伝したんじゃないかしら」
ケンタ「隔世遺伝!」
ケンタ「遺伝の力恐っ」
ケンタ「馬って、たぶん家系図に1番出てきちゃいけない動物」
母「多様性の時代──」
ケンタ「限度がある」
ケンタ「あのさ、この際聞いとく。まだ隠してることあるんじゃない?」
母「え」
ケンタ「どうも最近胸が貝っぽいんだけど」
※作者注
なぜか馬の頭に人魚の身体を合わせることができなかったためポニテ女子で代用しています。ご容赦ください。
ケンタ「一族に、いるだろ」
母「・・・あんたに本当のことを話す時が来たようね」
ケンタ「サクサクお願いします」
母「実は私の父と母は両方とも人魚で」
馬―人 人魚―人魚
| |
ケンタウロス―――母
|
ケンタ
ケンタ「人魚、ダブルで人魚!」
ケンタ「そういえば俺たまに水中で息できる」
母「どっちかからあんたへ隔世遺伝したんじゃないかしら」
ケンタ「どっちかて」
ケンタ「え人魚オスいるんだ」
母「おじいちゃんのことオスとか言うな」
ケンタ「まだおじいちゃんとは認識できない」
ケンタ「えでもさ、両親人魚なら母さんも人魚になるんじゃないの。なんで」
母「・・・あんたに本当のことを」
ケンタ「サクサクどうぞ」
母「実は私の父の両親が人と魚人で」
・ 人―魚人
|
馬―人 人魚―人魚
| |
ケンタウロス―――母
|
ケンタ
母「おそらく人が隔世遺伝して──」
ケンタ「隔世遺伝やべえな!」
ケンタ「人魚は飛び越えてくるし。ってか胸の貝は外付けだと思ってたわ・・・」
母(あと私の母の両親が・・・)
・ 人―魚人 ジュゴン―マナティ
| |
馬―人 人魚―――人魚
| |
ケンタウロス――母
ケンタ「おいおいおいおい」
ケンタ「おーい!」
母「・・・」
ケンタ「見過ごせない」
母「ジュゴンが?」
ケンタ「そこもだし、全体がだよ」
ケンタ「神をも恐れぬ一族」
母「多様性はときに違和感を伴うものなのよ」
ケンタ「今日ほどそれを感じた日はないです」
ケンタ「えジュゴンとマナティで人魚いける?」
母「ワンチャンあるかも」
ケンタ「生命の神秘!」
ケンタ「こうなるともう母さんが人間で生まれてきたことが奇跡に見える」
母「誰しも生まれてきただけで奇跡よね」
ケンタ「ここから美談にもってくのは無理よ」
ケンタ「あーこの際父方はいいや半分は人間だし」
ケンタ「母方が狂気の沙汰、ほぼほぼ水中にいる」
再) 人―魚人 ジュゴン―マナティ
| |
馬―人 人魚―――人魚
| |
ケンタウロス――母
母「狂気だなんてひどい、反抗期になったの?」
ケンタ「家系図を人類で辿れないうちの子は反抗期になります!」
ケンタ「ここ(ジュゴンらへん)なんか魚類の壁あるもん」
ケンタ「魚類にブロックされる家系って絶対おかしいでしょ」
母「ケンタそれは違うわ」
ケンタ「?」
母「ジュゴンもマナティも哺乳類よ」
ケンタ「・・・知らねえよ」
ケンタ「哺乳類でも親戚が水中にいちゃダメだって」
母「はあ」
母「あんたには何を言っても馬の耳に念仏ね」
ケンタ「・・・」
母「でも忘れないで、人間万事塞翁が馬と言って──」
ケンタ「馬から離れてもらっていいかな」
やれやれ、こんな話をしてる場合じゃない
自分がどこからやって来たのか、なぜ存在するのか
それを知るための旅に出ることにした
面白かったです!
これからどんな風に展開していくのか楽しみにしています。
やばいのきた🤣
ガチで声出して笑いました
お父さんから下半身だけ遺伝してたらフードデリバリー「ウーマーイーツ」とかできたかもしれないけど、胸の貝も含めて見事なまでに役に立たない部分ばっかり遺伝してて、さすがに気の毒でした。ケンタが将来どんな生物と交配してどんなハイブリッドが誕生するか、ちょっと興味あります。