松旭斉の遺言とは?(脚本)
〇総合病院
〇病院の廊下
〇病室のベッド
一条和也「親父!」
一条由紀「お義父さん!」
一条松旭斉「達也は・・・おるか?・・・」
一条達也「お爺ちゃん!達也だよ!」
一条松旭斉「・・・達也・・・立派になって・・・」
一条松旭斉「最後に・・・孫の顔が見れて・・・ 幸せじゃ・・・」
一条達也「そんな悲しい事言わないでよ! お爺ちゃん!」
一条達也「もうすぐお爺ちゃんのひ孫が 産まれるんだよ!」
一条達也「ひ孫の顔見るまで、 お迎えなんか来させないからね!」
一条松旭斉「・・・ワシがまだ達也くらいの頃な、 死んだお母ちゃんに出逢ってのお・・・」
一条松旭斉「和也が産まれたんじゃが・・・」
一条松旭斉「お母ちゃんは、百貨店の エレガじゃった・・・」
一条和也「エレベーターガールだったんだよな」
一条松旭斉「あの頃の百貨店のエレベーターは、 いっつも満員じゃ」
一条松旭斉「ただ、そのー・・・ エアポケット言うやつかのお・・・」
一条松旭斉「たまたまワシがエレベーターに入ったら、 お母ちゃんとワシの2人だけじゃった」
一条達也(エアポケットなんて言葉知ってるんだ)
一条松旭斉「お母ちゃんが「何階に行かれますか?」 って聞いたからな」
一条松旭斉「「5階の紳士服売り場でお願いします」 って言ったんじゃ」
一条松旭斉「あの頃のエレベーターは、進むのが遅かった」
一条松旭斉「5階に行くまでに、そこそこ時間が あったからな、」
一条松旭斉「その間に急いで紙とペンを出して 家の電話番号を渡したんじゃ」
一条松旭斉「そしたら向こうが「ペンお借りして 良いですか?」って言って来たんじゃ」
一条達也「へえ!そうなんだ!」
一条松旭斉「お母ちゃん、その紙に自宅の電話番号を 書いてワシに渡したんじゃ」
一条達也「素敵な出会いだね! お婆ちゃんも一目惚れだったんだ?」
一条松旭斉「もう夢見心地じゃった・・・」
一条松旭斉「OH ドリーミングデイ」
一条松旭斉「それで自宅へ帰った後、 すぐに電話したんじゃ・・・」
一条松旭斉「そしたら、男の声がして・・・」
一条松旭斉「「もしもし、⭕️❌ローンです」って声が 聞こえてのう・・・」
一条達也「ん?それって・・・消費者金融の番号 教えられたって事?」
一条松旭斉「そうじゃ・・・」
一条達也「相思相愛じゃなかったんだ」
一条松旭斉「思わず「10万ほど用立ててください」 って言ったんじゃ・・・」
一条達也「借りちゃったんだ」
一条松旭斉「どうじゃった?」
一条達也「え?「どうじゃった」って?」
一条松旭斉「今のオチは?・・・」
一条達也「この状況でネタを試したの?」
一条松旭斉「そうじゃ・・・」
一条達也「凄い余裕あるじゃん!」
一条和也「父さん、元気じゃないか!」
一条松旭斉「お前は黙っとけ!」
一条達也(息子への当たりが強いな!)
一条松旭斉「そんでな、⭕️❌ローンに行ってな・・・」
一条達也(この話まだ続くんだ・・・)
一条松旭斉「雑居ビルの7階じゃったかのう・・・」
一条松旭斉「エレベーターに乗ったらな、 お母ちゃんがエレガやってたんじゃ・・・」
一条達也「え?何で? お婆ちゃん、百貨店と雑居ビルで エレガの掛け持ちしてたの?」
一条松旭斉「ワシもビックリしてな・・・」
一条松旭斉「7階に行く時にな、お母ちゃんに 「今から10万借りるんです」言うたんじゃ」
一条松旭斉「「借りたお金は何に使うんですか?」って 聞かれたからな」
一条松旭斉「「あなたにプレゼントする指輪を買います」言うたんじゃ」
一条達也「なかなかキザなセリフだね」
一条松旭斉「そしたら母ちゃんが笑いながら、 「じゃあその指輪うちの百貨店で買ってくださいね」って言ったんじゃ・・・」
一条達也「お爺ちゃんの求愛を 受け入れてくれたんだね!」
一条松旭斉「そうじゃな・・・」
一条達也「お爺ちゃんは、そう言われた時、 何て返したの?」
一条松旭斉「「あの店ボッタクリだから10万じゃ 大した指輪買えねえんだよ!」 言うたったわ」
一条達也「最低の返しだな!」
一条松旭斉「その一言で、お母ちゃんと意気投合してな」
一条達也「え?」
一条松旭斉「それで交際が始まったんじゃ」
一条達也「結局10万は何に使ったの?」
一条松旭斉「当時の10万は、今で言ったら 1000万くらいの大金じゃ・・・」
一条達也「大変な金額だよね」
一条松旭斉「2人でマカオ行って溶かしたったわ」
一条達也「やってる事がカタギじゃねえな!」
一条松旭斉「ただ、お母ちゃんの親父さんが ⭕️❌ローンの重役さんでな」
一条松旭斉「「他の連中からしぼり取るから大丈夫じゃ」言うてチャラにしてもらったわ」
一条達也「さっきから鬼みたいな話ばっかだな!!」
〇廃墟と化した学校
〇殺風景な部屋
一条松旭斉「還暦の時にな、お母ちゃんがアメリカ人と 長年不倫してたのがバレてな、」
一条和也「ああ、そんな事もあったね・・・」
一条松旭斉「うるさいな」
一条松旭斉「和也の異父兄弟がいるんじゃけどな」
一条松旭斉「それがデイトレーダーでのう・・・」
一条松旭斉「「世界が選ぶ100人」にギリギリで 漏れたらしいのう・・・」
一条松旭斉「その後、投資詐欺で捕まったんじゃ・・・」
〇宇宙空間
〇墓石
一条松旭斉「和也は、1人息子じゃから可愛かったけども」
一条松旭斉「甘やかしたら腑抜けになってしまう 思うて、あえて厳しく育てたんじゃ・・・」
一条松旭斉「もう立派になって、家族を支える 一家の大黒柱になったからのう・・・」
一条松旭斉「これからは和也に優しく接したいと 思うとるんじゃ・・・」
一条松旭斉「和也?・・・和也?」
一条達也「お爺ちゃん、もう遅いんだ・・・」
一条達也「親父はこの世にはいないんだよ・・・」
一条松旭斉「何でじゃ・・・?」
一条達也「天寿を全うしたからだよ・・・」
一条松旭斉「生意気だな!あの野郎!」
一条達也「あんたムチャクチャだな!!」
一条達也「そんで誰なのこの子?」
一条松旭斉「墓地で引っ掛けた子じゃ・・・」
一条達也「あんたいい加減にしろよ!!」
一条達也「この罰当たりが!!!」
〇宇宙空間
〇荒廃した市街地
ひ孫「ひい爺ちゃん!! あけましておめでとう!!」
一条松旭斉「おめでとう」
一条達也「こんなディストピアにおめでとうも クソもあるか!!」
一条松旭斉「少ないけどお年玉もらってくれ」
一条達也「いや、お爺ちゃん、 もうお年玉あげる歳じゃないのよ」
ひ孫「ありがとう!」
一条達也「結構持ってんだな・・・・・・」
一条松旭斉「一族が何かあった時のために、 貯めといたんじゃ・・・」
一条達也「もうそんな状況じゃ無いんだよ・・・・・」
一条松旭斉「それにしても可愛くない ひ孫じゃのう・・・」
一条達也「おい、ちょっと・・・」
〇黒
〇荒野
一条松旭斉「そろそろ・・・お迎えが・・・来たようじゃ」
一条松旭斉「後は・・・頼んだぞ・・・」
一条松旭斉「由紀さん・・・・・・」
一条松旭斉「X DAY・・・」
一条由紀「今までありがとう、お義父さん。 安らかに・・・」
一条由紀「rest in peace」
────────完────────
短編も読ませて頂きました
面白い(笑)
おじいちゃん元気すぎー!
何気孫も凄かったですけど
世界が世紀末みたいに大敗してるのは笑いました
松旭斉さん、スゴすぎ……ww
看取りシーンかと思ったらネタを始め、しかもディストピアでも生き続け、この御仁、只者ではないと思っていたら……由紀さんがさらにその上を行っていましたねww
ミイラ取りがミイラに、ではなくて、ミイラ看取りがミイラに、の展開がお見事でした。最初の登場から全く見た目の変化していない息子の嫁の由紀さんがラスボスだったとは。油断してました。でも断末魔王を看取る魔女がいて良かった…のか?