お姫様(脚本)
〇貴族の部屋
「──昔々、とある砂漠の国に、1人の青年がおりました」
「その青年は、相棒の小猿と盗みをしながら、共に貧しい生活を送っていました」
「その青年はある日、街で1人の女性を助け、恋に落ちました」
「ですが、その女性はなんと砂漠の国の王女だったのです」
「・・・青年はその後、牢屋に入れられてしまいましたが、とある魔術師にこう言われました」
「『砂漠にいる砂の猛獣のなかに入り、ランプを手に入れろ。そして私に寄越せば助けてやろう。』」
「『ただし、中にある財宝には触れるな。』」
「青年は承諾し、魔術師と共に砂の猛獣のもとへと向かいました」
「・・・そして、青年はランプの魔人と契約をし、3つの願いを叶えてくれることを約束されました」
「そして、青年、小猿、魔法の絨毯、ランプの4人で砂の猛獣の中から脱出しました」
「・・・『見た目は』王子になった青年は、王女のもとに豪勢なパレードを開きながら向かいました」
「ですが、王女は権力を振りかざすような真似をする青年が気にくわなかったようです」
「・・・青年は夜分に絨毯に乗って王女のもとへ行き、魔法の絨毯にのって散歩しようと誘いました」
「王女は戸惑っていました。ですが、それを見透かした青年はこう言いました」
「『僕を信じろ』」
「そして暫く2人は魔法の絨毯に乗っていましたが、王女は青年に、”あなたは街で出会った人でしょう?”と言いました」
「騙されていたことには怒っていましたが、彼女もまた、青年を好いておりました」
「・・・王女は魔術師の手によって知りました。青年が本当は王子ではないことを。そして魔術師は青年達を追い払いました」
「・・・その後、国王も権力関係なく口出しせずに、2人が結婚することを認めました。魔人も青年の最後の願いで人になれました」
アイシェ「めでたしめでたし」
シャイローゼ(幼少期)「お母様、砂漠のお姫様は、どうして権力を振りかざすところに嫌気がさしたの?」
アイシェ「そうね・・・お姫様は、地位とかで差別意識を生むのも、そういう人も嫌いだったんじゃないかしら?」
シャイローゼ(幼少期)「身分の違いを意識してはいけないってことなんだ・・・」
アイシェ「そうね。身分が高いからって、結局は皆同じ人なんだから。身分にとらわれてはいけないってことよ」
シャイローゼ(幼少期)「私、砂漠のお姫様に共感するわ。だって私の近衛騎士になった男の子、年上にも権力者達にも負けなかったのよ!」
アイシェ「ふふっ、その子って確か、アレグラット君よね?」
アイシェ「・・・ずっと、血の滲むような努力をしてきて、あんなに強くなったのでしょうね」
アイシェ「いい?ローゼ。差別はしてはいけないことなの。たとえ国や身分が違ってもそれは人として良くないことなの」
アイシェ「・・・あなたのお父様はいつも余裕がなくて人に優しくすることなんてあまりなかったけど、ローゼは人に優しくいてね」
シャイローゼ(幼少期)「うん、わかったわ。──ねぇ、お母様」
シャイローゼ(幼少期)「私にも、いつか砂漠のお姫様みたいに素敵な王子様ができるかな?」
アイシェ「ふふっ、ローゼってばまだまだ先の事を気にするのね。 ・・・でも、そうねぇ」
アイシェ「ローゼにはきっと、きっとできるわ」
アイシェ「だって私の娘だもの」
アイシェ「さ、もう寝ましょう。あまり夜遅くまで起きてちゃダメよ」
シャイローゼ(幼少期)「わかったわ、お母様。──おやすみなさい」
〇英国風の図書館
アレグラット「・・・シャイローゼ様?」
シャイローゼ「すぅ・・・」
アレグラット(寝ている・・・。本の内容的に、明日の魔法学の予習か)
アレグラット(こんな夜遅くに部屋にいないと聞いて驚いたが、見つかって良かった)
アレグラット(起こすのも悪いし、部屋まで抱き抱えていくか)
ヒョイッ
アレグラット(俺も鍛えてはいるが、それにしても軽すぎる)
アレグラット「無理をしているのは一体どっちなんだか・・・」
〇城の廊下
アレグラット(それにしても、この服・・・)
アレグラット(たしか、シャイローゼ様のお母様が使っていたやつと全く同じだな)
アレグラット(まだ、シャイローゼ様が着るには少し大きいな)
ポタ・・・
シャイローゼ「おかあ、さま・・・」
アレグラット(・・・まだ、心の傷が癒えていない)
アレグラット(でも、俺にはあなたを助ける手段も権力も持ち合わせていない・・・)
アレグラット「明日からは早く寝てくださいよ、お姫様」
〇武術の訓練場
カルエラ「今日は各々の魔法の威力を測る。これは成績に関わるから手を抜くんじゃないぞ」
カルエラ「この岩を人数分用意した。 手加減はするなよ!」
「はい!」
アレグラット(さて、どうしたものか・・・。俺が本気を出せば周りの生徒に被害を出しかねない)
カルエラ「アレグラット。少し離れたところにお前用の的を用意した。来るか?」
アレグラット「あ・・・ありがとう、ございます。行かせていただきます」
アレグラット(中等部のときに隣の建物を少し焦がしたのが伝わってたか)
カルエラ「そうか、では着いてこい」
シャイローゼ「攻撃魔法上昇 level Ⅱ」
シャイローゼ「”風よ、我が命に従い敵を切り刻め・・・”」
シャイローゼ「『風刃(ウィンドカッター)!』」
シャイローゼ「ふぅ・・・あ!」
シャイローゼ「や、やった・・・!岩を切れた!」
シャイローゼ「セゼル達に教えて貰ったかいがあったわ・・・」
カルエラ「やぁ」
シャイローゼ「あ、先生!」
カルエラ「これは凄いね。中等部の時より威力も上がっている」
カルエラ「それに、バフ魔法が使えるのはとても珍しい。アレグラットや俺も使えるから、どんどん聞いてくれよ」
シャイローゼ「はい、ありがとうございます! そういえば、アル・・・アレグラットは?」
カルエラ「ああ、そろそろじゃないかな?」
シャイローゼ「・・・え?」
男子生徒「うわ、なんだ?!」
女子生徒「やだ、これどこかで爆発が起きたんじゃ・・・」
男子生徒「先生!!あっちに黒煙が・・・!」
カルエラ「皆はここで待機!先生が戻ってくるまでここを動かないで」
シャイローゼ「ふふっ、アルってば本当にすごいなぁ」
琉翔(チッ、さすがに魔法では敵わないか。だが剣術では絶対に負けない・・・!)
〇基地の広場
数分前
カルエラ「ここだ」
アレグラット「先生、ここは?」
カルエラ「あぁ。ここは模擬攻城戦で使われていた場所なんだがな、ここ数年全く使ってないんだよ」
カルエラ「だから遠慮なくここに魔法をぶつけてくれ」
カルエラ「なんなら全崩壊させる勢いで良いんだからな?」
アレグラット(ここを撤去するための時間が無かったんだろうか・・・結果としては、それぐらいの気持ちでやるしかないか)
アレグラット「わかりました。・・・では、今からちょっと準備するので」
カルエラ「わかった。・・・あ、魔法を使うのは2分立った後にしてくれ。その間に飛行で離れるから」
アレグラット「・・・了解です」
カルエラ「じゃあな。期待しているぞ」
アレグラット「さて、どうしようか・・・」
アレグラット「まぁ、攻撃力の高い炎でいいか」
アレグラット「攻撃力上昇 level Ⅴ 範囲型補助魔法 level Ⅳ」
アレグラット「周囲3km 円形に魔法障壁 level Ⅳ 補強 level Ⅲ」
アレグラット「炎系統魔方陣展開」
アレグラット「攻撃対象を前方の城に決定」
アレグラット「──”インフェルノ”」
〇基地の広場(瓦礫あり)
カルエラ「──うわ!?」
カルエラ「周りが全く見えないな・・・あ」
カルエラ「かなり高いレベルの魔法障壁が張られている」
カルエラ「・・・ははっ」
カルエラ「噂通りの化け物のようだね・・・」
カルエラ「本当に凄いよ」
アレグラット「あ、先生」
アレグラット「先生、すみません。悔しいですが、壊すまではできませんでした」
カルエラ「ごめんごめん。実はさ、今年にまたここを使おうと思って、城自体に魔法障壁張ってたんだよね」
カルエラ「これは本来実力を見る時間だしね」
アレグラット「あ、なるほど・・・」
アレグラット(嘘をつかれていただけか)
カルエラ「でも凄いよ。あともう少しで僕の魔法障壁も壊されていたと思う」
アレグラット「光栄です」
カルエラ「さて、消火してから戻らないと怒られるな。・・・手伝ってくれるかい?」
アレグラット「勿論です」
アレグラット「魔法障壁、解除」
カルエラ「じゃあ僕は左側をやるから、右側を頼むよ」
アレグラット「了解しました」