〇黒背景
　　ここは、どこ・・・？
　　わたしは・・・
？？？「先生!!」
？？？「クロエ!!」
　　私は──
？？？「まつ江さん」
まつ江「光太朗さん・・・」
光太朗「よく頑張ったね、まつ江さん」
まつ江「・・・っ」
まつ江「どうして・・・」
まつ江「どうしてもっと早く 迎えに来てくださらなかったんですか」
まつ江「私ばっかり年を取って」
まつ江「こんなお婆ちゃんの姿で・・・」
光太朗「今は、違うでしょう？」
まつ江「えっ・・・」
クロエ「この姿は・・・」
光太朗「似合っているよ、クロエさん」
クロエ「光太朗さん、私っ──」
光太朗「『わたしのアルカディア』」
光太朗「きちんと完結させないと」
クロエ「あっ・・・」
光太朗「さあ、還って」
光太朗「今いるべき場所へ」
光太朗「きみを待っている人たちのところへ」
光太朗「そして──」
光太朗「クロエとして、どうか幸せに・・・」
クロエ「・・・っ」
クロエ「ええ」
クロエ「分かったわ」
クロエ「ありがとう、光太朗さん──」

〇時計

〇神殿の広間
クロエ「んぅ・・・」
クロエ「あら、私・・・」
クロエ「ここは・・・」
レイヴィダス「気が付かれましたか!!」
クロエ「まぁ、レイさん」
クロエ「・・・あら？」
クロエ「なんだか大きくなりました？」
レイヴィダス「先生〜!!」
クロエ「あらあら、泣かないで」
レイヴィダス「このまま目を覚まさなかったら どうしようかと──」
リディア「クロエ・・・!!」
クロエ「リア」
リディア「ひっ・・・ぐすっ」
リディア「うわぁあ〜ん、クロエ〜!!」
クロエ「あらあら、リアまで」
クロエ「二人とも落ち着いて。ね？」
リディア「わたっ、私・・・ 怒ってるんですのよ!!」
リディア「どうして自分に魔法を・・・ッ」
レイヴィダス「そうですよ！ 何故あんなことを──」
クロエ「魔力が暴走して 止められなくなってしまって・・・」
クロエ「あの時はああするしかないと思ったのよ」
リディア「人族の男など殺してしまえば よかったのですわ!!」
クロエ「そうだ、ヒースリングさんは──」
レイヴィダス「先生がご自身に魔力を向けたおかげで、 ヒースリングは無事でした」
リディア「人間界に引き渡す前にお父様が多少 懲らしめましたけれど、生きてますわ」
クロエ「そう・・・」
クロエ「彼は、人間界と魔界の戦争が 見たいと言っていたわ」
クロエ「どうしてそんな悲しいこと・・・」
レイヴィダス「ご安心ください、先生」
レイヴィダス「私が、絶対にそのようなことは 起こさせません!!」
クロエ「レイさん・・・」
リディア「カッコいいこと仰ってますけど、 スライム以下の魔力で何ができるのかしら」
レイヴィダス「うぅっ」
リディア「クロエが自分に魔法を放ったのが 契機になったのか──」
リディア「レイヴィダス様の魔力は一度 復活したんです」
クロエ「一度？」
レイヴィダス「余計なことは言わなくていい！」
リディア「レイヴィダス様はクロエを助けるために、魔力をほとんどその身体に注ぎ込んだのですわ」
クロエ「まあ・・・」
クロエ「そういえば、 どうして身体が縮んでいるのかしら」
レイヴィダス「それは、その・・・」
リディア「先生のお身体は魔法のせいで バラバラになっていて・・・」
クロエ「バラバラ!?」
レイヴィダス「精神の残滓はなんとか掻き集めることができたのですが、身体は集めきることができず・・・」
リディア「残った身体を培養──」
リディア「つまり、ホムンクルスリサイクルした訳です」
レイヴィダス「言い方・・・」
クロエ「ＳＤＧｓというやつね」
リディア「そして、レイヴィダス様の魔力でその身体に精神を繋ぎ止めたという訳ですわ」
クロエ「レイさん・・・」
レイヴィダス「一度ならず二度までも勝手をして 申し開きのしようもございません」
レイヴィダス「ですが私は、先生に── クロエさんに生きていて欲しかった」
クロエ「マンガの続きが読みたいからよね？」
レイヴィダス「違います！」
レイヴィダス「その・・・」
レイヴィダス「光太朗さんの代わりにはなれませんが」
レイヴィダス「私と一緒に、生きて欲しいのです──」
クロエ「それって・・・」
リディア「中年が幼女にプロポーズ・・・!!」
レイヴィダス「頼むから少し黙っていてくれリディア」
クロエ「──ふふっ」
レイヴィダス「クロエ・・・さん？」
クロエ「うふふ、あはははっ」
クロエ「・・・私、光太朗さんに会ったんです」
レイヴィダス「えっ!?」
クロエ「光太朗さんは私に、クロエとして 幸せになってと言ってくれたの」
クロエ「だから──」
クロエ「一緒に生きましょう、レイさん！」

〇黒背景

〇貴族の応接間

〇異世界のオフィス

〇城の廊下

〇城の会議室

〇異世界のオフィス
クロエ「・・・・・・」
クロエ「よしっ！」