6 別れと旅立ち(脚本)
〇大衆居酒屋
前の家族と絶縁してから3年が経った。和也はあの後、一流企業に就職したのは本当だが、入社しても自身は中々出世出来ず、
実力が有るにも関わらず下っ端止まりらしく、昔からの傲慢さが災いして自主退職を迫られてニートに成っていた。
その後も一流に拘り過ぎてたのか、別の一流企業に再就職を試みるも上手く行かず、今では警備員のバイトで食いつないでるとか。
そんな話を聞いた時は流石に手を差し伸べるべきか迷ったが、花恋さん、いや花恋に止められて、俺は和也に何もしなかった。
佐藤博之「しかしまぁ、お前さん達が入籍する事に成るとはな。人生何が起こるか分かったもんじゃねぇな!」
鮫島花恋「はい!近い内に式を上げる予定なので、佐藤さんにも是非、霧斗君の親代わりとして出席して頂きたいんです!」
佐藤博之「おう!良いぜ!何時かこう成る気はしてたんだよな!」
桐宮霧斗「有難う御座います、師匠」
佐藤博之「でも本当に良いのかい?弟君、良い仕事見つからなくてしんどい思いしてるとか」
桐宮霧斗「師匠、幾ら俺達が実の兄弟でも、お互いが謝罪出来なきゃ助けられる物も助けられませんよ」
佐藤博之「そりゃそうだ!一度無くした信用はどうやったって戻りはしない。御家族がこれで自分達の間違いに気付きゃ良いがな」
鮫島花恋「多分無理だと思います。一度根付いた性格は中々直らないし」
佐藤博之「ありゃりゃ!お嬢さんに言われちゃアウトだな!さ、この話は此処までだ、今日は楽しみな!」
俺達は近い内に結婚する事を師匠に打ち明けていた。結婚したらまた新しい問題を解決しないと行けなく成るが、
花恋となら大丈夫。今はそんな気がしたし、これから俺があの家族と出会う事は、二度と無いだろうと、そう思った。
〇田舎の教会
数日後、俺は花恋と正式に結婚式を上げていた。家族に捨てられて、師匠に拾われ、そこから沢山の苦難を乗り越えて、
今こうして結婚式を挙げられる事が今でも信じられなかった。そもそもそんな事すら想像出来なかったのだ。
だけど今ハッキリ分かる事は、この式を終えたら俺は沢山の苦難をまた乗り越えなければ成らない事だった。
鮫島サヤカ「お姉ちゃぁぁん!霧斗お兄ちゃぁぁん!結婚おめでとう!!」
工藤信宏「兄貴ぃ!俺には兄貴が眩しく見えますぜぇ!!」
鮫島花恋「皆有難う!!私達は絶対幸せに成って見せます!!」
沢山の人達が俺達を祝福してくれた。守るべき人、帰るべき場所を見つけた俺は、人として、料理人としてまた腕を磨く事に
成るんだと実感していた。
佐藤博之「霧斗、随分デカく成ったな」
桐宮霧斗「師匠」
鮫島花恋「佐藤さん。私にこんなにも素敵な人と出会わせてくれて有難う御座います。此処からは、私達で未来を作って行きます!」
佐藤博之「あぁ!楽な道程じゃ無いが、確りやれよ!なぁ霧斗」
桐宮霧斗「はい?」
佐藤博之「これまでお前は良く頑張った。俺に煩く言われて逃げ出すんじゃ無いかって心配した事も有った。だけどお前は逃げなかった」
佐藤博之「これから苦難はまだまだ続くだろうが、お前はもう独りじゃ無い。確りやってくんだぞ?」
桐宮霧斗「有難う御座います」
佐藤博之「後、俺からの最後のアドバイスだ。これからお前さん達は子供を作るかも知れねぇ。霧斗は親御さん達に酷い事をされて来た」
佐藤博之「だから忘れるな。自分が親に成った瞬間から、今度は自分が自分の子供に酷い事する番だってな」
桐宮霧斗「師匠」
鮫島花恋「佐藤さん、大丈夫ですよ。そんな事は私がさせない。何時か幸せに成って、もう一度佐藤さんに会いに行きます」
鮫島花恋「私自身も大きく成ります!だから楽しみにしてて下さい!」
佐藤博之「そう来なくっちゃな!これで心置き無く、俺もお別れが出来るってもんだ!」
桐宮霧斗「お別れ?どう言う事です?」
佐藤博之「あぁ、最近俺にも夢が出来たんだ。今の店を畳んで、屋台を出して旅をしようと思っててな。明日の朝にはこの街を出るつもりだ」
桐宮霧斗「し、師匠!?本気で言ってるんですか!?」
佐藤博之「あたぼうよ!人生ってのは楽しんだ物勝ちだ。俺の事は何も心配するな。まだまだ若い奴には負けねぇよ」
桐宮霧斗「師匠」
佐藤博之「花恋さん。これからも、内の馬鹿弟子を頼みますぜ!」
鮫島花恋「・・・!!任せて下さい!!連絡、お待ちしてますね!!」
結婚式を無事に終えた翌日、師匠は宣言通り店を閉めて旅に出た。花恋の夫と成った俺の鍛錬の日々はまだまだ終わらないけど、
何時か、支えてくれた皆に恩返しが出来たらと思いながら、俺は自分の出来る事を続けるのだった。
ご視聴有難う御座いました。また何処かでお会いしましょう。
結婚ENDとは幸せと困難の始まりですね!
物事は忘れられる、分からなく事で伝説となる。伝説の料理人の新たな伝説の始まりですかね。
最初から最後面白かったです!
捨てられて絶望からの始まり、伝説の料理人に拾われて修行を積み、金持ちのお嬢様に認められ、師の元を離れても、慢心せずに努力を続け新しい家族を手に入れる!
そして前の酷い家族を見返すなど感動と物事への心得を学べる素晴らしい話でした!