神様からの三行半

金平 旺大

第23話(脚本)

神様からの三行半

金平 旺大

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〇広い和室
母「ほら、見て。 ホントに可愛い女の子」
父(若い頃のイザナギ)「おまえはヒルコのことが 本当に可愛いんだな」
母「うふふ、 当り前よ。 同じ女だもの」
父(若い頃のイザナギ)「私はツクヨミのほうが 可愛く見えたがな」
母「それはあなたが男だからよ。 同性は可愛くみえるの」
父(若い頃のイザナギ)「そんなものかなぁ」
母「そのうち ヒルコの可愛さに気付くわよ」

〇神社の本殿
母「最近のヒルコのマイブームは なんだと思う?」
父(若い頃のイザナギ)「?? なんだろ。 まるでわからないな」
母「あなたのお祓いの動きを真似しているのよ」
母「ほら、やってみて」
ヒルコ「うん、 ハライタマエ、キヨメタマエ」
父(若い頃のイザナギ)「ハッハッハッ それはお祓いの真似じゃないよ。 参拝の時の言葉だよ」
父(若い頃のイザナギ)「祓えたまい、清めためえ、 神(かむ)ながら、守りたまい、 幸え(さきわえ)たまえ」
母「?? どういう意味なの?」
父(若い頃のイザナギ)「罪や穢れを取り除いてください。 神様、お守りください。 幸せにお導きください、という意味だよ」
母「いい言葉ね。 これを唱えているヒルコは 絶対幸せになると思うわ」
ヒルコ「うん、私、幸せになる」

〇畳敷きの大広間
母「お父さん、 あの子、何かおかしいわ」
父(若い頃のイザナギ)「どこがおかしいんだ?」
母「変な方向を見上げて独り言を言っていたりとか、ツクヨミが急に病気になったり治ったりしてるの」
母「それもあの子が触れた時が きっかけになっているの」
父(若い頃のイザナギ)「・・家系的に多少の霊感はあるだろうから、霊と話しているのかもしれないな」
父(若い頃のイザナギ)「しかし、 ツクヨミの病気の件については聞き捨てならないぞ」
父(若い頃のイザナギ)「疑うくらいなら 信じてみたらどうだ」
母「・・はい、わかりました」
ヒルコ「・・・」
母「なんだか気味が悪いわ。 祓えたまい、清めたまえ」

〇綺麗なキッチン
ヒルコ「ねえ、お母さん、 お料理を教えて」
母「・・いいわよ。 じゃあ、玉ねぎをみじん切りにして・・」
ヒルコ「えぇ、どうやって切っているの。 近くで見せて」
母「あ、ごめんなさい 急に気分が悪くなっちゃったわ」
ヒルコ「えー、残念。 また今度教えてね。 ゆっくり、寝ててね」
母「ダメ、もう立っていられない」
母「・・あの子・・・・・」
母「祓えたまい、清めたまえ、 神ながら、守りたまい、幸えたまえ」

〇祈祷場
ヒルコ「お母様、何をしているんですか」
母「何って? お掃除よ。 綺麗にしておかないと・・コホンコホン」
ヒルコ「ほら、体調も良くないのに、 動いてはダメですよ。 ここも、雑務はすべて私に任せて」
母「・・そう?・・コホン じゃあ、頼んでもいい?」
ヒルコ「任せてください。 まずは向こうの仕事を終わらせますから、 お母様は寝室に帰っていてください」
母「・・・・・」
母「祓えたまい、清めたまえ、 神ながら、守りたまい、幸えたまえ。 ・・・あの子が幸せになりますように」

〇黒
母「祓えたまい、清めたまえ、 神ながら、守りたまい、幸えたまえ」
母「祓えたまい、清めたまえ、 神ながら、守りたまい、幸えたまえ。 あの子が幸せになりますように」
母「あの子がどうか幸せになりますように 私がいなくなっても、 あの子が幸せになれますように・・」
母「祓えたまい、清めたまえ、 神ながら、守りたまい、幸えたまえ。 あの子が生まれ変わったら、 今度こそ幸せになりますように」

〇神社の本殿
ヒルコ「いやーーー」
母「・・・祓え・・ ・・清め・・たま、い・・ あの子が幸せに・・・」
ツクヨミ「母さん、気を失っているはずなのに、 ・・何か言ってる」
ヒルコ「いやーーーーーーー」
ヒルコ「・・嘘よ・・ 愛されていないと思っていたのに・・ あの人を殺そうとしていたのに・・」
ヒルコ「わからない わからない わからない」
ツクヨミ「・・・」
イザナギ「《ヒルコ・・》」
ヒルコ「えっ? どうして・・」
ツクヨミ「誰かいるのか? 誰に話しかけている」
イザナギ「《ヒルコ、 みんな、おまえを愛しているんだよ。 おまえの幸せを願って、みんなここにいる》」
イザナギ「《家族がお互いの幸せを願うことで、 家族はできあがる。 おまえがどんな子であっても、 おまえは俺の家族だ》」
イザナギ「《そして、母さんも おまえの幸せを切に願っていた》」
イザナギ「《いや、おまえを一番愛していたんだよ。 悩んだ時期もあったけれど、 おまえへの愛はより深くなっていたよ》」
イザナギ「《死んでもなお、おまえの幸せを願いながら生きている。 わかるだろ?魂は嘘がつけないんだから》」
ヒルコ「《・・・父さん、おねがい》」
ヒルコ「《私を、お母様が苦しまない場所に連れて行って》」
イザナギ「《・・一緒に行こうか》」
ヒルコ「《今度こそ、幸せになるわ》」
ツクヨミ「あっ、ヒルコが消えた」
ツクヨミ「・・天界に連れていかれたのか?」
ツクヨミ「今度は幸せになるんだぞ」
ツクヨミ「母さん、大丈夫?」
母「・・・ヒルコ、 そんなに苦しんでいたのね・・ 私は、その何十分の一、しか理解してあげられなかった・・」
母「ごめんね、ヒルコ。 こんな母さんで・・・ごめんね」
タケハ「ヒルコ姉ちゃん、 小学生の頃、母さんにひどいことをされた、って言ってた」
タケハ「・・でも、 やっぱり心のどこかで母さんの愛情を欲しがっていたんだと思う」
タケハ「ヒルコ姉ちゃんの中に入ったから、 なんとなくわかる」
母「そうね、私が至らないばっかりに・・」
ツクヨミ「何言ってたんだよ。 至らない、って言うなら俺もそうだ」
ツクヨミ「父さんもヒルコも 俺のことを疎ましく思っていると勘違いしていた・・」
ツクヨミ「でも、人間的に至らないから、 ・・至らないからこそ、 神様がいるんじゃないのか?」
ツクヨミ「神様に願いを言って、 己の心や生活を見直し、 少しずつ生まれ変わっていく」
ツクヨミ「それが神様の在り方じゃないのか?」
タケハ「兄ちゃんも立派なことが言えるようになったな」
母「本当に。 神社が嫌いで出て行ったとは思えないわ」
ツクヨミ「俺もここで参拝客の願いを聞いていたからな。 神様ってやつが何なのか、それがわかってきたような気がするよ」
タケハ「僕もなんだか救われたよ。 一人だけでこの神社を守っていると思っていたから、すごく辛かった」
タケハ「でも、兄ちゃんも遠くで この神社のことを考えているとわかったら、 なんだか勇気が湧いてくるよ」
母「・・私も、 この神社を守らせてくれないかしら」
ツクヨミ「母さん、まだ無理は・・」
母「大丈夫。普通に歩けるわ 悪いところはヒルコが持って行ってくれたわ。 ・・・もしかしたら、お父さんかしら・・」
ツクヨミ「本当だ。 歩けてる」
タケハ「母さん、 僕、もう一度頑張ってみるよ。 父さんみたいな立派な神主になる」
母「・・父さんも、立派じゃなかったのよ。 人には言えないような悪いこともしてきたんだから・・」
タケハ「え、なになに。 悪いことって」
ツクヨミ「俺も聞きたい」
母「それはね・・」

〇神社の本殿
母「あら、急に雨が降ってきたわ」
母「急いで中に入りましょ」
ツクヨミ「じゃあ、中でゆっくり聞くよ」
母「やめとくわ。 どうも、そのことは言ってほしくないみたいだから」

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