「第六話 □み直しの世界 『セベク視点』」(脚本)
〇畳敷きの大広間
セベク「朝だ!!起きろ、男と白猫!!」
この右に居る青年の名は「セベク(名)・アガペー(苗)」
ジンの旅に加わる気はなかったがとある二人組を止める為に・・・結果、巻き込まれた青年である。
彼を一言で表すのならそう・・・
ちょろいバカ真面目である。
〇集落の入口
さて、今回はジン達がこの世界の真実を知る前の、セベクの視点を覗いてみよう。
セベク「むぅ・・・さすがにジンの服を無理やり脱がせてしまったのはまずかった・・・」
セベク「ビンタされた頬がまだヒリヒリする・・・後で謝らないとだ・・・」
セベク「はぁ・・・どうやら俺はまだ少し落ち着いた方が良いみたいだな」
老人「ふぅ・・・」
セベク「おい貴様!!何をしている!!」
老人「ヒェッ!?」
その後重い荷物を運んでいたおじいさんとなんやかんやあったセベク。
腰をやってしまったじいさんの代わりに荷物を運ぶことになった。
〇屋敷の寝室
セベク「ふぅ・・・置くのはこの机の横で良いだろうか?」
老人「あぁ構わないよ、ついでに開けて中の物を取ってはもらえないだろうか?」
セベク「あぁ・・・構わないが・・・この箱には何が入っているんだ?」
老人「あぁ・・・中に入っているのはほとんど原稿用紙、それとインクさ」
セベク「えぇ!?全部!?若い成人男性二人位の重さがあったぞ!?」
老人「あぁ・・・そうさ・・・この群島で「本」を書くのは今は私ぐらいしかいないからね」
老人「だーれも使わないから、ならば私が全部貰ってしまおうと考えたんだ」
セベク「そうなのか・・・」
セベク「ん?「今は」とはどういうことだ?昔はじいさん以外にも書く人が居たということだろうか?」
老人「・・・あぁ」
老人「少しじじぃの昔話を聞いてくれるかい?」
セベク「あぁ、構わない」
老人「私は今はこうしてひっそりと暮らしているがね、幼い頃は私が本に書いている様な冒険や外の世界に憧れていたんだよ」
老人「この群島を出て、まだ見ぬ島、まだ見ぬ物を見つけに行きたいと思っていたよ」
老人「でもそんな私は村のみんなからはティアマト神の加護を受けているにも関わらず」
老人「安全なティアマト神の元を離れて危険な冒険に出ようとする愚か者、異端者と指を指されてね」
老人「両親は私が病気にでもなったんじゃないか、何か悪いものにでも取り憑かれたんじゃないかと大騒ぎ」
老人「それから時間が経って少し大人になった時に、村を出てこの島に来たよ」
老人「だけどこの島の人達も似たような人達でね、だけどその時の私は違った」
老人「周りなんぞもう知るかと一人冒険に出る準備をひっそりとしていたんだ」
老人「でも私はやはり愚かだった」
老人「私は冒険をしたいと思っているくせに、独りじゃ怖くて島を出れない臆病者だったんだ」
老人「神の元から離れたい癖に、神から離れるのが怖い愚か者」
老人「それが私だった」
セベク「・・・」
老人「でもそんな愚か者の私は冒険心を抑えることが出来なかった、だから必死に満足しようと、しろと紙に理想の冒険を書き走った」
老人「でも・・・知ってしまったんだ」
老人「自身の思い描く「物語」を自分の手で書くその楽しさを、喜びを、私は知ってしまったんだよ・・・」
老人「しかしそんなことを続けているうちに村のみんなにそれが見つかった、しかしみんなは私の「物語」に夢中になり始めたんだ」
老人「私の物語は島の誰かの話ではない、ここには居ない誰かの、「キャラクター」達の冒険譚だ」
老人「だから惹かれたんだろう、やがて私を真似する者まで現れ始めた」
老人「しかし幼い私の心を否定し、拒絶したくせに私の物語を賞賛するなど厚かましい行いに今でも腸が煮えくり返る!!」
老人「しかし私はまたしても愚かだった、罵倒の一つでもしてやれば良かったのに私は怖くて物語を書き続けた」
老人「これで良いのだ、島を離れようなどと愚かなことを考えた自分が悪いのだと心を押さえつけながら必死に物語を書いた」
老人「しかし島民共はやがて飽きてしまい、その上私の物語を「冒険心を助長させる悪しき物だ!!」ふざけたことをぬかし」
老人「私の「物語」達はほとんど焼き払われてしまった・・・私は愚かで無力だった・・・」
老人「私は・・・本当にどうしようもない愚か者だったんだよ・・・」
老人「でも・・・」
老人「でも・・・現れたんだ・・・」
セベク「誰がですか?」
老人「女の子だ・・・焼き払われたはずの私の本を持っていた、しかもそれを読んでいたんだ」
老人「私はあまりの驚きに彼女に何故その本を持っているのかを強く問いただしてしまった・・・」
老人「彼女は頑なに教えてはくれなかったが、こういってくれたんだ・・・言ってくれたんだよ・・・」
老人「「私、この本が大好きです!!私もこんな冒険をしてみたいです!!」と・・・」
老人「その瞬間から・・・私の何かが救われたんだ・・・」
老人「だから・・・私は残りの生を「物語」を書く為に捧げようと思っている」
老人「私のようなじじぃが書いた物語を笑顔で読んでくれたあの子に誇れる様に」
老人「あの子にまたワクワクする夢を見せてあげられるように」
老人「それがこんな私に出来た新しい「夢」だ」
セベク「・・・」
老人「って・・・話しが長くなってしまったね!!すまないね、こんなじじぃの長話に付き合わせてしまって」
セベク「いえ、素敵なお話をありがとうございます!!」
老人「そうか・・・」
〇集落の入口
セベク「・・・」
セベク「捧げる・・・」
セベク「夢・・・か」
セベク「久しぶりに聞いたな・・・」
〇畳敷きの大広間
セベク「・・・」
セベク「今日は・・・あれだな・・・たまには学校でなくても風紀委員として振る舞わなくても・・・」
セベク「・・・」
セベク「やはり着替えよう・・・」
〇古民家の居間
セベク「確か貸してもらっている寝間着は外に干してあったはず・・・」
セベク「というか・・・しまった、洗濯物を仕舞い畳むのを忘れていた」
セベク「・・・らしくないな、自分」
セベク「・・・雨か?ならば早く取り込まなくては」
セベク「な、なんだ!?雷!?」
セベク「一体どうなってるんだ!?」
〇集落の入口
セベク「な、なんだこれは!?さっきまで晴れてたじゃないか!?」
セベク「あぁ良かった!!すみません!!一体何が起こってるんですか!?さっきまで晴れてたのに!?」
若い女性島民「お母・・・さん」
若い男性島民「お母さん・・・」
セベク「は・・・?お母さん?」
セベク「あ、おい!!そっちは海の方・・・」
セベク「だ・・・」
セベク「──」
〇海辺
〇集落の入口
セベク「海が・・・上がっ・・・て・・・?」
セベク「・・・!?」
セベク「爺さん!!」
To Be Continued