エピソード2(脚本)
〇森の中
8/24
AM9:00
寺島「長谷川刑事」
長谷川「寺島・・・」
寺島「また・・・ですか」
長谷川「あぁ・・・」
長谷川「被害者の名前は、宮間周平。A大の学生だ」
寺島「身元、すぐ分かったんですね」
長谷川「被害者の友人が朝、被害者宅に向かった所」
長谷川「インターホンを何度も押したが、 出てこなかったらしい」
長谷川「それで、被害者のスマホに 電話を掛けたらしいんだが」
長谷川「圏外だった為、不審に思い 警察に通報したってわけだ」
寺島「なるほど・・・」
寺島「殺害方法も同じってことは、 同一犯の犯行でしょうか?」
長谷川「そう考えて、間違いないだろう」
寺島「目撃者もいないんですよね?」
長谷川「あぁ。もしかしたら まだ犯人は近くにいるかもしれない」
長谷川「とりあえず、また捜査会議だな。行くぞ」
〇大会議室
戸田「引き続き、山林で起きた 連続殺人の捜査会議を行う」
戸田「まずは、長谷川刑事。状況の報告を」
長谷川「はい。被害者の名前は、 A大に通う『宮間周平』22歳」
長谷川「前回と同様、同じ殺害場所で殺された模様」
長谷川「また、殺害手口も同じです」
戸田「手口も一緒か・・・」
戸田「死亡推定時刻は?」
長谷川「午前3~4時の間です」
戸田「3~4時? 確か、前の事件もそうだったよな?」
長谷川「はい。なので我々は 同じ人物の犯行と見ています」
戸田「まっ、そう考えるのが妥当だな」
戸田「聞き込みの方はどうだ?」
長谷川「これから、宮間周平と仲が良かった 『清水卓也』と会ってきます」
戸田「よしっ、分かった」
戸田「他の者も捜査に当たってくれ」
〇大学
長谷川と寺島は、
宮間が通ってた大学を訪れる。
〇応接室
寺島「すみません。県警の寺島と申します」
寺島「こちらに通ってた、”宮間周平”さんの事で お話しを伺いたく」
寺島「『清水卓也』さんにお会いしたいのですが お呼び頂けないでしょうか?」
「分かりました。少々、お待ち下さい」
大学の事務員は、校内放送で
清水を呼び出した。
清水 卓也「すみません。お待たせしました」
息を切らし、清水が現れる。
寺島「清水卓也さんですね。県警の寺島と申します」
寺島は清水に警察手帳を見せ、名刺を渡した
清水 卓也「あの、そちらの方は?」
清水は長谷川の方に視線を向ける。
寺島「あぁ。こちらは長谷川刑事で、今回の事件を 私と長谷川が担当しています」
清水 卓也「そうですか・・・」
寺島「あの、亡くなった宮間さんとは いつからの知り合いですか?」
清水 卓也「宮間とは、大学からの友達です」
清水 卓也「アイツ──見た目はチャラいけど 大学の勉強は真面目にやってて」
清水 卓也「将来はIT企業に就きたいって言ってました」
清水 卓也「そんなアイツが何故・・・」
清水は涙を流した。
寺島「宮間さんに、変わった所はなかったですか?悩み事とか・・・」
清水 卓也「いえ。そんな様子は一ミリもなかったです」
清水 卓也「だって俺ら、アイツが死ぬ前 合コンしてましたから──」
寺島「合コンですか」
寺島「合コンしてたのは、何時頃ですか?」
清水 卓也「確か、18時~20時くらいだったと思います」
寺島「その後は?」
清水 卓也「次の日学校もあったので、そこで別れました」
寺島「その後の宮間さんの行動は 分からないですか?」
寺島「どこかに行くとか言ってませんでした?」
清水 卓也「いや、特に何も聞いてません」
寺島「分かりました」
寺島「もし、何か分かりましたら こちらの名刺に電話下さい」
寺島「些細なことでも構いませんので」
清水 卓也「分かりました」
寺島「では、我々はここで失礼します」
寺島「お時間頂き、有難うございました」
寺島と長谷川は、清水に一礼し
応接室を出ようとした
その時
「あの、刑事さん・・・」
寺島「はい」
清水 卓也「ぜったい犯人捕まえて下さい」
清水 卓也「お願いします」
寺島「分かりました。必ず犯人は 我々の手で捕まえます」
〇車内
車に乗り、署へ戻ろうとする車内で長谷川は
考え込んでいるのか、一言も話さない。
寺島「捕まえるって彼の前では言いましたけど、 本当に捕まえられるんでしょうか」
寺島「前回と同じで情報が少なすぎますし・・・」
寺島「ハセさんはどう思います?」
長谷川は、窓の外をずっと眺めている。
寺島「ハセさん?どうしました?」
寺島「体調でも悪いんですか?」
長谷川「いや、何でもない」
長谷川「寺島。今から被害者宅に行くぞ」
寺島「えっ?被害者の自宅にですか?」
長谷川「あぁ。もしかしたら 何か出てくるかもしれねぇぞ?」
寺島「出てきますかねぇ・・・」
長谷川「我々の仕事は、 無駄だと思える捜査をコツコツやること」
長谷川「無理だと思える調査に骨身を削ること。 それが俺たち刑事だ」
寺島「わっ、分かりました」
寺島「ハセさんの名言、心に留めておきます」
長谷川「バーカ。これは俺の名言じゃない」
長谷川「刑事ドラマの名言だ」
車は、被害者宅へと向かった。
〇二階建てアパート
宮間宅に着くと、一人の女性が
玄関の前に立っていた。
寺島「ハセさん。あの女性誰でしょうか?」
長谷川「寺島、声掛けてみろ」
寺島「分かりました」
寺島「すみません」
寺島と長谷川は、女性に近寄った。
寺島「あの、県警の寺島と言います」
寺島は女性に、警察手帳を見せる。
寺島「失礼ですが、ここで何してるんですか?」
女性は困惑した表情で、寺島を見た。
広瀬「私、宮間周平の彼女です」
広瀬「彼の家に私の荷物があるので、 取りに来ました」
寺島「そうでしたか。失礼しました」
女性は家の鍵を開け、中に入ろうとする。
広瀬「あの、どうして刑事さんがここに?」
寺島「いや、少し中を確認したくて 調べても宜しいでしょうか?」
広瀬「別に構いませんが。どうぞお入り下さい」
女性は俺たちを部屋に入れた。
〇汚い一人部屋
部屋の中は、散らかっていて
いかにも男の部屋というカンジだった。
広瀬「すみません。散らかっていて・・・」
女性は、テーブル周辺のゴミを片付け始める
寺島「いえ、あの名前聞いてませんでしたよね?」
広瀬「あっ。私、宮間くんと同じ大学に通ってます」
広瀬「”広瀬”といいます」
寺島「広瀬さんですね」
寺島「宮間さんとは どれくらいお付き合いされてたんですか?」
広瀬「一年ちょっとです。けど、ここ最近は 連絡も会ったりもしてなくて・・・」
寺島「それはどうしてですか?」
広瀬「ケンカが絶えなかったんです」
広瀬「彼、女癖がひどくって。 私以外にも女がいたみたいなんです」
女性は片付けながら、宮間のことを話す。
長谷川「サイテーなクズ野郎だな」
長谷川がボソッと呟いた。
寺島「シッ。ハセさん、彼女に聞こえちゃいますよ」
広瀬「いいんです。彼はもうここにはいませんから」
広瀬「死んで当然のオトコですよ」
一瞬、三人は無言になった。
寺島「あの、最後に宮間さんに会ったのは いつ頃でしょうか?」
広瀬「二週間前くらいだと思います」
寺島「ここでですか?」
広瀬「いえ、大学でです」
寺島「その時、何か会話はされましたか?」
寺島「変わったことなどありませんでしたか?」
広瀬「特になかったと思います。 話しは一切してません」
寺島「そうですか」
広瀬「あの、そろそろいいですか?」
広瀬「私これからバイトなんで」
広瀬「調べもの終わったら、大家さんに カギ返しといて下さい」
寺島「分かりました」
女性は無言で荷物を取り、
部屋から出て行った。
寺島「さて、とりあえず身辺調査しますか」
寺島と長谷川は、部屋の中を調べ始めた。
だが、事件につながる物は
何一つ出てこなかった。
寺島「何も出てきませんね」
長谷川「・・・だな」
寺島「これからどうします?」
長谷川「実家だ」
寺島「実家ですか?」
長谷川「あぁ。今から行くぞ」
寺島「けど、被害者の実家なんて知りませんよ?」
長谷川「それなら既に調べ済みだ」
寺島「さっすがハセさん。仕事早いっすね」
長谷川「当然だ」
〇一軒家
車を走らせること一時間弱。
二人は宮間の実家に辿り着いた。
宮間の実家は、都心から離れた
長閑な場所だった。
玄関のインターホンを押す。
「はい。どちら様でしょうか?」
寺島「突然お邪魔してすみません。 県警の寺島と言います」
寺島「宮間周平さんの件で お聞きしたいことがあるんですが・・・」
「周平のことですか?」
「少しお待ち下さい」
しばらく待っていると、中から
一人の女性が出てきた。
寺島「すみません。県警の寺島です」
寺島は、警察手帳を見せた。
寺島「亡くなった宮間周平さんについて、 お話しを伺ってます」
周平の母「・・・周平・・・」
被害者の名前を聞いた途端、
女性はその場で泣き崩れた。
寺島「失礼ですが、宮間周平さんの お母様でしょうか?」
周平の母「はい、周平の母です」
寺島「この度は、周平さんの件で 大変お悔やみ申し上げます」
周平の母「ニュースで知った時、息子と 同姓同名の方が殺害されたかと思いました」
周平の母「けど、本当にうちの息子だったんですね」
寺島「お気持ちは大変お辛いかと思いますが、」
寺島「息子さんの事について お話し宜しいでしょうか?」
周平の母「はい・・・」
寺島「では、周平さんと最後にお会いしたのは いつ頃でしょうか?」
周平の母「お正月が最後でした」
周平の母「この時は、中学校の同窓会があるとかで 急遽帰って来たんです」
周平の母「けど、家にいたのは一日だけで」
周平の母「後は友達の家に行ってたのか、それ以来 家には帰って来ず」
周平の母「気が付いたら東京に帰ってました」
周平の母「何の連絡も無しに・・・」
寺島「そうですか。周平さんに、 何か変わった様子はなかったですか?」
周平の母「いえ、特になかったと思います」
周平の母「と言っても会話は、ほとんどしてません」
周平の母「息子は帰ってすぐ、自分の部屋に ずっといましたから」
寺島「そうでしたか・・・」
寺島「お時間頂き、有難うございました」
周平の母「いえ。何のお役にも立てず、すみません」
寺島「何か分かりましたら、こちらから ご連絡致しますので・・・」
周平の母「よろしくお願いします」
寺島「では、失礼致します」
〇車内
寺島と長谷川は車に乗り、実家を後にした。
寺島「実家も収穫無しですね」
寺島「犯人は何故、同じ時間に 同じ殺害現場で犯行を行うんでしょうか」
長谷川「そこにこだわる理由があるんだろうなぁ──」
寺島「こだわる理由ですか?」
長谷川「あぁ・・・」
寺島「俺、明日もう一度殺害現場に行って来ます」
長谷川「そうだな。俺も立ち会う」
寺島「いえ、ハセさんは休んで下さい」
寺島「ここ最近、家に帰ってないじゃないですか」
寺島「奥さん寂しがってますよ?」
長谷川「そんな、さみしがる歳じゃねーよ」
長谷川「まぁ・・・新婚なら話しは別だがな」
長谷川「それより、寺島はどうなんだ?」
寺島「どうって何がですか?」
長谷川「恋愛の方だよ。女とかいないのか?」
寺島「恋愛?そんなのないですよ」
寺島「今は恋より仕事です」
長谷川「お前、もったいない事してるぞ?」
寺島「もったいない事?何ですか?」
長谷川「交通課の女共、お前の事狙ってる奴 結構いるみたいだぞ」
寺島「えっ、そうなんですか?」
寺島はその言葉に反応し、長谷川の方を見た
長谷川「おいっ、しっかり前見て運転しろ。 あぶねーだろ!!」
寺島「すっ、すみません」
寺島「けど、ほんとなんですか? 俺がその・・・」
長谷川「あぁ、こないだ交通課の前を通り掛かったらお前の事話してたぞ?」
寺島「嬉しい話しですが、今は 目先の事件が大事です」
長谷川「そうだな。今のお前は、 恋よりも仕事に盲目ってとこだな」
寺島「その通りです」
その時、長谷川のスマホが鳴った。
「はい。長谷川」
長谷川は、真面目な顔で電話を聞いている。
「分かった。ごくろうさん」
寺島「電話、誰だったんですか?」
長谷川「法医学部からだ。宮間周平の 司法解剖の結果が出たらしい」
長谷川「明日、書面で送るとの事だ」
寺島「そうですか。何か分かるといいですね」
長谷川「・・・そうだな」
〇警察署の入口
翌朝、法医学部から
一通の封筒が送られてきた。
〇警察署の廊下
寺島「長谷川刑事。司法解剖の結果届きました」
寺島は、長谷川に封筒を見せる。
長谷川「寺島、中を開封しろ」
寺島「はい」
寺島は開封し、書面を見詰めた。
長谷川「どうだ、何か分かったか?」
寺島「いえ、死因は間違いなく失血死で」
寺島「死亡推定時刻も、午前3~4時の間で 間違いないとの事です」
寺島「ただ・・・」
長谷川「ただ何だ?」
寺島「被害者の体から、一本のトゲの様なものが 検出されたそうです」
長谷川「トゲ・・・?」
寺島「はい。この様なトゲが──」
画像には、細く小さなトゲが写っていた。
寺島「一体、何のトゲでしょうか・・・」
長谷川「それも気になるが、何故人間の体内から トゲが出てきたのかが不可思議だな」
寺島「確かに」
寺島「俺、今から殺害現場に行って来ます」
寺島は長谷川を残し、急いで
殺害現場へと向かった。
〇森の中
PM16:00
寺島は一人で殺害現場を訪れ、
トゲが付いている雑草を隈無く調べた。
だが、トゲが付いた雑草は何一つなかった。
寺島「う~ん、これは一体どういうコトだ?」
現場周辺を調べ歩いていると──
一輪の萎んだ花に目が止まった。
花弁をそっと優しく触る。
寺島「何も見てないよな・・・?」
萎んだ花を手に取り、ふと呟いた。
すると、一粒の雨が頭上に落ちる。
寺島「ん?雨か?」
〇森の中
雨粒はやがて大量に落ち、山林全体を濡らす
寺島「夕立ちか。急いで戻らないと」
寺島はジャケットを頭から被り、
急いで車に向かう。
寺島が手に取って見詰めた一輪の花は、
うっすらと真っ赤に染まっていた──
この時点ではまだ何もわかりませんよね。しかし、地道な捜査から、徐々に犯人に近づいて行けるのかどうか…
宮間周平事件について丁寧に詰めていくことで、緊張感が生まれてきますね。月下美人の痕跡は今のところ一本のトゲのみ、ここからどう展開するのか楽しみです!