#4 moonlight(脚本)
〇シックなリビング
母親「うっ・・・うう・・・」
ごめんなさい
母親「ひどい・・・どうしてそんなひどいことするの・・・」
ごめんなさい
母親「お母さんの大事なネックレス・・・」
ごめんなさい
父親「ど、どうした?」
お父さん、あのね
母親「文香が・・・私のネックレスを・・・」
母親「貴文さんに買ってもらった、大事なネックレスを・・・」
父親「壊したのか・・・?」
母親「う・・・うぅ・・・」
父親「・・・」
父親「香織・・・」
父親「大丈夫だよ。また買ってあげるから」
母親「でも・・・このネックレスは特別で・・・」
母親「思い出だって・・・」
母親「うぅ・・・」
父親「大丈夫。大丈夫だから・・・」
ごめんなさい
父親「文香」
父親「ちょっと来なさい」
〇部屋の前
父親「文香」
はい
父親「文香はお母さんの気持ちを考えたことある?」
ごめんなさい
父親「僕に謝ってどうするの?」
・・・
父親「文香はお母さんの苦労を知らないから、そんなことができるんだろうね」
父親「あの子は貧しい家庭で必死に頑張ってきた」
父親「あのネックレスだって、僕が彼女の就職祝いに買ってあげたものだ」
・・・
父親「お母さん、泣いてたよね」
・・・
父親「文香が泣かせたんだよ」
ごめんなさい
父親「どうしてそんなひどいことができるの?」
父親「育ててくれた親に対して、恩を仇で返すようなことができるの?」
ごめんなさい
父親「ごめんなさいごめんなさいって!」
父親「それしか言えないのか!」
ごめんなさい!
父親「今すぐ香織に土下座してこい!」
父親「香織が許すまで、僕もお前を許さない!」
ごめんなさい
〇森の中の沼
土田 文香「ごめんなさい」
土田 文香「・・・」
土田 文香「嫌なことを思い出した」
土田 文香「泣くなよ。鬱陶しいなあ」
土田 文香「いいよな。泣けば、守ってくれる人がいて」
土田 文香「無邪気な笑い声が癪に触る」
土田 文香「私に子供ができても、きっと虐待してしまうんだろうなあ」
土田 文香「子供なんて可愛くないもんね」
土田 文香「黙れ!」
土田 文香「小便臭いガキが私を不快にさせてんじゃねえよ!」
土田 文香「・・・」
土田 文香「シェリーさんどこだろ」
土田 文香「探さないと」
〇山道
ベアル「シェリル様からサリア様に「20年」渡りました」
サリア「退屈ですね」
サリア「ちょっとは骨があるかと思いましたが、あまりにあっけなすぎます」
サリア「・・・まあ、人間と戯れるような低俗な者に期待するのもおかしいですが」
ベアル「シェリル様からサリア様に「20年」渡りました」
サリア「それにしても・・・」
サリア「大分、寿命を溜め込んでますね」
サリア「可哀想に」
サリア「とっとと死ねば、楽になれるのに」
ベアル「シェリル様からサリア様に「20年」渡りました」
サリア「・・・」
サリア「散歩でもしましょうか」
サリア「今宵は月が綺麗ですし」
〇睡蓮の花園
サリア「・・・」
サリア「よしよし」
狼「くぅ〜ん」
サリア「誰ですか?」
シアン「怪しい者ではありません」
サリア「鏡で自分の姿を見たことあります?」
サリア「どう見ても怪しいでしょう」
シアン「ふふふ」
シアン「私は通りすがりの死神ですよ」
狼「ガルルゥ・・・」
サリア「死神さん・・・ですか」
サリア「不思議ですね。私が死ぬのはもっと先のはずですが」
シアン「「通りすがり」と言ったでしょう」
シアン「貴方をお迎えに来たわけじゃありませんよ」
サリア「ふーん。じゃあ「あいつ」の?」
シアン「「あいつ」とは?」
サリア「ち、近い」
シアン「おっと、失礼」
シアン「夜の上に、仮面まで被っているので」
シアン「距離感が掴めませんでした」
サリア「・・・」
サリア「「あいつ」とは私の対戦相手のことです」
シアン「対戦相手?」
サリア「ええ。貴方も「吸血鬼の決闘」くらいは知っているでしょう」
シアン「噂くらいは耳にしますが」
サリア「・・・その言い方だと、「あいつ」のお迎えでもなさそうですね」
サリア「全く・・・しぶといやつ」
狼「ガルルゥ・・・」
シアン「そちらの狼さんは?」
サリア「私の眷属です」
シアン「ほう」
シアン「狼を使役するとは・・・貴方、ただの吸血鬼ではありませんね?」
サリア「あははっ。狼だけじゃありませんよ」
「・・・」
サリア「私は動物さんたちを従えてます」
シアン「なんと・・・」
シアン「おや?」
サリア「今のは鳥さんです」
サリア「人間の鳴き真似ができるんですよ。すごいでしょう」
シアン「すごい」
サリア「うふふっ」
シアン「動物と心を通わせられるのは、心が清らかである証拠です」
シアン「人間と違って、動物は無垢な存在ですから」
サリア「・・・ですよね!」
サリア「人間は煩悩の塊です!」
サリア「邪念に支配されて、本質を見つめられないんですよ」
シアン「ふふっ。その通りですね」
シアン「貴方とは気が合いそうです」
サリア「・・・」
サリア「私と気が合う人なんていませんよ」
シアン「・・・」
サリア「上辺の言葉はもういいです」
サリア「どうせ貴方も、私に合わせてるだけでしょう」
シアン「何故、そう思うのですか?」
サリア「誰も私のことなんて理解できない」
サリア「私以外の人物が、私と同じ目線に立てるはずがありません」
サリア「貴方と私は違うのですから、当然思考回路も違います」
サリア「「気が合いそう」なんて軽々しく口にしない方がいいですよ?」
シアン「それでもあえて言わせて頂きます」
シアン「私は、貴方と気が合いそうです」
サリア「・・・」
サリア「・・・強引なナンパですね」
シアン「はい。死神はいつでも強引なのです」
サリア「あはっ。強引なのは嫌いじゃないです」
シアン「気が合いますね」
サリア「もう・・・!」
シアン「・・・」
〇草原
シアン「それにしても」
シアン「今宵は月が綺麗ですね」
サリア「・・・」
サリア「・・・え?」
〇睡蓮の花園
サリア「貴方には・・・月が見えるのですか?」
シアン「見えますよ」
シアン「綺麗な満月がね」
サリア「・・・」
〇草原
シアン「ほら」
シアン「あんなにも輝いて」
サリア「・・・」
〇睡蓮の花園
サリア「や・・・」
サリア「やっと出会えた・・・」
シアン「・・・」
サリア「私の・・・王子様」
シアン「王子様なんてガラじゃありません」
シアン「私はしがない死神です」
サリア「王子様ッ・・・!」
シアン「・・・」
サリア「それでも・・・貴方は私の王子様なんです」
シアン「・・・」
サリア「王子様・・・」
シアン「・・・仮面を被っていて良かった」
シアン「今の私の顔は、貴方には見せられません」
サリア「耳が赤い・・・」
シアン「・・・ッ」
シアン「意地悪な人だ・・・」
サリア「仮面外して、顔見せて・・・」
シアン「・・・」
〇草原
サリア「かっこいい・・・」
シアン「素顔を見せるのは、貴方が初めてです」
シアン「責任、取ってくださいよ」
サリア「あ・・・だめ」
サリア「動物さんたちが見てる・・・」
サリア「・・・んっ」
空を覆っていた雲は消え
月明かりが辺りを照らす頃
私はシンプルなこの世界で
複雑な感情を胸に抱くのでした
かつての私はそれを邪念と呼ぶでしょう
でも今は・・・
〇林道
土田 文香「シェリーさんどこだろ」
土田 文香「クマに襲われて死んでないといいけど」
あああああ・・・コメントが、いややっぱ好きだなぁと言いたくなります・・・冒頭の両親についての過去エピ、サリア様と死神の会話に、あとがき……ダメだ、この回で文香とサリア様への愛着が↗……。
次回については……サリア様この死神相手に動悸、大分激し上がり下がりしましたよね・・・