第3 スパイ(脚本)
〇畳敷きの大広間
村長「ハラミ、私がお前を呼び寄せた理由はわかっているよな」
ハラミ「もちろんです」
村長「お前が身籠った時、ツクネは魔王を倒すべく村を出た」
村長「ツクネは勇者の末裔であり使命を果たす為に魔王と戦った」
ハラミ「そうです。なので、私は止めることはできませんでした」
ハラミ「そして、夫は帰ってくることはありませんでした」
村長「悲しい出来事を思い出させてすまない」
ハラミ「いえ、気にしていません」
村長「最近の出来事を思い返すと魔王が復活した可能性がある」
ハラミ「・・・」
村長「勇者の血を引き継ぐはずのお前の長男ユッケは、魔力なしのただの子供であった」
ハラミ「はい。夫は勇者の使命を背負わなくても良いと喜んでいました」
村長「しかし、お前の娘サタナは強大な魔力を持って生を受け、5歳の頃から魔獣を退治するほど強くなった」
ハラミ「サタナちゃんは勇者の血を引いているのでしょう」
村長「もし、魔王が復活するようなことがあれば・・・」
ハラミ「ダメです!サタナちゃんには危険な事をさせたくありません」
ハラミ「それに、魔王を倒した7勇者様がいるではありませんか?」
村長「あヤツらが本物の勇者なら、私は何も心配しておらん」
村長「しかし、あヤツらは勇者の血を引く正統の勇者ではない。それはお前が一番理解しているだろう」
ハラミ「・・・」
村長「あヤツらは、どこで強大な力を手に入れたかはわからないが勇者ではない」
ハラミ「はい。勇者の血を引くのはサタナと夫の兄であるトントロの2人だけです」
村長「しかし、魔王が現れ時、トントロは行方をくらました」
ハラミ「はい」
村長「まだ、魔王が復活したとは断定はできない。しかし、最近の異変には何か理由はあるはずだ」
ハラミ「はい」
村長「現状を把握しつつ、魔王対策も講じなければいけない」
ハラミ「わかりました」
ハラミ「私がトントロを探してきます」
カルビ「村長待ってください」
村長「どうしたカルビ」
カルビ「サタナちゃんにはハラミさんが必要です。2人を引き裂くような事はしてはいけません」
村長「わかっている。しかし、今できる最善の策を講じる必要がある」
カルビ「恋人もいない友達も少ないタンに行かせてはどうでしょうか?アイツなら居なくなっても誰も困りません」
村長「それは名案だ」
ハラミ「・・・」
ハラミ「タンさんごめんなさい」
〇けもの道
サタナ「いでよ、暗黒の女王ラファン」
暗黒の女王 ラファン「久しぶりだな魔王」
サタナ「相変わらず生意気な口ぶりだな」
暗黒の女王 ラファン「だったらどうなんだ」
暗黒の女王 ラファン「そんのことより、いつまでそんなダサいジャージを着てるつもりなんだ」
サタナ「かっこいいだろ」
サタナ「上下セットで500円とお買い得だぁ〜」
暗黒の女王 ラファン「それは・・・」
暗黒の女王 ラファン「お買い得だな」
サタナ「本当はお前も欲しいのだろ?」
暗黒の女王 ラファン「・・・」
サタナ「お前にピンクのジャージを用意してたのだが、いらないなら捨てておこう」
暗黒の女王 ラファン「欲しい・・・」
暗黒の女王 ラファン「本当はめちゃカッコイイと思ってた」
氷の女王 グラース「魔王様、お待ちください」
サタナ「グラース、どうしたのだ」
氷の女王 グラース「私もジャージが欲しいです」
サタナ「2人とも、そんなにジャージが欲しいのか」
暗黒の女王 ラファン「欲しい」
氷の女王 グラース「欲しいです」
サタナ「そうか、魔界にあるどんな服よりもオシャレで機能的なこのジャージを欲しがるのは当然の事だな」
サタナ「しかし」
サタナ「今は、ジャージより優先すべき事案が発生した」
暗黒の女王 ラファン「ジャージより優先な事などない!」
氷の女王 グラース「同意です」
サタナ「確かにジャージのが大事なような気がしてきた・・・」
暗黒の女王 ラファン「魔王、早く私にジャージをよこすのだ」
氷の女王 グラース「魔王様、私のがジャージが似合うと思います」
暗黒の女王 ラファン「俺様のが似合うのだ」
氷の女王 グラース「私です」
サタナ「2人とも落ち着け!」
サタナ「2人の分を用意できるか確かめてくる」
暗黒の女王 ラファン「すぐに確認してこい」
氷の女王 グラース「よろしくお願いします」
サタナ「妾は何か大事な用があったはずでは・・・」
〇霧の立ち込める森
タン「くそ!どうしてこうなったのだ」
タン「俺は上手く立ち回っていたはずだ」
タン「俺の正体は誰にもバレていないはずだ」
憤怒の勇者 ラージュ「大失態だな」
タン「その声は・・・」
タン「パレス様・・・」
タン「なぜ?パレス様がこんなところにいるのでしょうか?」
憤怒の勇者 ラージュ「俺の予感は的中したようだな」
タン「どういうことでしょうか」
憤怒の勇者 ラージュ「お前はマカロニの村を監視していて何も気づかなかったのか!」
タン「もうしわけありません」
憤怒の勇者 ラージュ「お前の使命は何だったのか言ってみろ」
タン「マカロニの村を監視することです」
憤怒の勇者 ラージュ「その意味はわかっているよな」
タン「本物の勇者であるトントロが、マカロニの村に姿を見せたら報告する事です」
憤怒の勇者 ラージュ「正解だ!」
憤怒の勇者 ラージュ「しかし、トントロが姿を現したのにお前は俺に報告をしなかった」
タン「待ってください!」
タン「トントロはマカロニの村に姿を見せていません」
タン「私はトントロを探し出すために村長から村を追い出されたのです」
憤怒の勇者 ラージュ「このボケナスがぁ!」
憤怒の勇者 ラージュ「お前は俺のスパイとバレたから体よく追い出されたのだ」
タン「本当ですか!」
憤怒の勇者 ラージュ「ボンゴレの村でオーガの大群が氷漬けになり、マカロニの村の付近でオーガ最強の戦士スキヤキの死体が転がっていた」
憤怒の勇者 ラージュ「そして、調査に乗り出した傲慢の勇者アロガンが森ごと消滅させられた」
タン「もしかして・・・」
憤怒の勇者 ラージュ「そうだ!正統勇者であるトントロの仕業で間違いない」
タン「パレス様、僕はこれからどうすればいいのでしょうかぁ~」
憤怒の勇者 ラージュ「本来の力を解放しろ!」
タン「良いのでしょうか?」
憤怒の勇者 ラージュ「あぁ、我が眷属である猫人タンシオよ!」
〇霧の立ち込める森
猫人 タンシオ「にゃ~~~」
憤怒の勇者 ラージュ「おぉ~~~~」
憤怒の勇者 ラージュ「俺の可愛い可愛いタンシオちゃん。今までの激務ご苦労ちゃま」
猫人 タンシオ「にゃ~~~」
憤怒の勇者 ラージュ「さっきはキツイ事を言ってごめんでちゅ」
猫人 タンシオ「にゃ~~」
憤怒の勇者 ラージュ「久しぶりにタンシオちゃんに会えて、僕は興奮してるでちゅ」
猫人 タンシオ「にゃ~」
タン「猫人族に戻ると会話が出来ないから不便です」
憤怒の勇者 ラージュ「誰が人間の姿に戻って良いと言ったぁ~」
タン「申し訳ありません」
憤怒の勇者 ラージュ「お前に会話など必要ない!」
憤怒の勇者 ラージュ「あの愛くるしい笑顔があればいいのだ」
憤怒の勇者 ラージュ「すぐに可愛いタンシオちゃんに戻るのだ!」
タン「申し訳ありません」
タン「人間の姿に変身すると1年間は猫人族に戻る事は出来ないのです」
憤怒の勇者 ラージュ「俺の・・・」
憤怒の勇者 ラージュ「俺のタンシオちゃんを返せぇ~~~~」
第四話に続く