真昼の吹雪

危機綺羅

4.秋の空のごとく(脚本)

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〇教室
クラスメイト「九冬さん、その・・・これ美味しいから、一ついる?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・物を貰うようなこと、なにもしてないと思うけど」
クラスメイト「ご、ごめんね・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「あ、いや、違うの!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「私、あなたにも冷たくしてたし、お裾分けを貰えるようなことしてないから・・・」
クラスメイト「あ、そうだったんだ・・・遠慮しないでいいんだよ?」
クラスメイト「だって九冬さんは──」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「吹雪ちゃーん!」
クラスメイト「真昼ちゃんの相手で大変だから・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・ありがたくいただくわね」

〇教室
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「私のおかげで、吹雪ちゃんも柔らかくなってきたね」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「まあ、否定はしないわ」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「吹雪ちゃんの印象も変わってきている・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「ということで、クラスメイトに訊いてきました!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「題して『真冬の姫君といえば誰!?』」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「そんなにすぐに変わらないでしょ・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「さあ、まずはこちらをご覧ください」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「あ、これじゃないや」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「まずはこのアンケートを・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「いや、今のなによ!?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「気にしなくていいよ。全然関係ないからさ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なら真冬の姫君はいいから、そっちを話しなさいよ」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「さて、このアンケートによると──」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「強引に進行してる・・・!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「真冬の姫君といえば・・・九冬吹雪20人」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「秋野晴空8人、ボク1人、私1人──だね」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「自称してる人がいるみたいだけど?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「それは晴空ちゃんだね」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「真冬の姫君って名前が流行り始めた頃から、それはボクだって言い張ってるんだよ」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「そのせいで、晴空ちゃんが姫君だって思ってる人もいるみたい」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「変わった人もいるものね・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「もう一人の方は?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「それは私だね!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「変わった人ばかりね・・・」

〇教室
???「そのアンケート結果、納得いかないな!」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「クラスメイトだけじゃなく、学年全体から無作為に聞き取るべきだ」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「そうすれば真昼ちゃんも、ボクこそが真冬の姫君だと分かってくれるはずさ・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・えっと、真昼さん。この人が?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「うん。秋野晴空ちゃんだよ!」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「こんにちわ、九冬さん。こうして話すのは初めてだね」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「ど、どうも・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(クラスメイト、なのよね?)
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(・・・こんなに目立つ人、知らないはずがないと思うけど)
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「というか、秋野さん・・・その服はいったい・・・?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ああ、これかい? ボクはかっこいい女を目指していてね・・・」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「休み時間は着替えて、学校中を練り歩きアピールすることにしてるんだ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「それはかっこいい女がすることかしら・・・?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ほお・・・では、九冬さんの意見も聞いていいかな?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「え? た、例えば・・・窓際で静かに本を読むとか・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「吹雪ちゃんが前にやってたやつ?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「ちょっと、私が自画自賛してるみたいじゃない!?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「自然体とは・・・さすが、元祖真冬の姫君といったところかな」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「元祖でも本家でもないわよ! 私、名乗ってないから!」

〇教室
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「──おっと、そろそろ着替えないと間に合わないな」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「興味深い意見だったよ、九冬さん。続きはまたの機会だね」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なんというか、独特な人ね・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「私の親戚だからね。そりゃ変わってるよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「秋野さんもそうなの!?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「あなたの親戚、いったい何人いるのよ・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「うーん・・・どうだろう?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「全員は知らないし、他所と混ざって増えたりもするからね」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「あなたの一族は外来種かなにかなの?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「常夏一族は繁殖力が自慢だよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「指定外来種だわ・・・」

〇教室
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「んー・・・でも、晴空ちゃんも昔は普通だったんだよ?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「普通だったとは思えないんだけど・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「それはね──」

〇田園風景
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「──晴空ちゃーん、こっちこっち!」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ま、待ってよ。真昼ちゃん・・・!」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「この格好、走りづらくて──うわっ!?」

〇空
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「晴空ちゃーん!」

〇教室
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「──田んぼに転がり落ちてから、晴空ちゃんはあんな風に・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「ちなみに、引き上げた時の写真がこれだよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「結局、この写真の説明されてるわね・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「それより──ちょっと同情だわ・・・ショックで性格が変わっちゃうなんて」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「え? 性格は変わってないよ?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「は? ならなにが変わったのよ?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「かっこいいを目指してるのは元からだったんだけど──」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ふぅ、間に合ってよかった・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「かっこいい“女”を目指すようになっちゃったんだよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「え? いや、子供の頃から女の子の服だし・・・?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「晴空ちゃんのお母さんの趣味だよ」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「格好に負けないくらい、かっこよくなるって言ってたのになー」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・」

〇大きな木のある校舎
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「ええ・・・?」

〇教室
クラスメイト「──九冬さん、これ、よかったら食べて?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「え? こんな高そうなの、悪いわよ!?」
クラスメイト「でも、ほら・・・」

〇教室
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「吹雪ちゃーん!」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「九冬さん!」

〇教室
クラスメイト「晴空くんの相手もしてるし・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・ありがたく、いただくわ」

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