〇神社の本殿
コマ「《これはどういうことなんだ？（ツクヨミ）》」
コマ「すみません。 前回もツクヨミ様を身体に取り込んで、 相手を倒したんです」
コマ「《まったく覚えていない。俺はこのまま居ればいいのか？》」
コマ「私も慣れていないのですが、 動かない方がいいと思います。 そこで見ていてください」
ヒルコ「なんだ。 合体することができるのか」
ヒルコ「それなら私もタケハと 合体できるのかな」
ヒルコ「あとでゆっくり試してみよ」
コマ「そうはいかないですよ」
ヒルコ「ぐふっ」
ヒルコ「ここまで強いとは。 このままでは・・」
アワシマ「大丈夫ですかー」
アワシマ「せっかく あの世とこの世をつなぐ穴を バレないように作ったのに・・」
アワシマ「なんか、 幸せな結末になってないですね。 グフッ（笑）」
ヒルコ「おまえも手伝え。 こいつを止めるんだ」
アワシマ「えーー、 戦うの嫌だなぁ。 痛いんでしょう？」
ヒルコ「少しだけでもいいから 加勢して」
アワシマ「わかった。 ちょっとだけだよ。 痛かったらすぐに帰るからね」
アワシマ「じゃあ、 僕が相手をするね」
コマ「誰が来ても一緒だ」
アワシマ「うわぁ、 痛い痛い。 じゃあ、あの世に帰ります」
ヒルコ「よし、今のうち・・・ タケハの魂を奪って逃げれば・・」
コマ「《あぶない。タケハーーーー》」
コマ「ツクヨミ様、動いては・・」
ツクヨミ「やめろー」
ヒルコ「チッ、気づかれたか」
ヒルコ「お札を持っているおまえは厄介だが、 タケハに触ることができれば・・」
コマ「《ヒルコ様はタケハ様に触れて、魂を抜こうとしています。 もしそうなれば、タケハ様は死んでしまうことになります》」
ツクヨミ「・・・大事な弟だろ？ 殺してどうなるんだ」
ツクヨミ「遠くから見守っててもいいから、 幸せを願うべきじゃないのか？」
ヒルコ「ふっ、 幸せは誰が定義するんだ？ こんなねじ曲がったタケハが 幸せになれるはずがないんだよ」
ヒルコ「私と一緒にいたほうが幸せだ。 代わりに、二人でこの神社を守ってやるからさ」
ツクヨミ「ねじ曲がってる？ もしそうだとしても、俺はタケハを信じる。俺が時間をかけてでも、その捻じれを取ってやる」
ヒルコ「ふん、 今までほったらかしにしていたくせに」
ツクヨミ「いつから始めるかは関係ない。 気付いた時にみんなが助け合えばいいんだ」
ツクヨミ「・・この神社で願っていく人たちも、 何かに気付いてここに来ているんだ」
ツクヨミ「その願いが間違えていて、 ひねくれていたとしても、 失敗に気付いて 願いを修正して神様に願いに来るんだ」
ツクヨミ「みんな、 幸せになりたいと願っている。 幸せの定義は違うかもしれないけど・・」
ツクヨミ「それでも俺は、幸せになりたいという タケハの願いを叶える」
ヒルコ「そんな綺麗ごとばかり・・ そんなことは・・許さない ・・・ゆるせない」
コマ「《ツクヨミ様、 ありがとうございます。 時間を稼いでくれたおかげで・・》」
コマ「タケハ様と合体することができました。 これで、タケハ様の魂を 奪われることはできません」
ヒルコ「チッ、 一旦逃げるか」
コマ「しまった。 タケハ様の魂の半分を持たれたまま、 穴に逃げられてしまう」
コマ「ツクヨミ様、 私はヒルコ様を追いかけます。 ここで淡雪さんと待っていてください」
ツクヨミ「頼んだぞ、コマ」
ツクヨミ「淡雪、しっかりしろ」
淡雪「・・・・ん、うん、 ・・・？あれ？ わたし、どうなったの？」
ツクヨミ「敵に襲われた 淡雪はあいつにやられたんだろ」
淡雪「・・・みんなは？ コマと・・タケハは？」
ツクヨミ「どこまで説明するか難しいが、 襲ってきたのは妹の・・」
淡雪「ヒルコさん」
ツクヨミ「・・それを、どうして？」
淡雪「私、ツクヨミさんのお母さんに 会いに行ってたんです」
ツクヨミ「えっ？」
ツクヨミ「・・・あの人は家族を捨てて、 出て行った・・」
淡雪「違うんです」
淡雪「お母さんは仕方なく家を出て行った」
淡雪「それも原因はねじ曲がった ヒルコさんの愛情のせい」
ツクヨミ「???」
淡雪「ヒルコさんはお父さんのことが好きだった。 それでお母さんのことが邪魔になって・・」
淡雪「彼女には生まれつき不思議な力があったみたいです。 その力で、お母さんを何度も危険にさらした」
淡雪「お母さんはストレスと狂気で お父さんに当たるようになって、」
淡雪「それを訝しく思ったお父さんが、 ヒルコさんがやっていたことだと 突き止めたんです」
淡雪「それで、命が危ないと思い、 お母さんを家出させて、 お父さんはヒルコさんの問題が落ち着いたら、戻ってくるように言っていた」
ツクヨミ「そんな、、証拠がないじゃないか」
淡雪「二人は文通していました。 ヒルコさんにバレないように 引き出しに仕掛けを作って隠していたんです」
淡雪「これがその手紙です。 一度引っ越しをしていましたが、 私はその住所を頼りにお母さんを見つけ出した」
ツクヨミ「・・・・・ これは母さんの字だ。 母さんは元気だったのか？」
淡雪「いえ、ヒルコさんにかけられた呪いのようなものが、まだ根強く残っていて、 ベッドから起きるのもやっとの状態でした」
淡雪「お母さんは、自分が神社に帰ってくるとヒルコさんが霊化してみんなを困らせると思ったみたいです」
淡雪「それで私に鏡のことを教えてくれました」
淡雪「『真実を照らす鏡に光を当てて周りにかざせば、異界のものは消えていなくなる』」
淡雪「この神社に伝わる言葉だそうです」
淡雪「ヒルコさんが近くにいないのなら、 お母さんはここに帰ってきたいと 言っていました」
淡雪「それで私が、それを調べようとしていたんです。 でも、遅かったみたいですね・・」
ツクヨミ「そうか・・・ でも、母さんが俺たちを嫌って出て行ったんじゃないとわかっただけでも嬉しいよ、ありがとう」
淡雪「すみません、 私がもう少し早く戻ってきていれば・・・」
マコ「・・・」
淡雪「キャーーー 後ろ・・後ろ・・・」
淡雪「ヒルコさんじゃ・・・ないんですか？」
ツクヨミ「この人はマコだよ」
淡雪「マコ？」
ツクヨミ「俺が勝手に名前をつけた。 コマが男だったから、 それを逆にすれば女性っぽいかなぁ、って」
淡雪「・・・ということは」
ツクヨミ「あぁ、もう一人の狛犬だよ。 神社が禍々しいものに囲まれたことを 教えに来てくれたんだ」
マコ「・・・どうも、マコです」
ツクヨミ「さっきも急に現れて、 俺のトイレの最中にここに連れてこられたんだ」
マコ「・・・どうも、すみませんでした」
ツクヨミ「マコはあんまり口数が多くないんだよ」
ツクヨミ「なあ、マコ。 コマがいなくなった今、 俺らはどうしたらいい？」
マコ「・・今の状態では、こちらから干渉はできません」
マコ「可能性は二つあります。 コマが無事にタケハ様の魂を回収して戻ってくるか、」
マコ「反撃に遭って、やられてしまい、 タケハ様は帰らぬ人になるか・・」
ツクヨミ「縁起でもないこと言うなよ」
マコ「・・可能性の問題です。 そのうえで、私たちにできることはありません」
ツクヨミ「そうか、じゃあ、 ここでコマの帰りを待つしかないな」
マコ「そうですね」
淡雪「・・それにしても、 なんで今までマコさんは出てこなかったんですか？」
ツクヨミ「極度の照れ屋らしいんだよ。 だから、表舞台に立つときはコマがその役目を果たしていたらしい」
マコ「・・・さっきも、助けようとおもったんですが、・・・躊躇してしまって・・・」
ツクヨミ「仕方ないよ。 ここはコマを信じて待ってみよう」
マコ「・・・はい」