voice【1】 30歳からはじめる声優養成所生活★(脚本)
〇オーディション会場
面接官「じゃあ1番さん。 名前と年齢、入所オーディションを受けた理由をお願いします」
「はい!」
石動 凛子「石動 凛子(いするぎ りんこ) 30歳です」
石動 凛子「私は表現者として生きることが目標です。 声優という「声と言葉の表現者」として生きたいと考え、オーディションを受けました」
石動 凛子「アラサー演技未経験からでも声優になって活躍できるという希望の星になります!」
面接官「・・・わかりました。 では次の人・・・」
〇SNSの画面
初日におさえるポイント
①講師の前の席を確保すること
②挨拶は笑顔でハキハキと
③レッスンは積極的に、
トップバッターで手をあげること
④必ず質問を講師にして、印象に残すこと
常に見られてると思え
〇女性の部屋
石動 凛子「プロフィール写真、これでよかったのかな?」
石動 凛子「上半身と全身の写真って、まだ芸能人でもないのに。しかも撮影代、高かったな」
プロフィール写真は宣材写真。
プロのカメラマンとメイクをして挑むのがよい
石動 凛子「夢ってお金かかるなぁ でも、私は声優になってみせる」
石動 凛子「やっと褒められることがあったんだ。 私はあの時の感動を形にする」
石動 凛子「それで声優として、感謝を伝えに行くのだ!」
アラサー女性が未経験で声優になる方法
厳しい。ほぼ不可能である。
石動 凛子「だったら私が最初の事例になればいい。 前例がないなら作るまでよ!」
石動 凛子「プロフィールシートよし! 筆記用具、内履き、水、アクセント辞典よし!」
〇オフィスビル前の道
石動 凛子(あぎゃー! わ、若い子たちが溜まってるー!)
石動 凛子「どう見たって私はおばん・・・」
石動 凛子(いやいや、ここは大人の余裕! そして大人の本気パワー!)
「・・・・・・」
〇オフィスの廊下
事務局の人「おはようございまーす。 こちらで検温しまーす」
石動 凛子「おはようございます!」
事務局の人「おはようございます。 体調は大丈夫ですかー?」
石動 凛子「はい、大丈夫です!」
事務局の人「消毒して中に入ってくださーい」
〇説明会場(モニター無し)
石動 凛子「やった、一番ノリ!」
石動 凛子(自己紹介、暗記してきたから大丈夫・・・)
九条 大志「おお、おはようございます」
七海 さくら「おはよーございまーす」
石動 凛子(は、話しかけるべき? コミュ力も鍛えないと、今どきの声優はダメよね?)
「おはようございまーす!!」
石動 凛子(せ、制服!! え、なに!? 制服マウント!?)
宇野 聖羅「隣、いい? 年齢近いよね? あたし、宇野 聖羅」
七海 さくら「うち、七海 さくら。 18歳やけど、こう見えて社会人なんよ!」
宇野 聖羅「もう働いてるんだ! すごぉい、カッコイイー!」
石動 凛子(それでも18歳・・・)
石動 凛子(いやいや、若い子ばっかりなのはわかってたこと)
石動 凛子(女性声優は遅くても20代前半でデビューしないと、役のオーディションさえ受けられない)
石動 凛子(アイドル声優。 若くてかわいくて、歌って踊れる)
廻 心春「お、おはようございます」
そう、強いのはこういう子──。
〇オフィスビル
永山 聡史「あれ、今日はもういいの?」
石動 凛子「あ、おつかれさまです」
石動 凛子「ちょっと・・・あの場にいたら爆発しそうなので」
永山 聡史「そっかぁ」
永山 聡史「じゃあ爆発しちゃおうかー」
〇大衆居酒屋
石動 凛子「ぜーったいおかしいです! なんであの部署の人たちは電話とらなくていいって暗黙があるんですか!?」
石動 凛子「給料と業務量の格差っ! あの人たち暇そうじゃないですか! 電話とれよ、くそぅ!」
石動 凛子「口だけなんて簡単なんだよ! 電話もとらないやつが、お客さんの声わかると思うなよー!!」
永山 聡史「いい飲みっぷりだねぇ。 石動さんほど担当業務に真面目な人、いないよ」
石動 凛子「担当業務盛り上げようと、案も出して情報発信してます。色んな方にアドバイスもらって、イベントも成功したのに・・・」
石動 凛子「頑張っても人事考課で評価されない。 ダメ出しばかりで、あの部署見習えって言われてもさぁ」
石動 凛子「業務量違うし、上のお気に入りだし! その割に忙しいマウント? 暇な顔してるけど!?」
永山 聡史「あーはっはっ! 本当にねぇ、変な会社だよね」
永山 聡史「でもうちの部署は、 あの部署の人たちいらないよ〜」
永山 聡史「表向きはカッコイイ感じにしてるけど。 実態はどう? あの部長の下だよ?」
永山 聡史「うちの部署に来てもあの人らは働けないよ」
石動 凛子「なんですか、それ」
永山 聡史「見てる人はちゃんと見てるから。 残念なのは、僕が役職のない人間ということだ」
石動 凛子「長年の功労者で、現場をよくわかってるのに、なんで永山さんは・・・」
永山 聡史「昔のことは、今の若い世代に関係ないんだよ」
石動 凛子「・・・・・・」
〇ラーメン屋のカウンター
永山 聡史「いやぁ、石動さんいい食べっぷり!」
石動 凛子「うまーっ!!」
永山 聡史「前から思ってたけど、 石動さんっていい声だよねぇ」
石動 凛子「それは嬉しいです!」
永山 聡史「いや、本当に。 ハキハキ喋るし、すごい聞いてて内側にグッとくる感じがあるよ」
石動 凛子「ありがとうございます!!」
永山 聡史「石動さんは電話対応も丁寧だし、 なにより相手のことを考えて対応してるよね」
永山 聡史「すごいと思ってた。 いつも一生懸命で、積極的にわからないことは質問してきて勉強しようとする」
永山 聡史「見て覚えるぞっていう根性もあるよね。 なんで上の人が気づかないのか、不思議なくらいにパワーあるよ」
石動 凛子「・・・永山さんくらいです。 そんなこと言ってくれたのは」
石動 凛子「実は趣味なんですが、配信アプリで声出しだけやってるんです。 それがすごく楽しいんですよね」
石動 凛子「お題文みて、キャラを構築して、どんな気持ちでどんな場所にいて、どんな風に喋るかを想像してセリフを言うんです」
永山 聡史「へぇ! それって声優さんみたいだね!」
石動 凛子「実は興味をもってたこと、あるんです でも今、声優目指す人って本当に多くて」
石動 凛子「それに私の年齢だと厳しいというか・・・」
永山 聡史「僕は石動さんの声、好きだけどなぁ。 何度も石動さんの声と言葉、明るさに励まされてきたよ」
石動 凛子「永山さん優しすぎです。 頑張っても頑張っても、誰も認めてくれなかったのに・・・」
永山 聡史「見てる人は見てるから。 僕は石動さんのファンだからね」
永山 聡史「一生懸命頑張ってる石動さんを応援するのが楽しいんだ。 こんなおじさんに幸せをくれてありがとう」
石動 凛子「うあああああああんっ!!!」
石動 凛子(言葉って、本当に力がある。 優しい言葉、冷たい言葉)
石動 凛子(そっかぁ、声優さんって 声を使った言葉の表現者なんだ!)
石動 凛子「あり、がとうっ・・・ございますっ!!」
声優は、声と言葉の表現者。
私は好きと言ってもらえる声で感謝を伝えられる人になりたい!
自分の声で、言葉で、
責任もって表現したいんだ!
〇説明会場(モニター無し)
石動 凛子(永山さんからもらったお守り(ヘアピン)もある。大丈夫、私はここで一番をとる)
小鳥遊 真緒「はーい、皆さん立ってくださーい」
石動 凛子(なんて明瞭な声!)
小鳥遊 真緒「おはようございます!」
「おはようございます!」
小鳥遊 真緒「声小さいよー! おはようございます!」
「おはようございます!!」
小鳥遊 真緒「この初級クラスの担当になりました 小鳥遊 真緒です。 1年間よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
小鳥遊 真緒「じゃあ出席とりまーす」
小鳥遊 真緒「自己紹介の前に発声練習をしようか!」
そして発声練習をして・・・
クラスのレベルをなんとなく察したのです。
石動 凛子(ぶっちゃけ私が一番声出てる。 ここに来る前から練習してよかった)
小鳥遊 真緒「じゃあ自己紹介は・・・」
石動 凛子「はい!」
小鳥遊 真緒「あ、ちょうど良かった。 出席番号順だから石動さんからで」
石動 凛子「・・・はい」
(圧が強いっっっ!!)
石動 凛子「石動 凛子です。 年齢は30歳、おそらくこの中では最年長になると思います」
石動 凛子「年齢で夢を諦める理由にはならない。 声と言葉の表現者、それが私の声優道です」
石動 凛子「皆さんに負けないよう頑張りますのでよろしくお願いいたします」
小鳥遊 真緒「・・・じゃあ次、宇野さん」
宇野 聖羅「宇野 聖羅です! 高校1年生です!」
宇野 聖羅「好きな声優さんは●●さんです! 歌って踊れる声優さんになりたいです!」
石動 凛子(え、えええーっ!?)
どうなる、このクラス!?
次回「戦え、イントネーション!」
初コメです❤️
あのう、
物凄く情報細かいし、
リアル感出てるんですけど、
ひょっとして作者様の実体験ですか❓😀
前例がないなら作ればいい!と前向きに突っ込んでいく主人公。これは困難も多そうですが、応援したくなりますね!
今の声優さんはアイドルライブのようなこともしますからね……大変そうです😥
世間知らずな学生と社会人経験者のクラス、どうなるのでしょう。
会社の方がすごくいいですね😊殺伐とした中の清涼剤が優しいおじさま、なんだか素敵です。
おぉー!!✨凛子さんがどのように養成所で活躍していくのか楽しみですね✨☺️
年齢は夢を諦める理由にならないという言葉がいいですね✨前向きで、真摯に夢に向き合っていて、正に凛としていて、凛子という名前もピッタリだなぁと思いました✨☺️