〇昔ながらの一軒家
佐藤のおじいさん「・・てやんでぇ！ エヴァだかエプォパだか知らんが、 宗教の勧誘なんざ帰った帰った！」
神尾 信子「あの、おじいさん・・・！ どうかお話を聞いて・・・」
佐藤のおじいさん「連日しつこいぞ！ 塩まくぞ、塩！」
神尾 信子「うぅ・・・」
神尾 信子「・・・」

〇女性の部屋
神尾 信子「・・どうしよう・・・」
神尾 信子「本音を言うと、あのおじいさんを もう・・・ほおっておきたい・・」
神尾 信子「すぐ怒鳴るし怖いし・・・」
神尾 信子「でも、あの人のためにも 周りの人のためにも 見てみぬふりは出来ない・・・！」

〇昔ながらの一軒家
神尾 信子「佐藤さん、こんにちはぁ〜 エプォパの者です〜」
佐藤のおじいさん「まぁた貴様か！」
佐藤のおじいさん「もっかい塩をかけられたいようだな！ 悪霊退さ・・・」
神尾 信子「待てぇい!!!!!!!!!」
神尾 信子「どうか、私の話を聞いてください・・」
神尾 信子「あなたに、どうしても 伝えたい事があるのです・・！」
佐藤のおじいさん「な・・・なんだよ、改まって・・・」
神尾 信子「‥‥‥‥」
神尾 信子「この際、エプォパとかどうでもいいです」
佐藤のおじいさん「あン?!」
神尾 信子「聞いてください、おじいさん あのですね‥‥‥‥」
佐藤のおじいさん「タバコならやめんぞ!!!!!!」
佐藤のおじいさん「家内のグチでも聞いたのか?! わしがタバコをやめない── と！」
佐藤のおじいさん「わしは、かれこれ50年以上も 吸い続けているんじゃ！」
佐藤のおじいさん「どんだけ値上がりしようが 身体に悪いと言われようが、わしは吸うぞ!!!」
神尾 信子「え‥‥‥」
神尾 信子「それは、勝手にどうぞ‥‥‥？」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥えっ？」
神尾 信子「むしろ、そんな長期間吸っていたのに 急にやめるほうが体に悪いでしょう」
神尾 信子「自由にNOストレスでタバコ吸って 80・90歳まで生きてる人もいますし」
佐藤のおじいさん「そ、そうか‥‥‥」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥」
神尾 信子「えーっと、あのですねぇ‥‥‥」
佐藤のおじいさん「わしは歯医者には行かんぞ!!!!!!」
佐藤のおじいさん「ふん！　歯が抜けようが折れようが 今更、歯医者なぞ誰がいくかっ！」
佐藤のおじいさん「工夫しだいで煎餅だって、食べれるわっ！」
神尾 信子「‥‥‥‥‥」
神尾 信子「それも、別にどーーーーだっていいです」
佐藤のおじいさん「えっ?!?!?」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥‥」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥‥え？」
神尾 信子「え？　だって全く関係ない おじいさんの歯がどうなろうと 知ったこっちゃなくないです？」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥‥」
佐藤のおじいさん「えっとぉ‥‥‥じゃあ‥‥‥‥」
佐藤のおじいさん「本気で何の用で？」
神尾 信子「‥‥‥‥‥」
神尾 信子「‥‥‥あのですね、おじいさん」
神尾 信子「おじいさん、私がこちらに伺った ４日前から‥‥‥‥」

〇昔ながらの一軒家
神尾 信子「塩じゃなくて」
神尾 信子「‥‥‥‥砂糖をまいてます」

〇昔ながらの一軒家
神尾 信子「おじいさんは、私に砂糖をかけています‥‥‥」
神尾 信子「おじいさん‥‥‥ 塩と砂糖を間違えてまいてます‥‥‥」
神尾 信子「‥‥‥足元をよく見てください‥‥‥」
神尾 信子「‥‥‥アリ、めっちゃいません‥‥‥？」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥‥」
神尾 信子「そして、そこに立てかけてあるホウキ‥‥‥」
神尾 信子「多分、あなたがアホみたいに砂糖を まいたあとに奥様が掃除して らっしゃいます‥‥‥」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥‥」
佐藤のおじいさん「いつ、気がついたんだ‥‥‥？」
神尾 信子「‥‥‥２日目、ですかね」
神尾 信子「１日目に“塩”をかけられたその次の日、 またこちらに伺ったら‥‥‥」
神尾 信子「「あれ？　玄関にアリ多くね？」って‥‥‥」
神尾 信子「「もしかして」と思い、その日に かけられた“塩”を舐めてみたら‥‥‥‥」
神尾 信子「‥‥‥‥あぁ‥‥‥‥‥」
佐藤のおじいさん「‥‥‥‥」
神尾 信子「‥‥‥おじいさん」
神尾 信子「ボケ防止も兼ねて、お料理を始めた方が よろしいのでは‥‥‥？」
神尾 信子「料理に慣れれば、指触りだけで 塩と砂糖を見分ける事も可能ですよ」
佐藤のおじいさん「‥‥‥ふふ」
佐藤のおじいさん「料理か‥‥‥言われてみれば、 家内に任せてばかりだったな‥‥‥」
佐藤のおじいさん「料理、するか‥‥‥」
神尾 信子「本音を言えば、とっととボケてくれた ほうがエプォパ勧誘もチョロそうで いいんですけどね」
　　次の日、普通に勧誘に行ったら
　　ちゃんとしっかり“塩”をかけてもらいました。