心優しき駅(脚本)
〇渋谷駅前
梨央「はあ・・・」
梨央「なんで渋谷って、いつ来ても こんなに人が多いんだよ・・・」
梨央「さっさと用事済ませて帰ろ・・・」
〇レンタルショップの店内
梨央「よっし!」
梨央「無事に限定版のDVD買えた!」
梨央「午後は家でダラダラしながら これを見ようっと」
〇公園通り
梨央「えっと、駅はどっちだっけ・・・」
〇公園通り
???「なんで来ないの!?」
???「私のこと、嫌いになったの??」
〇公園通り
梨央「痛っ!!」
梨央「急に頭痛が・・・」
梨央「何だ今の記憶・・・??」
梨央「しかも、いつの間にか顔が濡れて・・・」
梨央「いや、俺、・・・泣いてるのか?」
〇渋谷駅前
〇渋谷駅前
梨央「・・・っ!! まただ!」
梨央「はっ!?」
梨央(なんで俺・・・ 交差点の真ん中にいるんだ!?)
梨央(公園通りにいたはずが・・・)
〇渋谷の雑踏
梨央(し、信号が青だ・・・ 俺も渡らないと・・・)
梨央(やばい、人酔いってやつか?)
梨央(クラクラして意識が・・・)
カリン「寝ちゃだめよ」
梨央「へ??」
カリン「走って」
突然現れた少女は俺の手を取り、
交差点から逃げるように走り出した
無意識に俺は、
体にまとわりついた
得体のしれない"何か"から引き離してくれたのだと感じた
〇モヤイ像
梨央「ハァ、ハァ・・・」
カリン「大丈夫?」
梨央「う、うん」
梨央「なんだかよくわからないけど、 助けてくれたんだよな・・・?」
梨央「なんだったんだ、さっきの・・・?」
梨央「俺、さっきCDショップから出てきたばっかりで、交差点付近に居なかったのに 気付いたらあそこに・・・」
カリン「あそこが、 渋谷駅の”口”に一番近い地上だから」
カリン「誘われてしまったのよ、駅に」
梨央「・・・は?」
カリン「駅が人間を欲してるの」
カリン「恨みとか悲しみの念が集まって いつしか人を取り込む生き物のようになってしまった」
梨央「な、何を言ってるのか、さっぱり・・・」
カリン「そういう場所って、ここだけじゃなくて 世界中にあるの」
カリン「渋谷は、 待ち人が来ない人たちの想いが強いみたい」
カリン「さっき、他人の記憶が見えなかった?」
梨央「そういえば・・・ 女の子の記憶が見えて、」
梨央「「なんで来ないの?」とか、 言ってたな」
梨央「何故か俺、泣いてたし・・・ すごく、悲しい気持ちになった」
カリン「その記憶の子の待ち人が、 きっと、あなたに似てたのね」
カリン「もしくは、ただ単に情に脆そうだから ターゲットにされたのかも」
梨央「もう、何が何だか・・・」
カリン「・・・!!」
カリン「まずい、他にもターゲットが決まったみたい・・・」
カリン「あなた、タクシーとか拾って ここからすぐに立ち去りなさい」
カリン「無事に帰れるといいわね」
梨央「え、ちょっと!!」
梨央「い、行っちゃった・・・」
梨央「何だったんだ・・・?」
梨央「すぐそこに駅の改札があるのに、 タクシー拾えって?」
梨央「変な事言うな 高いから電車で帰ろ・・・」
〇改札口
ピッ
残額:428円
梨央「よし、最寄りまでギリギリ足りるな」
〇地下に続く階段
ホームへ向かおうと顔を上げると
どこかの地下へつながる階段に居た
梨央「え?」
後ろを振り向くと、
通ってきたはずの改札は無く、
コンクリートの壁だった
梨央「な、なんだよこれ・・・」
ようこそ
梨央「うわっ!?」
梨央「ど、どこから声が・・・」
ああ、ごめん
相手がいないと話しにくいよね
人間だもんね
梨央「き、君は・・・」
???「ようこそ」
???「僕は渋谷。 正確には渋谷駅、だけど」
???「駅って着けると、名前っぽくないだろう? 渋谷って呼んで欲しいな」
梨央「ちょ、ちょっと待て、駅?? 外見と口調がマッチしてないし・・・ 女?男?」
???「そうなのか? 人間のそういうキマリゴトはわからないんだ」
???「この見た目の女の子が、 君を待っていたから わざわざこの入れ物にしたんだ」
梨央「い、入れ物・・・?」
梨央「何言ってるのかさっぱりわからないけど、 とにかく俺を、家に帰らせてくれ ここはどこだよ!?」
???「ここ? そうだな、君にわかりやすく説明すると、ここは・・・」
???「スクランブル交差点のド真ん中の、下。 かな?」
〇モヤイ像
カリン「あそこが、 渋谷駅の”口”に一番近い地上だから」
〇地下に続く階段
梨央「まさか・・・!?」
???「と言っても、物理的に掘っても出てくる場所じゃないけどね」
???「僕はこの場所で、人間たちの悲しみを癒したり、恨みを晴らすために 協力してあげてるんだ」
???「自分で言うのもなんだけど、 心優しい、意志を持った駅なんだ」
???「さて、君をここに招いた理由だけど」
???「君はもう、この子の記憶を見たから、 わかってるよね」
???「可哀想だと思わない? この子の欲を満たしてくれるよね?」
梨央「い、意味が分からない」
???「君を待ってるんだよ。 寒空の下、凍えながら、泣きながら、待っているんだ」
梨央「俺はその子とは知り合いじゃない」
梨央「さっき水色の髪の女の子から聞いたんだ。 俺はただの代わりにしかならない」
???「ああ、あの水色か・・・ まだこの辺でウロウロしてるんだね・・・」
???「アレの言うことはデタラメだよ なんにもわかってないんだから。 聞く必要はないんだ」
梨央「俺はほんとに、その子とは無関係だ! 人違いだよ!」
梨央「俺をここから出してくれ!」
???「はぁ・・・ あの水色と遭遇している時点で、ダメか」
???「君も優しくないんだね 君が受け入れてくれないと、この子は、永遠に待ち続けないといけないのに」
???「じゃ、もういいよ」
梨央「もういい・・・ってことは、 俺を逃がしてくれるのか?」
???「本来なら、ね。 でも君は特別」
代わりに、僕がいただくね
梨央「・・・ッ なんだ、また頭痛と眩暈が・・・」
身体がパタリと動かなくなり、
俺は意識を手放した
〇渋谷のスクランブル交差点
カリン「あの人、昼間の・・・?」
カリン(なんでまだこんなところに・・・ 髪染めたのね。意外な色だわ)
カリン「無事なら、いいか」
渋谷「この入れ物なら、 きっと人間のキマリゴトに即してる、 はずだよね?」
展開がなかなか読めずハラハラしながら読み進めておりました😌
金額が「428(しぶや)」円で芸が細かく、
知らない女の子にタクシーって言われても確かに
「高いしな」って思っちゃうよねと同情しました🤦♀️笑
ホラーな渋谷好きです…!
若干事情通な子がいるけど男の子は助からなかったですね……
渋谷駅…いや世界中の駅にいるかもしれない!
駅使うときに思い出しそう!笑
乗っ取った後の元の人格はどこへいってしまったんだろう…次のターゲットのためのエサになるのでしょうか…?