ヴィルペイン

ウロジ太郎

Ep.3 / THE ELUSIVE NIGHT WATCH #3(脚本)

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〇街中の公園
  8年前
  ちーちゃんは、僕らの前に突然現れた。
根須戸智是「ねぇねぇ。いーれて!」
久常紫雲「やーだよ! おまえ誰だよ! この辺の奴じゃないだろ。よそ者か?」
根須戸智是「私は・・・えっと、そうだ」
根須戸智是「ちぜ!」
久常紫雲「名前聞いてねーし!」
根須戸智是「なにする? いつもみたいに、ヒーローごっこがいいな!」
久常紫雲「なんで知ってんだよ!」
根須戸智是「いつも見てたから。こっそり」
久常紫雲「ストーカーかよ!」
根須戸智是「じゃあ私、悪の女幹部やるね!」
久常紫雲「だからやんねーって! 話聞け!」
根須戸智是「オーッホッホッ!」
根須戸智是「おろかなりヒーローども。 すべては計画通り!」
根須戸智是「世界中のコンピューターはわらわのものとなった!」
久常紫雲「いや、だから! あの、ちょっと?」
辻崎美結「・・・・・・」
辻崎美結「ああ大変! 世界中が大混乱よ!」
久常紫雲「あ、こら、美結! 勝手に」
根須戸智是「いまや世界は、わらわのもの!」
  歩(あゆむ)が困ったように僕を見る。
御子柴歩「しゅーちゃんの負けじゃないかな・・・」
久常紫雲「歩まで!」
久常紫雲「・・・1回だけだからな!」
久常紫雲「悪の女幹部、そんなことはさせないぞ!」
御子柴歩「・・・さ、させないぞー」
根須戸智是「ならば、かかってくるがいい! ヒーローども! だが、むだなあがきよ!」
久常紫雲「それはどうかな! みんないくぞ!」
御子柴歩「おーっ!」
  その日から彼女。
  どこの誰ともわからない不思議な女の子。
  ちーちゃんは毎日のように、僕らと公園で遊ぶようになった。
根須戸智是「しゅーちゃん、その、ありがとう。 明日も遊びに来て、いい?」
久常紫雲「お、おう! 好きにすればいーじゃん? 別に?」
  あぁ。我ながらチョロい。
  でも、そんな日々は、長くは続かなかった。

〇街中の公園
  ちーちゃん演じる悪の女幹部が、美結の喉元に手刀を突きつけて叫んだ。
根須戸智是「ヒーローども! この娘の命が惜しければ、降伏するのだ!」
辻崎美結「たぁーすぅーけぇーてぇ~~」
久常紫雲「美結! いま、助けるぞ!」
根須戸智是「動くな! 指一本でも動かしてみろ。 この娘は死ぬぞ!」
久常紫雲「くっ! ひきょうな!」
御子柴歩「しゅーちゃん・・・どうする?」
久常紫雲「でも指一本、動かせないんだろ?」
「・・・・・・」
久常紫雲「ちーちゃん。これ、詰んだかも」
根須戸智是「そうかも。 ここで私が正義の心に目覚めるとか、だめかな」
根須戸智是「実は悪の組織に捕らわれて、今まで洗脳されてたとか」
辻崎美結「・・・・・・」
辻崎美結「ちょっと、苦しいと思う」
根須戸智是「だよね」
  そのとき街頭スピーカーから音楽が流れだした。
  ちーちゃんはハッとして、美結を解放した。
根須戸智是「・・・あ。夕焼け小焼け」
根須戸智是「私、今日はもう時間切れ。 続きは、また今度ね」
久常紫雲「えっ。今の状況から!?」
辻崎美結「ばいばい! ちーちゃん」
御子柴歩「・・・うん。さようなら。ちーちゃん」
久常紫雲「お、おう、じゃあ、また明日!」
根須戸智是「あ。うーん。実は明日、ちょっと」
久常紫雲「なに。どうしたの?」
根須戸智是「明日から何日か、来れないかも・・・」
久常紫雲「なんだよ。それ」
御子柴歩「・・・お家の都合?」
根須戸智是「そんなところ。ちょっと、厄介で」
御子柴歩「お家の都合じゃ、仕方ないよね」
根須戸智是「うん。ごめんね?」
久常紫雲「つまんねーの」
久常紫雲「じゃあその代わり、今日はちょっと遅くまでとか、どう?」
久常紫雲「ちーちゃん、いつも時間厳守じゃん」
根須戸智是「・・・そうしたいけど、だめ」
久常紫雲「じゃあ明日は、ちーちゃんの家に遊び行く!」
久常紫雲「この近くだろ? どのへん?」
根須戸智是「えっ。それは、その」
久常紫雲「今日送ってくから、案内してよ! ほら、行こうぜ!」
  僕はちーちゃんの手をとった。
根須戸智是「絶対だめ!」
  でもその手は、強引に振り払われた。
久常紫雲「な、なに。 僕に家に来てほしくないって、そういうこと?」
根須戸智是「そう、いや、ちがう!」

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