ヒステリック・ヒストリー

ラム25

第30話 2043年 C世界(脚本)

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〇教室
鳥居「と言うわけでアントニウスはカエサルの最も信頼が深い武将だったが、実際にカエサルが指名したのはオクタヴィアヌスだったんだ」
鳥居「アントニウスは後継者になりたい。しかし元老院の支持はオクタヴィアヌスにあった」
生徒「先生、その話教科書に載ってませんがテストに出るんですか?」
鳥居「いや、出ない。 この辺はノートを取らず聞いてくれるだけでいい」
生徒「点数にならないこと勉強して意味あるんですか?」
鳥居「まあ聞いて。 そして敵わないと悟ったアントニウスは同じく武将のレピドゥスを仲介に第二回三頭政治を組むんだ」
鳥居「しかしレピドゥスはオクタヴィアヌスにより失脚、アントニウスはクレオパトラと連合し戦いを挑むが・・・」
鳥居「・・・オクタヴィアヌスが勝利する。アクティウムの海戦だ。 ここはテストに出るぞ」
鳥居「こういう風に何故そうなった、から教わった方が理解も進むし覚えやすいんじゃないかな?」
生徒「・・・確かに」
鳥居「みんなに分かって欲しいんだ。 歴史は暗記をする科目じゃなく過去を理解する学問だと」
生徒「わかりました」
生徒「先生、いつもみたいに面白い話してくださいよ」
鳥居「面白い話? アウグストゥスとイエスは同時代に生きたと言われている」
鳥居「同じローマの地でアウグストゥスが栄華を誇る一方でイエスは貧しく教えを説いていたんだ・・・」
生徒「他にもありますか?」
鳥居「・・・後はイエスの死後復活の真相を知ってるよ。 あれはね・・・」
  そこへ鳴るチャイム。
  学生だった頃は早く鳴って欲しかったが教鞭を握るとなるとあっという間に感じる。
  緋翠との旅で歴史に興味を持つようになった俺は数学の才能を捨て、教職の道へと歩んだ。
  俺の歴史の授業は教科書に載っていない話も多いが、生徒たちの成績はすこぶる良かった。
  特に俺のヨーロッパ史の物語仕立ての授業は好評で、歴史の授業に定評のある教師として話題になり、歴史職人なんて呼ばれている。
生徒「あー、先生残念そう」
鳥居「・・・はは。 今回はここまで。次は共和制ローマから帝政ローマに移るから復習を忘れないように」
  授業が終わると、生徒達が歩み寄ってくる。
生徒「先生、死後復活の真相ってなんですか?」
鳥居「あぁ、それは・・・次回教えるよ」
生徒「えー! 今教えてくれないんですか!? 先生のおかげで歴史好きになったのに嫌いになりますよ!」
鳥居「楽しみは取っておくものさ。 そうだ、やっぱり100点取れた子に教えるとするよ」
生徒「酷い-!」
  生徒たちと笑いあう。
  俺も随分変われたと思う。
  これも彼女のおかげだろう。

〇おしゃれなリビングダイニング
鳥居「ただいま」
琥珀「お父さん遅い! 十字固めの刑!」
鳥居「はは、勘弁してくれ。 お土産あるから」
琥珀「ほんと!? 大好き!」
鳥居「現金な子だな・・・」
  緋翠とは似ても似つかぬこの子は琥珀。
  琥珀色の瞳をしていることからこの名前にした。
  性格はどこか似ている。
妻「あなた、今日もお疲れさま。 疲れたでしょう」
鳥居「あぁ、君がいるから頑張れるんだ」
琥珀「君が? 私はどうなのよ」
鳥居「琥珀は疲れるからなあ」
琥珀「もう、お父さんなんて知らない!」
  そっぽをむく琥珀。
  まるでかつて旅をしたあの子のようだった。
  ・・・俺はダイヤルを回した。
  そして世界はディストピアになった。
  その度に辛い思いをして歴史を修正してきた。
  でも彼女のお陰で何度も絶望しながら立ち直り、遂に平和な世界へと到達できた。
鳥居(後は緋翠、君に幸せになってほしかった)

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