賽銭を奪おうとする男(脚本)
〇古びた神社
ある夜、人気が無くなった暁月寺に
怪しい人影が現れた
人物「・・・」
人物「・・・っ」
男は、賽銭箱に手をかけ、
手に持っていた斧を振り上げた
静かに行われようとしていた犯行は
暁鈴の耳にも感じ取れた
暁鈴(はっ)
暁鈴(何たる不届き者)
人物「うおっ!」
皇樹「うっぐっ・・・!」
暁鈴が止めに入る前に、寺の軒下から
引きずり出てきたのは、皇樹だった
皇樹は相手の片足首を掴み、
斧を振り落とす動きを食い止めた
人物「はなせっこのっ!」
皇樹「うあっ」
皇樹「いっったぁ・・・」
暁鈴(あやつ・・・)
暁鈴(賽銭を護ったのか?)
暁鈴(・・・・・・だが)
暁鈴(なぜこんな夜更けに軒下に居たのだ?)
〇古びた神社
翌日──
暁鈴(枯れ葉が多いな・・・)
参拝者E「・・・はぁ〜」
暁鈴「ん?」
参拝者E「すぅ──」
参拝者E「すみません!」
暁鈴「おっ」
参拝者E「俺、昨夜賽銭を盗みに来た者っす!」
参拝者E「ほんの、欲深さで罰当たりなことを」
参拝者E「本当に、すみません!」
暁鈴(賽銭泥棒というやつか)
暁鈴(まあ、何も盗まれちゃいないが)
暁鈴(これほどまで礼儀正しく謝りに 来られるとは、律儀な泥棒だな)
暁鈴は思うことがあるものの
いつものように無言で首を横に振った
とんでもない、ご丁寧にありがとう
という敬意を示した行動だった
参拝者E「あのっ、そんな前科があって 頼むのも変な話なんですけど」
参拝者E「俺、宝くじに当選したいんす!」
参拝者E「だからっどうか!当たりますように!」
参拝者E「これは、せめてもの願いっす!」
参拝者E「お願いしますっ!」
参拝者E「あ、そうだ」
参拝者E「運試ししようかな・・・」
男は、おみくじを引いたが
その場で広げなかった
家に帰ってから熟読する派の
人間なのだろう
暁鈴「おみくじの中身は、凶だ」
暁鈴「ラッキーアイテムは風船」
参拝者E「え?しゃ、しゃべれたんすね」
参拝者E「あの!お願いします!どうか俺の願いを 必ず叶えてください!」
暁鈴「馬鹿も休み休み言え!」
暁鈴「もう忘れたか?窃盗を頓挫されたことを」
暁鈴「詫びだけでは済まないのだぞ?」
暁鈴「そんな者に、福は来ん!」
〇オレンジ(ダーク)
参拝者E「はあ・・・」
参拝者E「どうしたらいいんだよ、兄ちゃんの借金」
参拝者E「俺が連帯保証人になってるから すぐに返さねえと・・・」
参拝者E「・・・くっそ」
参拝者E「どうしたらいいんだよぉ・・・ あああーーーーーーー!」
犬「ワン!」
参拝者E「っ?」
参拝者E「なんだ、散歩犬か・・・」
参拝者E「あ、そういや昔、バルーンアート 興味本位で練習したけっか」
参拝者E「ラッキーアイテム、風船だったよな」
参拝者E「うん」
〇古びた神社
暁鈴「・・・」
参拝者E「ありがとうございました!」
暁鈴(っ!なんだいきなり・・・)
参拝者E「俺、うまくやっていけそうです!」
参拝者E「実は俺バルーンアートの経験があって あの、犬とか作れるやつ」
参拝者E「あれを作ったら公園の子どもたち大人気で 作って作ってって、親御さんからも!」
参拝者E「あと、snsに載せたら プチバズりしてまして」
参拝者E「だから、宝くじが当たらなくても やりがいのある稼ぎができました!」
参拝者E「ここで願ったおかげです! 本当にありがとうございました!」
暁鈴(・・・)
参拝者E「それじゃ!」
暁鈴「凶が出ても、喜ぶ者がいるのだな」
暁鈴「フン」
今回は始終ツンツンした(←当然の展開ですが)ご様子の暁鈴様、それはそれで可愛いなーと思ってしまいました!
そして、宝くじ当たりたいです……