ヒステリック・ヒストリー

ラム25

第27話 1791年 作戦(脚本)

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〇城の客室
フェルセン「大丈夫か? 一晩で随分やつれたが」
鳥居「・・・あぁ」
フェルセン「あの後アントワネット様にお会いしたがお逃げする意志は無いそうだ・・・.」
  それを聞き俺の心が揺らぐ。
  そうだ、アントワネットとヴェルサイユ宮殿へ逃げ、なんとか革命も成功させよう。
  そして俺は手段が浮かんでいるわけでもないのに、ふらふらとアントワネットのもとに向かった。

〇貴族の応接間
  アントワネットは一晩で様子の変わった俺を見て一瞬驚くも、すぐに笑みを浮かべた。
鳥居「なあ、アントワネットさん、やっぱり逃げよう。 どうせ絶望しか待ってないのなら少しでも希望のある方に向かおう」
アントワネット「それは出来ません。 あなたのおかげで逃げないことが責務だと思えたのですから」
鳥居「なんでだ? 希望を追ってこその人生じゃないか」
アントワネット「安易に目先の希望に縋る・・・ それは現実逃避です」
鳥居「!」
アントワネット「確かに逃げなければ王政は廃止されるかもしれない。 下手したら逆上した民衆に命を狙われるかもしれない」
アントワネット「しかしそれでも新たな希望に向かっているのです。 絶望の先へも希望があると信じて駆けていける・・・それが人間の強さです」
鳥居「新たな、希望・・・」
アントワネット「絶望しかないときがありましたか? どんな時も希望があったはず。 思い出して、これまでを・・・」
  思い出すのは緋翠と初めて出会ったときのことだった。
  酷く困惑したけど、何故か抵抗なくコミュニケーションが取れて・・・
  それでダイヤルを回そうとしたら謎のメッセージが流れて・・・
  ん?メッセージ?
  確かこのダイヤルは歴史に作用する劇薬だ、というものだったか。
  おかしい。
  何故そのメッセージが頭の中にあるんだ? 記憶を消去されるならそんなメッセージないはずだ。
  それにダイヤルを回すとき嫌な予感・・・デジャブがあった。
  これも前の世界の記憶では・・・?
  PCなどのメモリーに記憶の完全消去はあり得ない、実は復元できる。
  それと同様に記憶がこびりついているのでは・・・?
  俺は緋翠が語ったA世界の内容を思い出しながら考える。
  A世界は・・・・・・ヒスイが死ぬ事で狂う世界、ここB世界はダイヤルというイレギュラーによって生まれた世界。
  そしてA世界とB世界をグルグルとループしている。
  ここで緋翠という存在が大きな意味を持つ。
  おそらく緋翠に関するデジャヴが無かったことからこれまでは俺一人で繰り返しており、ヒスイが生まれたことは無かったのだろう。
  しかし奇跡的にこのループに限りヒスイが生まれた。
  そして次の世界でイレギュラーの、緋翠に関することを思い出せば・・・
  ・・・俺はディストピア回避に向けて行動できるかもしれない。私というイレギュラーを忘れないで、とはそういう意味なのだろう。
  次の世界でハッピーエンドを迎えるにはアントワネットを1791年6月20日に逃げさせる。
  さらに時間をA世界に戻らないようにし、ループを終える。
  そして次の世界で記憶を取り戻し、ヒスイの死を防ぎディストピアを阻止する。
  この3つを俺一人で成し遂げる必要がある。
  これまでの推論は大して根拠もないし、ループの停止はやり直しが出来なくなることを意味する。
  記憶が戻らない可能性も高い。無謀な賭けだと思う。このままフランスで暮らした方が幸せかもしれない。しかし俺は賭ける。
鳥居「ありがとう、アントワネットさん。 俺、決心がつきました」
アントワネット「お力になれたのなら幸いですわ」

〇城の客室
  俺は部屋に戻る。図らずもアントワネットに救われた。
  ふと、ノックが響く。
フェルセン「失礼する。君が心配で顔を出したんだ。大丈夫か?」
鳥居「あぁ、バッチリだ。フェルセン、今日は何年何月何日だ?」
フェルセン「1791年6月19日だが・・・」
  思った通りの日付だ。
  明日アントワネットに逃げてもらう必要がある。
  俺は脳内でアントワネットを逃げさせる算段を立てる。
  俺を励ましてくれたアントワネットを死に追いやらねばならない。
  辛い役目だった。
鳥居「・・・よし、フェルセン。作戦会議だ」

次のエピソード:第28話 1791年 逃亡

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