第25話 2023年 永遠の別れ(脚本)
〇ホテルの部屋
緋翠の方を見ると机に突っ伏して眠っているようだった。疲れているのだろう、そっとしよう。
ダイヤルの針はまだ2だった。1日では3まで復元する事が出来なかったのだろう。
ふと、テーブルに手紙が置かれているのに気付く。
鳥居へ
その手紙を見て無性に嫌な予感がした。緋翠が手紙を残すなんてらしくないからだ。
慌てて緋翠を起こそうとしてすぐに異変に気付く。
──冷たい。
馬鹿な、俺は慌てて脈をるが・・・脈はない。呼吸もしていない。
ヒスイは眠ったように・・・機能停止、いや、死んでいた。
鳥居「あ、あああ、ああああああああああああああ!!!」
俺は訳もわからず呻き、泣いていた。だっておかしいだろう、一緒に平和な現代に帰るんじゃなかったのか。
なんで一晩で・・・?
ただ純粋に悲しくて、意味がわからなかった。
俺はしばらく何も出来ず、ヒスイを抱きしめて泣いていた。
しばらくして涙も枯れた頃また手紙が目に映る。
俺はそれを取り、読む。
緋翠「鳥居へ」
緋翠「まず最初にごめんなさい。謝らせて」
緋翠「わたしはデータをコピーすれば良いと言ったけど本当は移植しなきゃ駄目だったの」
緋翠「さそれほどダイヤルに宿るAIは擦り切れてた。 更に二回回せるようにはなってるはずだけど、本当にごめんなさい」
緋翠「でもこれまでの冒険は、出会いは決して無駄ではなかったはず」
緋翠「わたしは使命を果たせないからあとは鳥居、あなたに全部任せた! なんて丸投げだけどあなたは本当に弱くなんかない」
緋翠「わたしも本当は不安でしょうがなかったけど何度も助けてもらったもの」
緋翠「あと好きって、言ってくれたよね。でも、これは叶わない願いだから・・・あえて振らせてもらうわ、ごめんなさい」
緋翠「鳥居、わたしは楽しかったわよ。 あとは絶対元の世界に戻ってハッピーエンドにしなさい! 以上!」
鳥居「緋翠・・・はは、相変わらず強引だ・・・ちゃっかり振られてるし・・・・俺も、楽しかった。昨日はああ言ったけど、楽しかった」
鳥居「でも君がいてくれたから楽しかったんだ・・・俺一人じゃ楽しくないよ・・・」
俺はまた一人で啜り泣いていた。
そしてもう一度眠りについて目が覚めた時決心した。
自らを犠牲にして俺を助けてくれたヒスイのためにも元の世界に帰ると。
緋翠は俺に賭けてくれたんだ。
だったらフルハウスで、いや、ロイヤルストレートフラッシュで返そうじゃないか。
俺の中で闘志が燃えていた。
今の俺ならコミュニケーションも怖くない。人が怖くない。
それより緋翠の期待に応えられない方が怖い。
俺は緋翠の手紙をポケットにしまう。
ダイヤルのパーセンテージは100%。
俺はダイヤルの針をを2から1に合わす。
カチリッ
今度こそ、俺はアントワネットに、フェルセンに断るんだ──!