救命王子

山本律磨

波(脚本)

救命王子

山本律磨

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〇海
砂原「・・・ふう」

〇海岸の岩場
砂原「ん?」
海斗「こんにちは」
砂原「はーい。見回りごくろーさーん」
海斗「この辺りは気をつけて下さい」
砂原「波が強いから鍛えるには丁度いいんだよ」
砂原「それよりアンタも色々大変だな」
海斗「昔の話です。気にしてません」
砂原「チヤホヤされて調子にのってっから足もとすくわれんだよ、王子様」
海斗「ははっ。気をつけます」
砂原「・・・」
海斗「何か?」
砂原「ちょっと付き合え」
海斗「え?」
砂原「・・・」
海斗「あまり時間ないけど。まあ、ちょっとなら」
砂原「女子か」

〇断崖絶壁
砂原「どうよ。ここ」
海斗「どうよって・・・危ないとしか」
海斗「ここ、立ち入り禁止区域じゃ」
砂原「観光客(よそもの)にはな」
砂原「今日は大丈夫だ。ここいらは、晴れてりゃ波も静かだし」
砂原「見える?あの岩と岩の間、深くて静かな所」
砂原「黒くなってる場所」
海斗「まさか」
砂原「あそこ目がけて飛び込むんだ」
海斗「やっぱり」
海斗「南国の部族じゃあるまいし」
砂原「俺ら地元のガキはここに飛びこんで一人前の男になるんだ!」
海斗「だったら砂原君たちの代で止めた方がいいですよ」
海斗「それじゃ、見回り戻るんで」
砂原「アンタなら余裕っしょ」
海斗「どうでしょう」
砂原「え?怖いの?」
海斗「海はどこも怖いものです」
砂原「ふん。スカしやがって」
海斗「ちょ、ちょっと。本当に危ないですよ!」
砂原「救命王子だか海の守護者だか知らねえが、お前らがいなくなったって、充分日ヶ岬は俺達だけで守っていけるんだよ」
砂原「その為に・・・」
砂原「その為に俺はいつもこうやって!」
海斗「さ、砂原君!」

〇海

〇海

〇断崖絶壁
海斗「・・・」
海斗「砂原君・・・?」
  『そうだ海斗』
  『また助けられなかった』
  『なぜならお前は何も変わっちゃいない。お前は・・・』
海斗「ずっと俺のままなんだからな」
海斗「だ、黙れ!」
  『おーい』
  『おーい!王子様ー!』

〇海
砂原「おーい!ひゃはははは!」

〇断崖絶壁
海斗「・・・」

〇海
砂原「な、必要ねーんだよ。お前なんか・・・」

〇断崖絶壁
海斗「・・・」
  続く

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