ヒステリック・ヒストリー

ラム25

第11話 800年 リベンジ(脚本)

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〇ヨーロッパの空港
緋翠「はぁっ・・・はぁっ・・・」
鳥居「大丈夫か?」
緋翠「え、えぇ。ダイヤルを回してちょうだい」
  肩で息をしているその様は平気には見えなかったが、俺は少し休んでからダイヤルの針を6から5へ合わせた。
  カチリッ
  不快なめまいがし、意識は遠くへ・・・

〇農村
鳥居「ここは・・・ 帰ってこれたか・・・」
緋翠「中世ヨーロッパ・・・フランク王国、よね」
鳥居「今回することはポールに殺させない、だ」
緋翠「えぇ。作戦も練ったから大丈夫よね」
鳥居「・・・だが、なにより優先すべきは領主だ。 領主だけは助けなくてはならない。 たとえポールを犠牲にしてでも・・・!」
緋翠「・・・いえ。絶対にみんな助けましょう!」
騎士「君たち、我が荘園にご用かな?」
  前回と全く同じ様子で領主が現れ、そのまま馬車で館まで連れて行ってもらう。

〇後宮の一室
領主「君たちにはワインは早かろう、ハーブティーを用意した」
  相変わらずミントの香りは清涼感があり心地良い。
  上質なハーブを使っているのか、農奴の努力の賜物か。
領主「それで君たちはどんな国から来たのか聞かせて貰いたい」
緋翠「・・・私たちの国はね、身分がなくて人々は平等なの」
領主「身分が無い? おかしな国だな。 それで国が成り立つとは思えん」
緋翠「いえ、成り立つわ。 あなたには分からないかもね」
領主「だが身分は秩序を産むために欠かせない物だ。 この荘園も私が上に立つから成立しているのだよ」
領主「さもなければ彼らは奪い合いになりたちまち崩壊するだろう」
緋翠「どうかしら? 手を取り合って上手いことやれるかもね」
領主「だが彼らは支配されることを望んでいる。 なぜなら耕す以外に生きる術を知らないからな」
緋翠「それは自由がないからでしょ! 自由でさえあれば話は別よ」
  確かに中世後期では都市が発展し、農奴の多くが都市へ逃げる。
  多くの農奴が都市に定住する事が騎士の、領主の没落を招く。
領主「・・・私は寝るよ、失礼した」
  そう言い背を向ける領主。
  気分を害したらしい。
緋翠「もっと言ってやりたかったわ」
  だがこの時代の価値観では領主は間違っていない、いや、むしろ正しいのだ。

〇後宮の一室
  ノックが響く。
  領主だろう。
領主「失礼する。私はこれから荘園に行ってくるが君たちは寛いでいて欲しい」
緋翠「悪いから私たちもついて行くわ」
領主「そうかね?まあいいが」

〇牢獄
  そして前回同様馬車に乗り、それから領主が収穫の少なさに激昂し、ポールに鞭打ち30回が言い渡され、助けに行く。
ポール「ほ、本当に罰せられないのか!? 領主さまもついに僕の価値に気付いたか?」
緋翠「えぇ、もう大丈夫よ、ポール」
ポール「ありがとう。改めて自己紹介すると、僕はポール。無知だからか鞭に好かれていてね、やれやれ」
  前回と全く同じ様子で自己紹介するポール。
  やはり死んで欲しくないと改めて思う。
ポール「よかったら今晩は僕の家に来てくれないか。大したもてなしは出来ないが礼をさせてほしい」
  そしてポールの家に向かう。

〇暖炉のある小屋
  そして野菜と豆のスープと固いパンと大麦粥を食べる。
  やはりお世辞にも美味しいとは言えない。しかしありがたく頂いた。
ポール「ソフィア、料理上手だろ? 結婚が待ち遠しいぜ!」
  待ち受ける運命も知らずにポールののろけ話が始まる。
ポール「僕は領主様の手のひらの上で踊ってばかりだがソフィアの心を躍らせる、それが僕の生きる意味だと思ってるんだ」
ソフィア「ポールはセンスはダメダメだけどいざって時にはやる人なんですよ!」
  二度目ののろけ話でついあくびをしてしまうと、ソフィアが気を遣ってくれて今日は休むことになった。

〇農村
  そして、翌日は再び水やりを手伝う。
  現代ならホースで一斉に水をやれるがこの時代はゴムがない。
  不便な時代だ。
  そして・・・
ポール「やった。・・・やったぞ! 遂に結婚税が貯まったぞ!」
緋翠「いえ、まだ結婚しない方がいいわ。 領主には初夜権がある」
ポール「そんな、じゃあどうすれば・・・」
緋翠「私たちに任せて」

〇後宮の一室
  そして領主の館へ訪れる。
  勝手に留守にして怒ってないかが気がかりだった。
領主「客人? どこに行っていたんだ?心配したよ」
  怒ってはいないようだ。
  そういえば前の世界でも同じ事を言っていた。
  本心らしい。
  農奴への扱いさえまともなら常識人と言えるのだが・・・
緋翠「ちょっと農奴の様子を見てたの」
領主「農奴の? 見ても楽しい物ではないと想うが」
緋翠「そこで頼みがあって。 ポールって農奴を農奴の身分から解放してあげて欲しいの」
  領主はポールがソフィアの夫になる人物だと知らない。
  だからポールを農奴から解放すればいい。
領主「済まないがそれはできない。 釈放金を払って貰う契約なのだよ」
緋翠「釈放金・・・これじゃ足りない? ポールが貯めたの」
  そう言いポールが貯めた結婚税を見せる。
領主「あの男が? だがこれしきでは到底足りんな」
緋翠「アジアへ帰ったらこれを交易品としてスパイスと交換して欲しいと思うんだけど」
領主「スパイス・・・!」
  中世ヨーロッパではスパイスはとてつもない貴重品だ。
  胡椒が同量の金と交換されていたエピソードは有名だろう。
領主「・・・分かった。契約書に書こう。 その収穫物は交易が終わるまで私が預かっておくよ」
  そう言い筆を走らせる領主。
  この時代は紙も貴重品だ。
  相当な効力を発するだろう。
領主「あぁ、しかしなぜポールを? 奴は足手まといにしかならないと思うが」
緋翠「・・・彼は友人だからね!」
  首を捻る領主から契約書を貰う。
  内容は読めないが、紙を無駄にするような真似はしないだろう。
  こうして交渉は予想以上に順調に終わった。

〇暖炉のある小屋
緋翠「ポール! 聞いてちょうだい! あなたを農奴の身分から解放したわよ!」
ポール「え、本当か!? でもせっかくなのに申し訳ないが僕は耕す意外のことを知らない。 ここで働き続けるつもりだ」
緋翠「でもこれで結婚税も払わずに済むし初夜権だって使われない。 安心して結婚できるわ!」
ポール「本当か・・・ついにソフィアと・・・」
  喜びを抑えきれずに泣き出すポール。
  なんにしろ良かった。
  ただ前回はこの日に領主が現れたため1日延期して貰った。
  こうして俺達はこの時代でやれることをやった。

〇綺麗な教会
「汝健康の時も病めるときも富めるときも貧しき時も、これを愛し敬い慰め遣えて共に助け合い、永久に節操を守ることを誓いますか?」
ポール「誓います!」
  ポールは決意を持ってそう宣言する。
  そして二人は口付けを交わそうとし、式場の盛りあがりはピークに達する。
  その時だった。
領主「──邪魔するよ」

次のエピソード:第12話 800年 ただ起きただけの奇跡

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