第9話2023年 暗い未来(脚本)
〇ヨーロッパの空港
鳥居「ここは・・・?」
広がる光景は近代的だが、どこか、違う。
そんな違和感を抱いた。
緋翠は通りがかった女性に話しかける。
緋翠「すみません。ここはどこですか?」
女性「え? あなたたち、チップは?」
チップ・・・何か聞くにもそれが必要なのか。
そして財布を取り出そうとすると女性が止める。
女性「マイクロチップよ。 ビザンツ人なら埋まってるでしょ?」
緋翠「ビザンツ人・・・?」
女性「もしかして異教徒・・・?まあいいけど」
女性に話を聞くとこうだ。
ここは紛れもなく2023年の日本。
フランク王国は国王と教皇の重要な話し合いが控えていた。
しかし突如国王が何者かに殺され跡継ぎ候補による内乱に発展して国土は荒廃した。
西ヨーロッパは東ローマたるビザンツ帝国に併合され、西ヨーロッパから東ヨーロッパにまで至る大帝国が出来上がった。
女性「そして東西合わさり強大となったビザンツ=ローマ帝国が世界を支配し、徹底的な監視者界になったの」
女性「大きくなった国はやがて腐敗・・・これ以上は言えないわ。チップが埋まってる限り」
鳥居「国王が殺された・・・?」
俺たちが歴史を変えてしまったのか・・・?
だとすると前の世界で俺たちが関わったのはポールとソフィアと領主だ。
そしてこの3人のうち俺たちが関わり結果が変わった人物は領主とポール。
ポールは国王と接点はないだろう。そうなると・・・
鳥居「・・・領主が殺されたのが原因だ」
緋翠「嘘でしょ? あの領主がそんな重要人物だったというの?」
鳥居「おそらく領主は騎士として国王を護衛し、暗殺から守るはずだったのだろう。 だが領主が殺された事で連鎖的に国王も殺された」
緋翠「俄に信じがたいわね・・・」
ポールの目の前で領主の腕を掴んだ。
これが歴史が代わった原因だ。
しかしポールが殺意を抱いていたとは・・・
よほどソフィアが大事だったのだろう。
鳥居「緋翠、回したらまたローマの時みたいに中世ヨーロッパに戻れるか?」
緋翠「私の勘では、おそらく」
ダイヤルはまだ67%。しかし本当にまた戻れるのか・・・?
だが俺たちに出来るのは戻れると信じて対策を考えるしかない。
その気になれば領主と会わず、逃げることも出来たがこれだとまた別のきっかけを生み、歴史が代わりかねない。
なのであえて失敗したルートを辿り、成功へと導く。
つらいが、それが歴史を正すのに1番確実だと思った。
俺たちは作戦を練ることにした。
領主を生かすにはポールに殺させない必要がある。
出来ればソフィアと一緒に救いたい。
あの領主は東洋に関心がある・・・機械にも・・・なにか使えないだろうか?
それにポールの貯めた結婚税も少なくはない。
そうしてチープながら案を練り、次の世界で実行することにした。もっともまた中世ヨーロッパに戻れる保証はないが・・・
鳥居「それじゃ回すぞ、ダイヤルを」
緋翠「! 待って・・・」
緋翠はまたも頭を抱える。
場面は暗転する。