別れ(脚本)
〇中庭
静子「そうだ、私の身体は焼けたんだ。 手術が無事に終わったのに」
静子「火が部屋中に回っていて 麻酔もまだ効いてたから 逃げられなかった・・・」
静子「思い出したら──」
静子「身体が熱い──熱いよ!! 手足の先の感覚はなくなっているのに 痛い!!」
女の子「お姉ちゃん、もう苦しまなくて 大丈夫だよ。 もう、何も痛くないよ」
女の子「だからね、お空にいきたいって 願えば、苦しくないよ」
女の子は私に抱き着いた。
ほんのりと温かい体温に
自然と痛みがなくなったような気がした。
静子「・・・ねぇ、私が怖くないの?」
女の子「お姉ちゃんが笑うとね、ちゃんと笑顔なの」
そう言って、落書き帳の次のページを
女の子はめくった。
そこには、明るい笑顔で描かれた
笑顔の女性の顔があった。
静子「これ・・・私?」
女の子「そうだよ。お姉ちゃんはまだ お姉ちゃんだから、 こう見えることがあるの」
女の子「だから怖くない。 だけど──」
俯いた女の子は足をぶらぶらと揺らして、
黙ってしまった。
静子(子どもなりに考えてくれてるのかな)
こんな幼い子が怖いものを見て、
他人を気にしていることが異質に見えた。
女の子「このままだと・・・ お姉ちゃんも黒い人になっちゃう──」
女の子「だって、だって、本当は5回目だから」
足を揺らすのを止め、女の子は
ジャンプするようにしてベンチを降りた。
女の子「同じことを、5回してるの。 だから、これが最後・・・」
女の子「お姉ちゃんは頑張ったんだよ」
女の子の言っていることを
理解できたと同時に
何も・・・思い出せなかった。
静子「も、もしかして私、あなたのこと 5回も忘れてるの?」
今度は女の子が泣く番だった。
無造作に目元をごしごしとこすって、
涙を拭いている。
涙をなかったようにしたいのか、
何度も何度も、手で目元をこする女の子。
女の子「でもね、でもね、お姉ちゃん。 お話できてよかったの。 何度もお話できてよかったの」
私は立ち上がり、女の子を抱きしめ、
頭をなでた。
静子「なんだか・・・懐かしい」
静子「以前、誰かの頭をこうして 撫でていた気がする」
誰をこうしてなでていたのだろうか。
もう、今の私には何も思い出せなかった。
静子「胸が温かい・・・」
女の子「あっ」
私の手先が消えていく。
それは波紋が広がるように
身体も消え始めた。
静子「ねぇ、最後に名前を教えて」
女の子「は、はずき! はずきだよ!!」
胸の奥がどしんと重くなった。
これが何を意味するのか分からないまま、
私は女の子に笑顔を向ける。
静子「はずき、ありがとう」
女の子「お姉ちゃん・・・ お友達になってくれて ありがとう!」
思わず一気読みしてしまいました!
当初は、病院で霊が見えるという定番モノかと思っていたのですが、まさかの衝撃展開!?
恐ろしさだけでなく、ラストのキレイさにも痺れました!
あれ、同じ話見てたっけとこんがらがっていたのですが、最後でキチンと回収されていました。なるほど、なのです。1話が単話で読みやすく、最後までスラッと読んじゃいました😄😄😄