ヒステリック・ヒストリー

ラム25

第7話 800年 歓迎(脚本)

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〇農村
  元の世界に帰れると信じてダイヤルを回して、眼前に広がる光景は田舎・・・?
  農園だった。
  草木の匂いは懐かしく、家畜たちの鳴き声は牧歌的な雰囲気を醸し出しているが自然を楽しむ余裕などあろうはずがない。
鳥居「なんだよ、これ・・・! まだ続くのかよ・・・!」
緋翠「日本のどこかかも知れないわ。 誰か聞ける人・・・」
  その時、タイミングよく馬車が現れ、目の前で降りる。
騎士「君たち、我が荘園に何か御用かな?」
  現れたのは物語のようなアーマーに身を包んだ騎士だった。
緋翠「えぇと、ここはどこで今何年か教えてくれない?」
騎士「変は質問をするな・・・今は800年、ここはフランク王国だ」
  800年と言えばカール一世が教皇により戴冠し、西ヨーロッパを一つにまとめた年だと記憶している。
  つまりここは中世ヨーロッパだ。
  こんな時代に飛ばされて俺たちに何をどうして欲しいと言うのだろう。
  下手な行動は逆効果だと前の時代で教わった。
  つまりこの時代では何もしなければいい。
  それより、もっと手っ取り早いのは今すぐダイヤルを回すことだ。
鳥居「ダイヤルを回そう。元の時代に帰れるかもしれない」
緋翠「えぇ。教えてくれてありがと! それじゃ!」
  首を捻る騎士を尻目に、ダイヤルを8から7へ回す。
  しかし手応えがなく、針は何度回しても7から8へ戻った。
  ダイヤルの中央には0%と浮かんでいる。
鳥居「これはもしやバッテリー?」
緋翠「さあ・・・壊れてはいないと信じたいけど」
鳥居「壊れてるんだとしたらこの時代に修理工がいなかったら絶望的だ・・・」
騎士「君たちは奇妙な物を持ってるな。 君たちの話を聞きたい、客人として招きたいのだがいかがかな?」
  特に断る理由もなく、騎士の馬車に乗った。

〇洋館の廊下
騎士「小さな館だが遠慮なくくつろいでほしい」
  小さな、というが21世紀から見ても立派な館だった。
  騎士は思ったより身分が高いのかもしれない。
緋翠「いや、立派な館ね。 本当に泊まっていいの?」
騎士「なに、陛下の館に比べれば子供みたいなものさ」

〇後宮の一室
鳥居「しかし部屋も広いな。 騎士もいい人そうだしよかった」
緋翠「いつの時代も優しい人はいるものね」
  ノックが響く。
  騎士だろう。
騎士「失礼する。 君たちにはワインは早かろう、ハーブティーを用意した」
  そして騎士からハーブティーを受け取る。
  この時代には農薬はない。
  そのためかとても心地よい香りだった。
騎士「それで、君たちはどんな国から来た?」
緋翠「東の日本って国から来たの。 中国より東なのよ」
騎士「ほう、中国が最果てだと思っていた。 だが、落っこちないのか?」
緋翠「落っこちる?」
騎士「最果ては滝になっているだろう? それで落っこちないのかと聞いているのだよ」
  どうやら騎士は地球平面説を信じているらしい。
  中世ヨーロッパ特有の考え方だ。
緋翠「落っこちないわ。 地球は丸いもの!」
騎士「丸い? あぁ、君たちはそう信仰しているのか」
  地球球体説は今から800年後、世界1周航海がされるまで証明されることはない。
  この騎士の頭にないのも無理からぬことだ。
緋翠「・・・キリスト教はどうなってるかしら?」
騎士「どうなってる、とは? 無論我々は信仰しているが」
鳥居(そうか、よかった。 前の世界はあの後正常になったんだな)
騎士「君たちの話は興味深い。 もっと聞かせて欲しい」
緋翠「後ね、機械ってのもあるの。 ろうそくがなくても明るいし、勝手に動いて作業してくれるのよ」
騎士「機械? 魔法みたいなものか。 それは実に便利そうだ。どうやって使う?」
緋翠「機械は電気が必要なのよ、だから今は難しいかも」
騎士「そうか・・・是非我が荘園に欲しかったが」
  機械は今から1000年後の産業革命期に生まれる。
  残念ながら領主はお目にかかれない。
騎士「君たちの国はとても豊からしいな。 悲しいことにここフランク王国は東のビザンツ帝国ほど豊かではないのだよ」
  ヨシュアの時代の後、古代ローマは東西に分裂し、西は文化水準が落ちるも東は貨幣経済等を維持し、絶対的な国力を持っている。
緋翠「ここ、フランク王国も豊かになるわよ、きっと」
騎士「うむ、そうだな、ありがとう。 君たちの話は興味深いが夜も遅い。 また明日聞かせて貰おう」
  夜も遅い、と言うが時計もないため時刻は分からなかった。
鳥居「とりあえず寝るか。 おやすみ」
緋翠「えぇ、おやすみ。 何かあったら騎士さまに頼りましょう」
  しかし翌日、俺たちは騎士の本性を垣間見ることになる。

次のエピソード:第8話 800年 豹変

コメント

  • 騎士は良い人そうですね。
    身分も高そうで何者…!?です。

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