復讐編パート6(脚本)
〇黒
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・あれ?俺は・・・・・・
どう、し・・・・・・・・・
〇部屋のベッド
橘宏美「────────!!!!」
橘宏美「いづ・・・ッ」
柳生摩耶「宏美くん!!」
橘宏美「摩耶さん・・・ここは・・・」
橘宏美「・・・そうだ!!あの時、 俺は芽愛と戦って・・・足場が崩れて」
橘宏美「何か、何か大きいバケモノみたいなのが・・・くそっ、思い出せないっ!!」
橘宏美「・・・あっ、そうだ!!チェーンソー!! ”キメラ”は・・・」
柳生摩耶「・・・瓦礫の中で、ぐちゃぐちゃに壊れてたわ。銃も・・・」
橘宏美「・・・あの、今気づいたんですがメガネは」
柳生摩耶「・・・・・・」
橘宏美「・・・まあ、なあ・・・高かったのに」
〇荒廃したデパ地下
橘宏美「それでここは・・・」
柳生摩耶「地下街よ。あの地下から”何か”が現れた際に、足場が崩れて、気づいたら・・・」
橘宏美「落ちてきた、と・・・」
橘宏美「・・・クソっ!!復讐は果たせない上に、武器は壊れて、こんな・・・ッ!!」
柳生摩耶「(復讐・・・やはり宏美くんは・・・)」
橘宏美「・・・・花凛さん、所で俺どれぐらい寝てました?」
柳生摩耶「ちょっと待ってね」
柳生摩耶「・・・丸一日ね、もう夜の7時よ」
橘宏美「夜中か・・・そしてアンテナは圏外」
橘宏美「こうも荒れた様子だから予想はしてたけど、ここのWi-Fiは死んでいるか・・・」
橘宏美「外に連絡する手段はなし、かといって地上はゾンビまみれ・・・」
橘宏美「あの時の陥没穴から這い上がるのも無理そうですし・・・朝まで待つしかない、と」
橘宏美「・・・とりあえず、こういう状況で大事なのは持ち物確認ですね、今は・・・」
橘宏美「・・・この2つの武器は無事でした」
柳生摩耶「私も、刀がまだ使えます。これでゾンビが出ても・・・」
橘宏美(・・・そういえば、あれだけ居たゾンビの姿が見当たらない?)
橘宏美(唸り声すら聞こえない、これはどういう事だ・・・?)
柳生摩耶「あとは・・・」
柳生摩耶「────あっ!!」
橘宏美「ご飯と・・・これは、カレー?」
柳生摩耶「お弁当、お腹すいちゃうと思って・・・」
橘宏美「・・・・・・・・・」
柳生摩耶「・・・じゃあ、遅めだけど晩御飯にしちゃいましょうか」
橘宏美「・・・・・・は、はい」
橘宏美(・・・お腹すいちゃう、か)
橘宏美(摩耶さんは、俺が生きて帰ってくると思っていたから持ってきたんだろうな・・・)
橘宏美(・・・・実際は、生きて帰るつもりはなかったんだけど)
〇タワーマンション
〇部屋のベッド
橘宏美「・・・ごちそうさま」
柳生摩耶「おそまつさま」
柳生摩耶「・・・・・・ふふっ」
橘宏美「・・・どうかしました?」
柳生摩耶「なんだか・・・宏美くんと一緒にいると 思うの」
柳生摩耶「私に息子がいたら、こんな感じだったのかな?って・・・」
橘宏美「・・・息子、ですか・・・」
橘宏美「・・・・・・」
橘宏美「・・・俺も、あなたみたいな人がお母さんだったら、嬉しかったと思います」
柳生摩耶「・・・・・・」
橘宏美「・・・・・・さ、明日は早起きしませんと。早い所寝ましょう」
柳生摩耶「・・・・・・」
橘宏美「にしても、地下街に家具展示場があって助かりましたね。硬い床で眠らずに・・・」
柳生摩耶「・・・・・宏美くん」
橘宏美「・・・・・・何をしてるんですか」
柳生摩耶「あなたを後ろから抱きしめてる」
橘宏美「それは見れば解ります」
橘宏美「・・・何のつもりかと聞いてるんです」
柳生摩耶「・・・・・・宏美くん」
柳生摩耶「ご家族の事で・・・ 何か辛い事でもあったの?」
橘宏美「・・・何故そんな事を聞くんです」
柳生摩耶「・・・まるで、大人を演じるような態度 ここ最近の生き急いでいるような様子」
柳生摩耶「そして実の妹さんへの”仇討ち”・・・これだけ揃えば、何かあったかなんてすぐ解るわ」
柳生摩耶「・・・私に話してみて?少しは、気も楽になるハズよ」
橘宏美「・・・嫌、です」
橘宏美「ずっと、話して傷ついてきた、から・・・」
橘宏美「・・・誰も解らないんです、俺の苦しみは」
橘宏美「いや、俺が勝手に苦しいって思ってるだけで、世間の常識ではそれは甘えで・・・」
柳生摩耶「・・・世間なんて関係ない あなたの言葉が聞きたいの」
橘宏美「・・・・・・!!」
柳生摩耶「・・・これでも託児所勤め10年の大ベテランなのよ?私」
柳生摩耶「皆が皆、幸せな家庭で育った訳じゃないことぐらい解るわ そして────」
柳生摩耶「────全ての親が、親に相応しい人間とは限らないって事も」
橘宏美「・・・・・・」
柳生摩耶「・・・・・これでも信用ならない?」
橘宏美「・・・・・・」
橘宏美「・・・・・・」
橘宏美「・・・・・・俺、説明下手ですから 何処から話したらいいか、解らないですよ」
橘宏美「・・・変な説明になりますが、すいません」
柳生摩耶「構わないわ、続けて」
橘宏美「・・・・・・」
〇モヤモヤ
──────結論から言うと、俺橘宏美は”毒親”と呼ばれるような人間の元に生まれた
親父は遊んでやると称して、俺を高いところから吊るして泣く様を見て笑ってた
母親も、それを見て微笑ましそうに笑っていやがった
他にも無理やりキャッチボールをやらされて、硬質ボールが顔に当たった事もあった。心配する所か”男が泣くな!”って怒鳴った。
どう見ても虐待だった。怖いのは俺が中学に入って”毒親”の概念を知るまで────
──このイカれた虐待教育が俺の中で
”明るい家族の思い出”にカテゴライズされていた事さ。
そして、俺の妹の芽愛。虐待された俺と違って、あいつは女の子だからか蝶よ花よと育てられた・・・ように見える。
恫喝と虐待の中で育ったからか、俺が案の定コミュ障陰キャになる一方、あいつはリアルを充実させていった。
そしていつしか、家族のヒエラルキーの中で俺が一番下に設定された。
ひどいもんさ、家に虐めの加害者がいるようなもんだよ。ただそこにいるだけで詰られ貶され・・・
外に作ったハズの居場所も”妹は社会に出る訓練をはじめてるのに、お前はいつまで遊んでるつもりだ?”ってやめさせられた。
挙句の果てが、勝手に自分の口座から金を引き落とされて、俺を置いての家族旅行。
明日も朝早く仕事だった俺を置いてね。
もう、怒る気力も逆らう気力も無くなった
・・・ハズだった
ゾンビ騒動が起きて、皮肉にも俺の生活は規則正しくなって、心身ともに力を付けてきた頃。芽愛はゾンビとなって現れた。
天啓だと思った。そこで俺の失われたハズの怒りも、屈辱も、溶岩のように蘇ってきたんだ。
今まで自分を見下して傷つけてきた相手に、直接復讐ができる!って・・・
だが・・・それは自分自身との戦いの始まりでもあった。
ゾンビ、元人間を殺す事に躊躇をしない自分は復讐のためには持って来いの状態だったけれど、それでもまずい状態なのは解った。
その証拠が、あの時芽愛を前にしてああなった自分。あれはきっと、俺の中で今まで怒りを引き受けてきた俺なんです。そして・・・
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)