運命イン渋谷

ポロロ

エピソード1(脚本)

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〇城下町
  江戸後期──
  二人の恋人が悲しい別れの時を迎えていた

〇古風な和室
世津子「コホッ・・・コホッ・・・」
  咳をして手で口を押さえると、その手が血で真っ赤に染まった
世津子「血・・・・・・ 拓郎さん、また血を吐いたわ」
拓郎「大丈夫だ、世津子さん 気をしっかり持て!」
世津子「いいえ、分かってるんです 私はもうあなたと共に生きられない」
拓郎「そんなことねぇ! 俺と一緒なるって約束したろ?」
世津子「それはもはや叶わない夢」
拓郎「そんな悲しい事言うなよ」
世津子「私には分かるんです。 ですから、せめて・・・」
拓郎「せめて、何だ? 何でも言え、俺が叶えるから!」
  拓郎はぎゅっと世津子の手を握った
世津子「来世があるのなら、その時は私と一緒になってくれませんか?」
世津子「コホッ・・・コホッ・・・」
拓郎「おい、世津子! 世津子!!」
世津子「拓郎さん、お願いです・・・」
拓郎「分かった、分かったから、来世も必ずお前を探し出す!」
拓郎「そしてその時は一緒になろう!」
世津子「名を・・・・・・」
拓郎「名も同じく、俺は拓郎、お前は世津子として生まれるんだ! これでお互い分かるはずだろ?!」
世津子「ええ・・・同じ名で この手に触れたとき・・・ すべてを、思い出だします」
拓郎「世津子──」

〇宇宙空間
  世津子は亡くなった
  その後、世津子を追うように拓郎は川に身を投げ、命を絶った──
  ──────

〇渋谷の雑踏
  時は経って
  令和四年、渋谷

〇渋谷駅前
拓郎「いやー、マジ今日も暇だわー」
  拓郎の生まれ変わりであるこの男
拓郎「かわいい子ナンパして、カラオケでも行こか~!」
  めちゃくちゃチャラくなっていた

〇SHIBUYA109
拓郎「さてさて、かわいい子猫ちゃんはおらんかねー?」
拓郎「お、みっけー めっちゃタイプかもーん」
拓郎「うぃーす、お姉さん、ひとり?」
世津子「は?お前誰?」
  世津子の生まれ変わりのこの女もまた
世津子「ナンパなら間に合ってるんですけどー?」
  前世の面影はなく、渋谷にごろごろいるようなギャルになっていた
拓郎「いや、ちょ待ってよ。こんなイケメン高校生ほかにいないっしょ?」
世津子「だからお前、誰よ?名前から言えっての」
拓郎「拓郎だけど?お姉さんは?」
世津子「拓郎・・・」
世津子「何だこの懐かしい響き」
拓郎「え?は?何? お姉さんの名前教えてよーん」
世津子「うるせーな、世津子だよ 文句ある?」
拓郎「え、世津子・・・」
拓郎「何か分かんねーけど、胸がぎゅっとなるんすけど」
拓郎「これって運命じゃね?!」
世津子「んなわけないだろ!」
世津子「でも・・・」
世津子「何処かで会ったことある?」
拓郎「それな。 俺も思った。絶対運命っしょ 前世で出会ってるっしょ」
世津子「いやいや、やっぱ、ないわー マジでこんなチャラついてるの知らんし」
拓郎「ちょ、待って カラオケ行こうよー」

〇ネオン街
世津子「何か分かんないけど、付いて来ちゃったんだけど」
拓郎「それはつまり、潜在意識レベルで俺を求めてるってことじゃん?」
世津子「マジねーわ。 でもなんなん、お前めっちゃ懐かしい感じするんだけど」
拓郎「世津子、俺も俺も!」
世津子「すぐ呼び捨てすんな」
拓郎「いやーもうさ、俺ら初めましてじゃない関係だしさ」
拓郎「ラブホいかね?」
世津子「帰る」
  世津子は踵を返し、去ろうとした
拓郎「冗談だって~ 帰んないでよ世津子ちゃーん」
  と世津子の手を取ったその瞬間

〇時計
  すべてを思い出した
  二人の前世
  二人の悲しい別れ
  そしてあの約束も──

〇ハチ公前
拓郎「いやぁ、思い出しちゃったねー」
拓郎「やっぱ前世からラブ&ピースな付き合いだったんだね、俺ら」
世津子「ぽいね」
拓郎「どーする?結婚する?」
世津子「でも私、あの時の拓郎が良かったわけでさ」
世津子「今の拓郎は好きじゃない」
拓郎「ウッソー!? あれだけ約束したのに?」
拓郎「俺、後追って死んじゃってるのに!」
世津子「そんなこと言われてもなー そっちが勝手にやったんだし」
拓郎「じゃあ、マジでなし?俺なし?」
世津子「んー もう少し考えさせて」
拓郎「俺、変わるからさ もうナンパ卒業するし、髪型も江戸時代風にするから!」
拓郎「お願い! まずは一旦付き合って!」
拓郎「マジだよ俺、ここまでマジなの初めてなんだって、世津子しか勝たんし!」
世津子「んーそこまで言うなら」
拓郎「嘘、OK?」
世津子「お父さんに挨拶してからにして」
拓郎「え」

〇旅館の和室
拓郎「こんにちわっすー」
世津子「お父さーん、来たよ」
父「お前か」
拓郎「あ、はい」
父「お前、うちの娘と交際したいんだとな」
拓郎「はい、もちろん てか俺ら前世からの繋がりあって愛し合ってたんすよ だから・・・」
父「知るか!! うちの娘と付き合いたければ」
父「条件を満たせ!!」
拓郎「条件?」

〇炎
父「条件その1 俺よりも強いこと」
父「条件その2 俺より頭がキレること」
父「条件その3 俺より娘を愛してると俺が思うこと」
父「この3つの条件が揃ったら、お前に娘をくれてやる」
父「それまで断じて許さん!!」

〇旅館の和室
拓郎「そんなぁ・・・ やっと出会えたのに」
  二人が結ばれるには、前世も今世も前途多難なのであった
世津子「これも運命でしょ」

コメント

  • 運命の再会なんですが、まぁ前世と同じ感じになるとは限らないですよね。笑
    見事にチャラくなってておもしろかったです。
    でも、あれだけ人の多い渋谷で再会できるってことは、やっぱり運命なのかな?

  • ハートフルなラブストーリーかと思ったら、
    斜め上の展開が繰り広げられていて
    予想外の連続でした🤭
    現世での2人は、末永く幸せになってくれてるといいな😌✨

  • まさかのチャラさ、世津子さんもまさかの仕上がり…でも何だかこれはこれで、素敵なカップルになれそうです。どちらの二人の会話も好きです。お父様もなんだかお父さんをやるのは2度目のような気がします笑。髪の毛を江戸時代風にするっていう発想のチャラさが好きです。

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