ヒステリック・ヒストリー

ラム25

第4話 2023年 崩壊(脚本)

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〇黒
  めまいがする。
  短いが濃い旅だった。
  他の人には味わえない経験が出来て、まあ楽しかった、かな。

〇荒廃した街
  そうのんきに考えていた俺は、めまいが収まった頃、愕然とした。
  眼前に広がるのは荒廃した世界だった。
鳥居「なんだ、これ・・・俺達は帰れたんじゃなかったのか?」
緋翠「ここはいつの時代なの? どこの国なの?」
  2人して話していると、何やらこの世界の住人らしき女性がガスマスクを外して話しかけてくる。
女性「あなたたち、ここは立ち入り禁止区域のはずよ」
緋翠「あの、すみません。ここどこですか? 今は何年ですか?」
女性「え?ここは日本、2023年だけど・・・」
  馬鹿な、ここが現代日本だと・・・?
  こんなディストピアが?
緋翠「なんでこんなことに・・・?」
女性「アメリカによって核が落とされたの」
緋翠「そんな、日本とアメリカは仲悪くないはずよ。 日本はキリスト教国じゃないけど・・・」
女性「? キリスト教って?」
緋翠「え? 世界的宗教じゃない!」
女性「いや、知らないわね・・・ごめんなさい」
  馬鹿な、キリスト教がないだと・・・?
  ここはパラレルワールドなのか?
緋翠「信じて貰えないかもしれないけど、こんなことがあって──」
  それから緋翠は前の世界のこと、古代ローマでの出来事を話した。
女性「なるほどね・・・ この世界には宗教は無いのよ。 大昔に非合理的だとして根絶されたの」
女性「古代ローマが滅んだあとはキリスト教とやらが中心の世界になったと言うけどこの世界は科学が中心の世界なの」
  中世ヨーロッパはキリスト教というまとまりで成り立っていたが、同時に科学も抑圧されていた。
  その抑圧が無かったと言うのか。
女性「それからヨーロッパは対外進出して、非ヨーロッパ人との戦争に勝利した。 次に激化したのはヨーロッパ人同士の争いだった」
女性「何百年も互いに睨み合いになるうちに遂に世界中で核戦争になった。 そして僅かな生き残りが再興を志してるの」
女性「あなたたちの話を聞いても宗教がそんな影響あるとは思えないけど、そんな平和な世界もあったと思いたいわね・・・」
  そんな、宗教がないというだけで、いや、ヨシュアを逃がしたというだけでこんな絶望的な世界になるのか。
  バタフライ・エフェクト。
  蝶の羽ばたきが地球の裏側で旋風を起こす。
  それと同じようにヨシュアを逃がした事が、世界の崩壊を招いた。
  信じがたいことに、あの状況で間違えているのは俺達の方であったのだ。
緋翠「ご、ごめんなさい! わたしが逃げるように言ったから──」
鳥居「いや、俺も逃げさせる気だった・・・ 嘆いてもしょうがない」
  しょうがないとは言っても、俺達は取り返しのつかないことをしてしまった。
  この荒廃した世界で過ごすしかないのか・・・
緋翠「こんなディストピア・・・」
緋翠「うっ!」
鳥居「どうした!? 緋翠!?」
  緋翠は突如頭を抱えだした。
  場面は暗転する。

次のエピソード:第5話 2029年 罪

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