ヒステリック・ヒストリー

ラム25

第1話 2023年 緋翠襲来(脚本)

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〇教室
教師「・・・い。鳥居!」
鳥居「あれ? あ、授業中か・・・」
  そうだ、今は俺が大嫌いな世界史の授業中だ。
教師「お前は居眠りが多すぎる。 反省文2000文字かあるいは・・・」
  周囲もクスクス笑い、羞恥心もくすぐられる。
  何が楽しいんだろう。
  この教師は歴史以外の科目・・・特に数学の成績が優秀な俺を目の上のたんこぶのように思っている。
教師「だがまあいい、この問題が解けたら見逃してやろう。 ヴァレンヌ逃亡事件の起きた年月日を言ってみろ」
  難問なのだろう。
  要するに見逃す気はないと言いたいのだ。
  しかし俺は遠慮無く答えた。
鳥居「1791年6月20日」
教師「!?」
  周囲から感嘆の声が上がり、教師は思わずチョークを落とすもすぐに広い、咳払いをすると、よろしいと解放してくれた。
  数字は訳あって覚えるのが得意だ。
  年号暗記はあっという間に終えられたが、歴史は居眠りが多くて補修を頻繁に受けていた。
  そこへチャイムが鳴る。
クラスメイト「でさー、そのマンガが面白くてさー」
クラスメイト「あれね。俺は表紙のグラビアの方に目が行ったよ」
  クラスメイトがたわいもない会話をしている。
  俺には話し相手はいないが、平和であることを実感する内容。
  帰ったらまたPCでもやるか。
  俺はこの平穏な毎日が好きだ。
  どうかこのまま〝今〟を満喫させてくれ・・・
  それが大それた願いだとも知らずに。

〇古いアパートの部屋
「さてはあなたが私を攫った犯人ね! 覚悟しなさい!!」
鳥居「は、はぁ!?」
  帰宅したら訳も分からず突然見知らぬ少女に何やら投げられて、それが顔面に突き刺さる。
鳥居「ぐぁっ・・・ぷ・・・」
  だらしなく鼻血を流し、うずくまる俺に、さらに少女は蹴りまで浴びせてくる。
  なんて乱暴なんだ・・・
鳥居「と、とりあえずだ! 適当に服を着てくれ! 俺は廊下に逃げ・・・いるから」
  そう、少女は衣服を身に纏っていなかった。
  それを聞き、途端に少女は顔を真っ赤にして体を手で多い、涙目で言う。
「鳥居! なにしたのよ! 最低!」
鳥居「え? なんで俺の名前知ってるんだ? 表札は出てないのに」
「あれ、なんで・・・ それより出てって!」
  そして俺は廊下へ避難する。
  少ししていいよー、という声を合図に入る。
  少女は適当に俺のジャージを着たようだ。
緋翠「さっきはごめんなさい・・・ 目を覚ましたら突然知らないところにいて誘拐されたと思ったの」
鳥居「いや、いいんだ。 それより君はなぜここにいるんだ? 鍵もかかってたはずなのに」
緋翠「・・・わからないのよ、なにも・・・ 私が緋翠って名前なのは思い出したけど」
緋翠「気付いたらここにいて記憶も無いの。 突然知らない世界に放り込まれたみたいで何がなにやら」
鳥居「記憶喪失・・・? なんて気の毒なんだ・・・」
鳥居「なんて言うとでも思ったか! ピッキングでもして入ったんだろう! ストーカーか詐欺グループか知らんが──」
緋翠「そんな、私は本当のこと言ってるのに・・・」
  このまま口論しても仕方ない、どうしたものか、と悩むとふと視界に黒いダイヤル──昭和のアナログ電話のような物が映る。
  針は0から12まであり、現在は11に合わさっている。
  またダイヤルの中央には54%と浮かんでいる。
鳥居「これはなんだ? 君がさっき投げた物か?」
緋翠「あれ、これ見覚えがある・・・よく分からないけどきっと私の記憶に深く関わってるのよ!」
鳥居「回せるみたいだし回してみるか──」
  その時だった。
  ──このダイヤル・・・歴史に作・・・劇薬・・・歴史を変え・・・くれ
鳥居「え? 今なんて?」
緋翠「?」
鳥居「このダイヤルは歴史の劇薬だとかなんとか言ったじゃないか!」
緋翠「どうしたの? 大丈夫? まさか・・・私のせいで?」
  逆に心配されてしまった。
  先ほどの幻聴・・・オカルトは信じないがこのダイヤルは嫌な予感がする。
  それに、これは、デジャブ?
  まるで回すと酷い目に遭うと分かっているかのような・・・
  とにかく嫌な予感がする。
鳥居「まったく、なんなんだこのダイヤルは、訳が分からん。 訳が分からないのは君もだが」
  これは我ながら失言だった。
緋翠「むー、失礼だなー。 わたし、本当に不安なんだよ・・・? 急に知らない世界に来て、信じて貰えなくて・・・」
緋翠「あ、ごめんね! 変なこと言って!」
  少女は途端に取り繕うも、柔らかい口調に反して表情は固かった。
  しかし、俺は何故かこの少女とは会話に抵抗がない。
  普段の俺ならこんなに会話できることはあり得ないと言っていい。
  何せコンビニ店員にすらレシートはいりません、レジ袋くださいなどと言えないほどだ。
  突然の非常事態に思考回路がショートを起こしたのだろうか。
緋翠「じゃあ、洋服ありがと。 わたしは記憶を取り戻すために旅に出るわ」
  そういい、背を向ける緋翠に声をかける。
鳥居「・・・待ってくれ」
鳥居「俺は君を・・・緋翠を信じるよ」
緋翠「え? こんな私を?」
  俺にはこの子がなんだか健気に見えた。
  貧乏人の俺に芝居をして詐欺に巻き込む、それにストーカーするメリットもないし・・・
  それに緋翠の記憶やダイヤルの正体は俺も気になった。
  なによりこんな少女を放っておけないというのは格好つけすぎだろうか。
  その時、ぐうぅ、と腹の虫が鳴る。
緋翠「わ、わたしじゃないわよ?」
  下手すぎる嘘だった。
鳥居「よし、夕飯にするか。 カレーにしようと思ってたんだが一人じゃ食べきれなくて困ってたんだ」
緋翠「いいの!? しかもカレー!?」
緋翠「でも一人じゃ食べきれないって家族は?」
鳥居「そんなものいないよ・・・」
  家族、と言われついぶっきらぼうになってしまう。
  聞かせたくないのは俺の根源に関わる話だからだ。
  そして俺はささっとカレーを作る。
鳥居「おまたせ──ってあれ?」
  見ると緋翠は泣いていた。
  やはり不安なのだろう。
鳥居「大丈夫か? 記憶が戻るまでは俺が面倒みるから」
緋翠「ちが、うの。 家族がいないって、それってとても悲しいことだわ」
  緋翠はこんな境遇なのに、自分の身でなく俺の身を案じて泣いていたのだ。
  とても優しい子なのだろう。
鳥居「俺は大丈夫だ。慣れてるし。今なら緋翠だっている。 それより冷める前に食べよう、スパイスを七種類使った自信作だ!」
緋翠「・・・うん」
  緋翠の笑みを見ながらスプーンを口に運ぶと、不思議といつもより美味しく感じ、珍しくおかわりした。
  緋翠は4回おかわりした。

〇古いアパートの部屋
緋翠「鳥居!見て!ダイヤルが100%になってるの!」
  昨日は53%だったか、およそ10時間以内にパーセンテージが100になったことになる。
緋翠「100%なんだから回したらいいことあるわよ!」
鳥居「どういう理屈なんだ」
  俺は論理的に物事を考えるタイプで直感的な考えが苦手だった。
  ただこのダイヤルは昨日の幻聴と言い、嫌な予感がした。
  その時チャイムが鳴る。
  俺は配達員から荷物を受け取る。
緋翠「もしかしてやらしい本?」
鳥居「違うわ! 緋翠の服だよ。 男物しかないのが気の毒でね」
緋翠「そう、ありがと! 鳥居の趣味に付き合ってあげる!」
鳥居「もう少しまともに礼を言えないのか?」
緋翠「着替えたわ、ありがと」
鳥居「悪いな、俺はファッション疎いから適当に選んだんだ」
緋翠「ううん、嬉しいわ。ありがとう」
  その時またしても鳴るチャイム。
  これ以上荷物は頼んでないはずだが・・・?
  一体誰だ?
石井「久しぶりだな」
鳥居「──! 石井・・・!」
石井「私を呼び捨てにするとはな。 まあいい、あいつはどこにいるか分かるか」
  現れたのは顔を見るのも忌まわしい男だった。
鳥居「知るか、帰れ!」
石井「相変わらず世間話も出来ないとはな。 やはり欠陥品か」
  そう言い石井は無断で部屋に入る。
  俺もあまりに突然のことで脳が処理に追いつかなかった。
石井「狭い部屋だな。 まるでうさぎの小屋だ」
鳥居「クソっ、無断で入りやがって・・・! いったいなんの用だ!」
石井「要件なら言ったろう、あいつはどこだ、と。 相変わらずお前とは会話が成り立たないな」
緋翠「この人なんかいやーな感じ・・・」
  それを聞き、眼球のみを緋翠の方向に向けると、その手に持つダイヤルを見て目を丸くする。
石井「そ、それは!それをよこせ!」
緋翠「きゃっ!」
  石井は強引に緋翠からダイヤルを奪い、緋翠は転倒する。
石井「これが例の物の完成形・・・? しかし何故ここに・・・?」
  そして回そうとする石井から強引に奪い取る。
  すると石井は深くため息をつき、電気シェーバーを取り出した。
  いや、あれは電気シェーバーなんてものじゃない!
  スタンガンだ!
  俺たちにはもはや抵抗手段はなかった・・・
石井「そうだな、そこの娘でいい。貴様が試しに回せ」
緋翠「誰が貴方なんかの指図で!」
鳥居「・・・いや、ここは俺が回す」
緋翠「そんな! こんなおじさんに従う必要なんてないわよ!」
  2対1とは言え密室では分が悪い。
  そう思っての判断だった。
石井「ほう、従順でいいことだ」
  白状すると俺自身好奇心があった。
  あの石井がここまで取り乱すのだ。何かあるはず。
  そしてダイヤルの針を11から10に合わせると・・・
  不快なめまいがし、意識が遠のいていく。
  ──ないでくれ
  また、幻聴が聞こえた気がした。
  しかし全て聞く前に意識は遠くへ・・・
  ──このダイヤルは歴史に作用する劇薬だ。歴史を変えないでくれ

次のエピソード:第2話 30年 邂逅

コメント

  • こんにちは!
    色々読ませて頂いています
    気になるところで終わってしまいましたね

    頭のいい主人公スキです!論理的で堅物ぽいところも👍
    ヒロインの感覚派な言動に振り回されているのも可愛いです💕

  • わー!これは!続きが気になりますね!!✨☺️

    歴史を変える劇薬なのに回してしまって・・・これからどうなるのか!?やはり歴史は変わるんでしょうね・・・

    ハラハラしつつもどうなって行くのか楽しみです✨

    少しずつ読ませていただきますね!!✨☺️

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