〇大企業のオフィスビル

〇オフィスのフロア
谷川りく「おはようございます」
谷川りく（前園は休みか・・・）
大原つぼね「おはよう」
谷川りく「あっ、おはようございます」
大原つぼね「ふふ・・・」
谷川りく「おはよう」
川西あかね「おはようございます」
川西あかね「ふふ・・・」
谷川りく「・・・・・・・・・」
佐伯ゆうこ「おはよう谷川くん」
谷川りく「お、おはようございます」
佐伯ゆうこ「ふふ・・・」
佐伯ゆうこ「聞いたわよ、いけない子ね」
谷川りく「はっ？」
佐伯ゆうこ「有給使って他の女の子と浮気してたんでしょ」
谷川りく「な、何でそれを・・・」
先輩「先日、谷川の浮気現場見ちゃってなぁ」

〇休憩スペース
谷川りく「先輩なに言いふらしてるんですか」
先輩「悪い悪い」
先輩「イケメンに対するやっかみだ、許せ」
谷川りく「俺の社内の評判最悪じゃないですか!!」
先輩「プライベートは会社の査定とは関係ないから安心しろ」
谷川りく「普段の職場環境の事を言ってるんですよ」
谷川りく「前園とは友人なだけで──」
谷川りく「特別な関係じゃないんですから」
先輩「デート相手が本命だったのか？」
谷川りく「別に本命という訳じゃ・・・」
先輩「だったら前園と付き合えば良いじゃないか」
先輩「お前もいい年だしな」
谷川りく「いきなりそんな事言われても」
先輩「前園は良い奥さんになるだろう」
先輩「彼女じゃないのに彼女づらなんて可愛いじゃないか」
先輩「それだけ好かれてるって事だよ」
谷川りく「人ごとだと思って・・・」

〇女の子の一人部屋
澤山りつ「会社の人に見られてたの？」
谷川りく「まぁな・・・」
澤山りつ「出世に関係ないなら良いじゃない」
谷川りく「もし自分が同じ立場だったらそう言えるのか？」
澤山りつ「実害がないなら放っておくかな」
澤山りつ「谷川くんの感じだと、その女の人の事は好きじゃなさそうだし」
澤山りつ「それに私に会うまで害虫つかないようにしてくれたと思えば──」
澤山りつ「むしろ感謝しなくちゃね」
谷川りく「確かに俺たちは付き合ってるけど──」
谷川りく「別にお前の事が好きって訳じゃないんだぞ」
澤山りつ「あっ・・・」

〇ゆるやかな坂道
谷川りく「さてと──」
谷川りく「どうしたものかな・・・」

〇マンションの共用廊下
前園はるか「だれ？」
谷川りく「俺だ、入るぞ」

〇本棚のある部屋
谷川りく「元気そうじゃないか」
前園はるか「別に病気って訳じゃないから・・・」
谷川りく「今日休んだのは昨日の事が原因か？」
前園はるか「・・・・・・」
谷川りく「子供みたいな事するなよ」
谷川りく「いつまでも休めるわけじゃないんだから」
前園はるか「分かってるわよ」
谷川りく「・・・・・・」
前園はるか「話はそれだけ？」
前園はるか「だったら帰ってよ」
谷川りく「帰って良いのか？」
前園はるか「話す事ないでしょ」
谷川りく「じゃあ明日からいつも通りの関係でいられるのか？」
前園はるか「気持ち知られたんだから無理よ」
前園はるか「あたし、谷川が他の女と会ってる姿なんか見たくないから」
谷川りく「そんなに俺の事が好きなのか？」
前園はるか「・・・・・・」
谷川りく「そうか・・・」
谷川りく「だったら付き合ってみるか？」
前園はるか「だ、だって・・・」
谷川りく「澤山の事か？」
谷川りく「だったら大丈夫、あいつとは仮交際なんだ」
前園はるか「仮交際・・・？」
谷川りく「つまり、正式に付き合う前のお試し交際ってやつだ」
谷川りく「まぁ、前園が嫌じゃなかったらだけどな」
前園はるか「嫌じゃない」
前園はるか「全然嫌じゃない！」

〇女の子の一人部屋
谷川りく「そういう訳だから──」
谷川りく「一緒にいる時間半分になるけど良いよな」
澤山りつ「良い訳ないでしょ!!」
澤山りつ「谷川くんは私の恋人なのよ」
澤山りつ「どこの世界に浮気を許す女がいるのよ!!」
谷川りく「でも、お前は最初に言ってたじゃないか」
谷川りく「結婚相手を決めるのだから──」
谷川りく「複数の相手と付き合うのも悪いことじゃないって」
澤山りつ「うっ!!」
澤山りつ「そんなこと言いましたっけ？」
谷川りく「もう一度、第一話を読み返してみろ」
谷川りく「それに──」
谷川りく「あいつの気持ちが本気なら──」
谷川りく「結果はどうあれ、真摯に向き合いたいんだ」
谷川りく「好きな気持ちを無下にされる気持ち──」
谷川りく「俺が一番良く分かってるからな」
澤山りつ「うっ!!」
谷川りく「どうした？」
澤山りつ「・・・・・・」
澤山りつ「これが因果応報と言うやつか・・・」
　　第ニ章・おわり