第17話(脚本)
〇森の中
神社のすべてを包み込むように
神社のすべてを覆い隠すように
神社のすべてを洗い流すように
強く、しなやかな雨が
ここ数日、ひっきりなしに降り続いて
森の地面は吸いきれなかった水を
地上に吐き出していた。
コマ「これはひどい」
コマ「足首まで浸かるほどの 水たまりは久しぶりです」
コマ「木霊がいなくなったのは・・」
コマ「この嫌な霊気のせいでしょうか」
コマ「邪悪に満ちたこの雰囲気は 今までに味わったことがない」
コマ「雨のせいで正確な場所がつかめないですが、 そこにいるんでしょ?」
アワシマ「この雨なら身を隠せると思ったのですが、 無駄でしたか」
コマ「・・・あなたは何者ですか。 神様不在のこの神社を乗っ取ろうとするのなら・・」
アワシマ「いえいえ、 乗っ取るだなんて・・」
アワシマ「私は準備をしに来ているだけなんです」
コマ「準備?」
アワシマ「それは・・言ってしまうと 興ざめでしょう」
コマ「よくわかりませんが、 これ以上居座るというのなら・・」
「追い出すまでです」
アワシマ「いやいや、 そんな戦う気なんてないんだよ」
アワシマ「この神社のためになると、 あの人も言っているんだから・・」
アワシマ「いや、だから戦う気は・・」
アワシマ「はいはい、わかりましたよ。 準備は終わったので帰ります」
アワシマ「では、また」
コマ「ガルルルル」
「・・・」
コマ「霊気を感じなくなった・・」
コマ「でも、遠くから見張られているような 気がする」
コマ「タケハ様に報告しておいた方がいいか? ・・・いや、ここは私だけで解決しよう」
コマ「・・・ツクヨミ様は何をしているんだろう」
〇オフィスのフロア
ツクヨミ「はー、 みんなは何をやっていたんだ」
ツクヨミ「こんな風にルールを変えたら、 ユーザーに金儲けの会社だと 思われてしまうじゃないか」
ツクヨミ「なんとかユーザーが離れないように 代わりの得になるようなことを考えないと・・」
部長「ツクヨミ、 久しぶりに出社したと思ったら 頑張っているじゃないか」
ツクヨミ「このアプリ、改正のせいで 能力値のインフレと課金を強いるような仕様になっています。 早くこれを改善しないと・・」
部長「会社はそのアプリはもうダメだと判断した。 今は課金を煽って、 最後の集金にかかっている」
ツクヨミ「しかし、これはまだいけます。 少しずつ人数は減っていますが、 根強いアクティブユーザーは残っています」
部長「おまえが作ったアプリだからと言って いい気になるなよ」
部長「他のクリエーターも 革新的でいいアイデアを出している」
部長「・・それに、 そのアプリもいつ盗作と言われるか わからないからな」
ツクヨミ「くっ」
部長「正式に連絡が来た。 盗作だと向こうは言っている。 莫大な示談金を要求している」
ツクヨミ「・・・」
部長「会社としては徹底抗戦の構えだが、 負けた時はおまえの処分はどうなるんだろうな」
部長「せいぜいそれまで残業でもして、 給料を稼ぐんだな。 それじゃ、おつかれ」
ツクヨミ「・・クソッ」
ツクヨミ「俺の居場所なんかどこにもないのか」
ツクヨミ「自分なりに頑張っているのに 目の敵にされて・・」
ツクヨミ「父さんもヒルコも死んでしまって・・ あの場所に帰るべきだったんだろうか」
ツクヨミ「・・・今はそんなこと考えている暇はない。 自分の居場所は自分で守るんだ。 戦えるフィールドがある限り、 頑張るしかない」
???「はじめまして」
ツクヨミ「・・君は・・誰?」
???「少しお話を聞いてもらってもいいですか」