エリシアの過去(脚本)
〇教会
アレは、私が10歳になったばかりの頃・・・
エリシア「お父様ココは?」
ラン「我が国最古の都市、クレアが誇る国教本部だ」
エリシア「国教・・・「守り神」様を信仰するシンゲツ教ですか?」
エリシア「クレアに本部があるとは初耳です、王都にあるものとばかり・・・」
セリファ「王都にあるのも本部で間違いないわ」
セリファ「コッチは・・・言うなれば「裏」本部といったところね」
エリシア「「裏」・・・ですか?」
ラン「さあ入るぞ、ここからは私語を慎みなさい」
〇教会の中
大司教「待っていたぞ、ラン、セリファ」
大司教「そしてエリシアだったな、大きくなった」
エリシア「お久しぶりです、大叔父様」
セリファ「叔父様、お久しぶりです」
ラン「それで早速なのですが・・・」
大司教「あぁ・・・」
ラン「この子が、「まもりがみ」様」
大司教「神託を受けたのは、出産の前日」
大司教「母親は流れ者で、金もなく町はずれで野営していたところ急に産気づいた」
大司教「私達が発見した時、母体はかなり疲弊していてな」
大司教「病院に運び込んだ時には、すでに意識がもうろうとしていた」
〇城の救護室
???「お願いします・・・子供だけは・・・お腹の子供だけは・・・助けて下さい・・・」
〇教会の中
大司教「母親は、最後にそう言って息を引き取った・・・」
セリファ「・・・」
大司教「何とか子供は産まれたのだが・・・」
大司教「伝承では「まもりがみ」として産まれた子は、覚醒まで親元で「守り神」として育てねばならない」
大司教「愛と誠を教え、与え、そして育まねば、「魔護神」へと至る恐れもある」
ラン「失礼を承知で伺いますが、「まもりがみ」であることは間違い無いのですか?」
大司教「うむ、聖堂に居た全員が同じ啓示を受けたからな」
ラン「母親のほかに親族は?」
大司教「残念ながら父親が誰かすら分からない」
ラン「流れ者・・・か」
大司教「伝承では、育てるのが肉親でなければならない・・・とは伝わっていないのでな」
ラン「それで、我々に白羽の矢が立ったと・・・」
大司教「国で随一の武と勇を兼ね備えた其方だ、これ以上の適任者はいまい」
大司教「勿論、強要はできぬが・・・」
ラン「いえ、「まもりがみ」様を託されるとはこれ以上ない誉れ」
ラン「喜んでお引き受けいたします」
大司教「感謝する」
ラン「王にも話を通しておいた方が良いでしょうか?」
大司教「いや、この件に関して他言は控えてくれ」
大司教「万が一にも他国に知られてはマズい」
大司教「世界には「魔護神」を信仰する宗教や国も多々存在するからな」
大司教「下手に目立つ行動を起こしては、勘ぐられる可能性もある」
大司教「世界の何処かで「まもりがみ」が誕生したことは、どこの信徒にも啓示があっただろうからな」
ラン「なるほど・・・」
…「・・・」
セリファ「初めまして、これからは私達がアナタの家族よ」
…「・・・」
セリファ「ほら、エリシアも」
エリシア「・・・」
エリシア「・・・可愛い」
エリシア「初めまして、私はエリシア」
エリシア「アナタの・・・お姉ちゃんだよ」
〇レンガ造りの家
エリシア「はぁあああああ!」
傭兵「ま、参りました!エリシア様!私の負けです!」
エリシア「はぁはぁはぁはぁ・・・」
エリシア「次の方!お願いします!」
セリファ「・・・どうしたのかしら、あの子」
セリファ「今までも剣の稽古は熱心だったけれど、最近は特に気合が入っているというか・・・」
ラン「結構な事じゃないか」
ラン「エリシアの才能は俺を凌駕する、鍛えるほどに強くなろう」
ラン「あ奴にも「まもりがみ」様を守護するという我等の使命に、何かしら思う所があるのかも知れん」
セリファ「「まもりがみ」様、ですか・・・」
セリファ「それは多分、少し違うと思いますよ」
ラン「?」
エリシア(強くなる・・・)
エリシア(強くなって、アリエイルは・・・弟は私が護るんだ!)
〇霧の立ち込める森
レオナルド「下がれ小隊長!コレ以上は無理だ!」
レオナルド「エリシア小隊長!下がれ!!!」
エリシア「先に行って下さい!殿は私が勤めます!!」
エリシア(ここで敵軍を抑えきれなかったら、我が国は蹂躙される!)
エリシア(アリィの居る故郷だって、きっと・・・)
エリシア「だから、ここで止める!」
「はぁ・・・まったく」
ガロ「小隊長になってもジャジャ馬なのは変わらないんすねぇ」
エリシア「ガロさん・・・」
レオナルド「エリシア小隊長の判断は悪くない・・・」
エリシア「副長・・・」
レオナルド「しかし、お前一人では無理だ」
レオナルド「それでは的確に戦況を読めたとは言えんぞ」
ガロ「そうそう、時に周りを頼ることも必要っすよ」
ガロ「護りたい物が、あるんすよね?」
エリシア「・・・はい」
レオナルド「我等も同じだ」
ガロ「そーいうわけで、お供するっすよエリシア小隊長殿」
エリシア「ありがとうございます・・・」
エリシア「先に行きます!」
ガロ「・・・まったく、お嬢様のお守りも大変っすね」
レオナルド「仕方あるまい・・・」
レオナルド「亡き団長殿の後を継ぐべきは俺でもお前でもない、エリシア小隊長だ」
レオナルド「ここで死なせる訳にはいかん」
ガロ「同感っす」
レオナルド「死ぬなよ、あのジャジャ馬は俺一人では手に余る」
ガロ「もちろんっすよ」
〇城の客室
エリシア「アリィ・・・」
エリシア「アナタはただ生まれてきただけなのに、誰よりも重い宿命を背負っている」
エリシア「出来ることなら変わってあげたい」
エリシア「でも、いくら考えても私にできることはこれしかなかった」
エリシア「強くなって、アナタを護ることしか・・・」
アリエイル「・・・」
アリエイル「・・・ん」
アリエイル「アレ?・・・お姉様・・・」
エリシア「すまない、起こしてしまったか・・・」
アリエイル「・・・どうされたんですか?」
エリシア「いや、ただアリエイルの顔が見たくなっただけだ」
アリエイル「・・・」
エリシア「今日は疲れただろう、気にせず眠りなさい」
アリエイル「・・・はい」
アリエイル「・・・お姉様」
エリシア「ん?」
アリエイル「ありがとうございます」
エリシア「・・・何のことだ?」
アリエイル「えへへ・・・」
エリシア「ふ・・・」
アリエイル「おやすみなさい」
エリシア「ああ、おやすみ」
エリシア(・・・アリィ)
エリシア(護るよ、何があっても・・・)
エリシア(アナタが、誰であっても・・・)
〇養護施設の庭
ガロ「おはようございまっす、団長殿」
レオナルド「おはようございます」
エリシア「ああ、おはよう」
アリエイル「はっ、はっ、はっ・・・」
ガロ「おお、今日もがんばってるっすねぇ」
ガロ「もう止めないんすか?」
エリシア「・・・私が入隊を志した時を思い出した」
ガロ「はぁ?」
エリシア「強くなりたいと思う気持ちを邪魔する権利は、誰にもない」
レオナルド「確かに」
ガロ「・・・そうかもっすね」
ガロ「まぁ、あの時のバーサーカーみたいな団長殿と比べるのもどうかと思い・・・」
ガロ「ぐほっ!」
エリシア「余計な事は言わんで良い」
衛兵「失礼します!」
衛兵「バベル騎士団長殿!国王陛下がお呼びであります!」
エリシア「わかった」
エリシア「では悪いが・・・」
ガロ「はいはい、アリエイル様のことはお任せを」
エリシア「本当にタフだな・・・」
エリシア「まぁいい、頼んだ」
レオナルド「お前、あまり団長殿をからかうなよ・・・」
ガロ「いやいや、ジャジャ馬でも張り切り過ぎは疲れるっしょ」
ガロ「偶には強制的に緊張をほぐしてやらないと」
ガロ「まだまだ俺達にとっては妹みたないモンなんだし」
レオナルド「・・・まったく」
〇謁見の間
エリシア「朱凰騎士団団長エリシア・バベル、まかりこしました」
国王陛下「・・・」
エリシア「陛下?」
国王陛下「最悪の事態だ」
エリシア「?」
国王陛下「隣国バルバスが、我が領土へ向けて侵攻を開始したとの報告が上がった」
エリシア「な!?」
国王陛下「講和条約など、しょせんは紙切れでしかないということか・・・」
エリシア「そんな・・・まさか・・・」
国王陛下「朱凰騎士団団長エリシア・バベルよ」
国王陛下「速やかに迎撃準備を整えよ、全体の指揮は貴殿に一任する」
エリシア「承知いたしました」
エリシア「・・・」
エリシア(これは・・・もしや・・・)
エリシアさまの性癖フルオープンな前回から一転、とっても素敵な過去話ですね! 各キャラの心根を感じられて、物語自体にも一層愛着が増しました!