エピソード1(脚本)
〇枯れ井戸
ソラ(毎日働いて楽しいことなんてないな。趣味も最近楽しく感じなくなってしまった。いっそ井戸に身を投げるか)
ソラ(ああやっぱ俺鬱なのかなぁ?精神病院いった所で診断されても会社クビにされるだけだろうし)
ゴソゴソ
よう、大分疲れてんな。
ソラ「えっ誰もいないよな。幻聴かよ」
バカヤロウ。幻聴じゃねーだろ。よく見ろ
ソラ「ああ𓆏が喋って、、る?ヤバいなクスリ極め過ぎたか」
カリエル「そうだな。そういうことにしておこうか。レジェンドカエルのカリエルと話せてお前はラッキーだな」
ソラ(どうせなら妄想ならエルフが現れてくれたら良かったのにな。気持ち悪い生き物だ。まるでゴブリンじゃないか)
カリエル「お前そういう目で見るの止めろ。たまに人間に会えば化け物を見るように怯えやがる。ったく俺は昔の恩返しに来てやっただけさ」
カリエル「覚えて無いか?お前昔オタマジャクシ育てたことあるだろ」
カリエル「思い返せば決まって出される食事ってのは悪くない生活だったけどよ、狭い水槽に飽き飽きして外に飛び出したのさ」
カリエル「あれから色々ヤバい目にあったけどなんとか生き抜いてやった。お前とは二度と会うことは無いと思ってたんだが」
カリエル「まさかお前の方から又会いに来るとはな。声かけるか迷ったが俺の家に落ちて死なれたらたまったもんじゃねえからよ」
ソラ「えっと僕はオタマジャクシなんて飼ったことないですよ。ヌルッとしてて触りたくないし見てるだけで気持ち悪いですから」
カリエル「なんだと。ケンカ売っとんのか。オタマジャクシの可愛さがわかんねとか、両性類の凄さがお前は何もわかってねな」
カリエル「・・・まぁ俺も人の顔なんて似たようにしか見えんけどよ。ひょっとしたらお前じゃなかったかもな」
カリエル「・・・」
ソラ「・・・」
ソラ「あなたのお家の井戸には飛び込まないので帰っていいでしょうか」
カリエル「ふざけんな。ただで帰れると思うなよ」
ソラ「なら殺して下さい。むしろ助かります。苦しまないようにひとおもいでお願いします」
カリエル「バカヤロウ。これもなにかの縁だ。ガマの油をやるから飲んでみろ」
ソラ「えっガマの油って切り傷とかに塗って傷を塞ぐんじゃないんですか。飲むのは流石に抵抗があって無理です」
カリエル「飲めば気分が穏やかなまま死ねるぞ。ハーブと蜂蜜で飲みやすくしてあるから美味いぞ」
ソラ「うっわかりました。ごくごく」
カリエル「ここで死なれたらかなわん。半日もすれば楽になれるから街に戻れ。じゃあな」
ソラ「眠くなってきた。ヤバいな。もう歩けない Zzz」
〇雲の上
ソラ「アレッ?雲の上。無事死ねたのか」
理想の嫁「なわけねーんだよ。しなせねーために夢見させてんだよ」
ソラ「いきなり誰だよ。テロップで理想の嫁って書いてあるけど絶対理想の嫁じゃないだろ」
理想の嫁「オマエみたいなメガネは尻たたかれなきゃだめなんだよ。一人でグダグダ心の内側に溜め込んでるならガス抜きしてやる。てやー」
理想の嫁「ほれ。思った事全部吐き出しちまえ。いいぜ、綺麗なお姉さん惚れましたって告白しても」
ソラ「コミュ障で話すの苦手なんだよ。人と話したって何も面白くないし、必要最低限の会話できれば良いだろ」
理想の嫁「必要最低限の会話できてないから死のうとしてるんじゃないの?」
ソラ「別にコミュ障は関係ないさ。周りの人間と比べて自分の能力に価値を感じ出ないだけだ」
理想の嫁「テレビやネットで人気あるやつと比べてたって虚しくなるだけなんだよ。もっと狭い世界で考えろ。ガキの頃みたいによ」
理想の嫁「小学校の頃のなんてクラスでトップ3に入れたら注目浴びれただろ。30人クラスなら1/10の確率だからな」
理想の嫁「大人になるに連れ触れ合う世界は広がるけど、お前には広すぎたんだろうな」
ソラ「社会不適合者だからな。金持ちじゃないから引きこもりになりたくてもなれず、嫌嫌働いてるのは地獄だよ」
理想の嫁「世の中あんたみたいな人間多いんじゃないの?」
ソラ「けっこういるだろうな。自殺者や引きこもりは珍しくないからな。社会のお荷物扱いさ、生きてても死んでも」
理想の嫁「ネットでストレス発散してるやつらのセリフだろ。そんなの気にしてたらタフな政治家でもなきゃ精神壊れるって」
ソラ「会社の奴らだって俺の事見下してるさ」
理想の嫁「ハッハッ。低い立場の人間だと思ってるからな君は。見下されてると感じてるだけで、大抵はなんとも思っちゃいないさ」
理想の嫁「君だって学生の時、得意な科目で人よりちょっとできても他人を見下したりしなかっただろ」
ソラ「・・・見下したときもあったような」
理想の嫁「・・・」
ソラ「あの、そろそろ死ねませんか?」
理想の嫁「うん死ねない。ガマの油飲んでも死ねない」
ソラ「わかりました。なら、大人しく家で首吊ります」
理想の嫁「カリエルが死ぬの妨害します。苦しいだけで死ねませんよ。それでもしますか?」
ソラ「苦しみながら生きろと言うのか!」
理想の嫁「理想の嫁ですから、夫には死ぬまで働いて貰います」
ソラ「・・・お前を殺して僕も死ぬ!」
理想の嫁「例え私が死んでも貴方だけは死なせない」
〇刑務所の牢屋
警察官「おい、いい加減お前の妄想だと認めろ。被害者届けも出てないし防犯カメラでもお前以外井戸に近付く人物はいなかったぞ」
ソラ「僕は嫁を殺したんだぞ。早く殺人罪で死刑にしろよ」
警察官「何度も言っているが、不法侵入及び器物損害だからな。殺人を自供したから警察は総動員で探してるんだぞ」
警察官「殺人が嘘でもしばらくは出られないからな覚悟しろよ」
ソラ「本当に殺したのに見逃してくれるなんて、後で民衆にバレたらとんだ汚点だぞ」
警察官(チッ。嘘発見器でもこいつの自供に嘘がないことがわかっている。頭がイかれてやがる奴ほど面倒くさいったらないぜ)
警察官「そうだな。じゃあ犯行に使った凶器はどこで手に入れたんだ?」
ソラ「気づいたら持っていた」
警察官「犯行後に凶器はどこにやった?」
ソラ「殺したあと、眠気が凄くて眠くなって記憶が飛んでいる。気づいたら警察車輌の中だった」
警察官「犯行に使った凶器も見つからず、被害者も見つからず、薬物反応もないし自殺をほのめかしてるから保留してるんだよ」
ソラ(埒があかない。手を変えるか)
ソラ「あぁそうだ。あれは夢だったかもな。俺は誰も殺してない。山で道に迷い、空腹で野草を食べた為に頭がおかしくなっていたようだ」
警察官「ようやく思い出したか。数日で出られるだろうから変な妄想思い出すなよ」
ソラ「あれは妄想なんかじゃない。確かに俺はあの女を殺したはず」
理想の嫁「あらあら随分快適な牢屋ですね。お家賃は無料なのでしょうか?フフッ」
ソラ「お前!生きていたのか?どうやって入ってきたんだ」
理想の嫁「はい生きております。なので殺人不成立。残念でしたね」
ソラ「今すぐ看守を呼んでやる。おい看守早く来い。こいつが、俺が言った女だ」
カリエル「そうだな。お前の言い分は正しかった。よって釈放してやるから、シャバの空気をたっぷり吸い込んで謳歌しな」
ソラ「お前もか!なんで僕の邪魔をそんなにするんだ」
理想の嫁「だって私未亡人になりたくありませんもの。せっかく会えたばかりなのに」
カリエル「特製のガマの油は願望を叶えてくれる。あくまで妄想として視覚できるという形だけどな。で何が見えてるんだ?」
ソラ「こいつが願望だって言うのか。自称、理想の嫁とか言ってるこいつが」
カリエル「そうか、どうやらお前さんは嫁さんが必要だったんだな」
ソラ「僕はそんなこと思ったことないぞ」
カリエル「お前が望まなくても、最適解は間違いなくお前の隣りにいる人だろうぜ。仲良くやれよ」
理想の嫁「現実で好きな相手の方が見つかりましたら、私に気兼ねなく離れて頂いてよろしいですよ。俺の嫁は寛大ですから」
〇事務所
幼馴染の同僚「お前最近雰囲気変わったな」
ソラ「あぁまあな」
幼馴染の同僚「なんだ彼女でも出来たか?」
ソラ「心の底から理解できる相手に巡り会えたって感じかな」
幼馴染の同僚「ノロケかよ!今度紹介しろよな」
ソラ「君には紹介できないかな」
幼馴染の同僚「なんだよ。よっぽど綺麗なのか。まさか有名人じゃないだろうな」
ソラ「神様の使いみたいな人だよ」
幼馴染の同僚「どこで知り合ったんだよ。妄想じゃないのか」
ソラ「そうだね。妄想だよ。だから君には会わせられないんだ。残念だったね」
幼馴染の同僚「いや俺が悪かった。妄想じゃないよな。だから今度会わせてくれよ。じゃあちょっと出かけてくるな」
〇枯れ井戸
幼馴染の同僚「元気になって良かった。ありがとうな」
カリエル「昔世話になった礼だかんな。そんな気にすんな」
とっても不思議で優しいせかい、結果的に主人公にプラスに作用したことを喜ばしく思っていたら、このラスト!素敵な心遣いですね!
まさかのオチになんだか切ないようなホッとしたような。自分には誰もいないと思っていても、気にかけてくれる人は意外と身近にいるということですね。命を絶つくらいなら、カエルでもカッパでも意外と毒舌な理想の嫁の幻覚でも、なんでも借りられる助けは借りたほうがいいと思います。