エリシアと守り神(脚本)
〇謁見の間
国王陛下「仮面の男・・・か」
国王陛下「そやつは「光を捜しに来た」、そう申したのだな?」
エリシア「間違いございません」
国王陛下「光・・・さすがにそれだけでは何を指してるか分からんな」
エリシア「申し訳ございません、私がヤツを逃がさなければ・・・」
国王陛下「いや良いのだ、族を手引きしている者が判明しただけでも充分だ」
エリシア「しかし国宝をお借りしておきながら・・・」
国王陛下「あぁ幻明珠か、幻惑系の術を強制解除させる魔道具」
エリシア「はい、そのお陰で彼奴の変装を破れました」
国王陛下「それもエリシアが見破ったからだろう」
国王陛下「「王都の主要組織に偽者が紛れ込んでいる」とな」
国王陛下「アレは効果範囲が狭く、ピンポイントで使用せねば意味がない」
国王陛下「それに、どうせ倉庫で埃をかぶっていた名ばかりの国宝だ」
国王陛下「エリシアの役に立てて、国宝も喜んでいるのではないか?」
エリシア「しかし・・・」
国王陛下「ふむ・・・」
国王陛下「エリシア騎士団長は優秀だが、少し気負い過ぎる面があるようだな」
エリシア「そうでしょうか・・・」
国王陛下「貴殿の所に居る小隊長・・・ガロだったか」
国王陛下「アレくらい肩の力を抜いても良いのではないか?」
エリシア「アレは抜き過ぎです」
国王陛下「はっはっはっ確かにな」
国王陛下「取り合えず今日は休め、慣れぬ潜入捜査で疲れているだろう」
エリシア「いえ、疲れなど・・・」
国王陛下「良いから休め」
国王陛下「そうだ、アリエイルと食事でもしてくると良い」
国王陛下「王都一のレストランを予約しておいてやろう」
エリシア「そんな・・・陛下にそこまでして頂く訳には・・・」
国王陛下「アノ子もいずれ、お前と肩を並べて国を支える人材となろう」
国王陛下「大事にしてやると良い」
エリシア「・・・恐れ入ります」
〇要塞の廊下
エリシア「気負い過ぎ・・・か」
エリシア「いや、まだまだ足りない」
エリシア「この程度で潰れていては、私が本当に背負うべき物を支えられない」
エリシア「・・・良し!せっかくの陛下のご厚意だ、ありがたくお受けしよう」
エリシア「アリィとお食事~♪」
〇城の客室
アリエイル「・・・」
アリエイル「はい、どうぞ・・・」
エリシア「邪魔するぞ」
アリエイル「お姉様・・・」
エリシア「アリエイル、大丈夫か?」
アリエイル「は、はい、大丈夫です」
エリシア(少し無理をしているか?)
エリシア(仕方ない、あんな目に会ったんだ)
エリシア「陛下にお暇を頂いてな、久しぶりに外で食事でもどうだ」
アリエイル「・・・お食事ですか?」
エリシア「・・・嫌か?」
アリエイル「い、いえ、喜んでお供します」
エリシア「・・・そうか、では後でな」
アリエイル「はい」
〇要塞の廊下
エリシア「・・・アリィ」
〇大広間
エリシア「うむ、さすが王都一のレストラン」
エリシア「前菜からメインまで申し分なし、だな」
アリエイル「はい、とても美味しかったです」
アリエイル「しかしお姉様、なぜまたメイド服を?」
アリエイル「もう、任務は果たされたのでは?」
エリシア「そのはずだったのだが、あのようなことがあったのでな」
エリシア「引継ぎも含めて今しばらくは通うことになった」
アリエイル「それでは、今日もまたこれからお仕事が?」
エリシア「そうだな今の私は教師だ、教師としてアリエイルの・・・」
エリシア「いえ、アリエイル君の相談にでも乗ってみようかと思ったんですよ」
エリシア「元気が無さそうだったから」
アリエイル「・・・」
エリシア「・・・怖かった?」
アリエイル「いいえ、怖くはありませんでした」
アリエイル「お姉様が・・・エリィ先生が近くに居てくれると思っていたから・・・」
エリシア「そう、信用してくれているのね」
アリエイル「・・・でも、それが情けなくて・・・」
アリエイル「仮面の男に言われました・・・」
〇ファンタジーの教室
ウェル「君は非常に真面目で優秀です、しかしどこか甘えがある」
ウェル「常に誰かに頼ろうとしている」
ウェル「英雄ラン・バベルの後継ぎとして、それで良いのですか?」
〇大広間
アリエイル「言われた瞬間に、自覚してしまいました」
アリエイル「そして、情けなく思いました・・・」
エリシア「アリエイル君・・・」
アリエイル「僕もエリィ先生の様に強くなりたいです」
アリエイル「依存しないよう、迷惑を掛けないように・・・」
アリエイル「誰にも頼らないように・・・」
エリシア「アリエイル君、それは違う」
アリエイル「・・・え」
エリシア「私はアリエイル君より10年先に産まれた、だからアリエイル君より強い」
エリシア「だから私はアリエイル君を守る」
エリシア「そして私も、お父様やお母様に守られて来た」
エリシア「私が弱かったから・・・」
エリシア「でもね、先日お父様から私がお父様を超えたと仰って頂いた」
エリシア「アリエイル君も聞いていたでしょう?」
アリエイル「はい・・・」
エリシア「だから、これからは私がアリエイル君を、そしてお父様とお母様を守る」
エリシア「アリエイル君も同じ、いつかお父様や私を超える日が来る」
エリシア「そうなったら、アリエイル君が私達を守ってくれれば良い」
エリシア「それは支え合いと言うの、依存とは別物よ」
アリエイル「支え合い・・・」
エリシア「そう、だから今は焦らなくて良い」
エリシア「私も16年の月日の末に、お父様に認めて頂いたのだから」
アリエイル「でも、僕がエリィ先生を超えられるのでしょうか・・・」
エリシア「武力でも知力でも感性でも、人は何かしらに秀でている」
エリシア「逆に、全てを備えている人もいない」
エリシア「だから、私にできないことでアナタができることもきっとある」
エリシア「アナタなら私を超えられる、アナタはお父様とお母様の子」
エリシア「そして、エリシア・バベルの弟なんだから」
アリエイル「・・・お姉様」
エリシア「アリエイルが私を超える日、楽しみにしている」
アリエイル「・・・」
アリエイル「はい、いつの日かお姉様を超えられるように頑張ります」
アリエイル「何で超えられるかはわかりませんけど・・・」
エリシア「なに、毎日頑張って勉強して遊んでいればいずれ見付かるだろう」
エリシア「焦ることはないさ」
アリエイル「・・・お姉様」
エリシア「・・・ふふ」
エリシア「さあ、最後のデザートを楽しもうか」
エリシア「陛下が仰るにはデザートも絶品らしい」
エリシア「今日は本場のチョコレートを使った菓子のようだぞ」
アリエイル「はい、楽しみです」
エリシア(あぁ~・・・やっぱりアリィは笑顔が良い・・・)
〇大広間
アリエイル「そう言えば、お姉様は「守り神」と呼ばれているのですね」
エリシア「どこでそんな話を・・・」
アリエイル「クラスメイトが噂していたんです」
アリエイル「みんなお姉様のことを国の「守り神」だと言っていました」
エリシア「ありがたい話だが過大評価だな、私はただの人間だよ」
アリエイル「「守り神」とは伝記などで語られる神の一柱ですよね?」
アリエイル「僕は勉強不足で良く分からないのですが・・・」
エリシア「あぁ、家にはその手の書物が少なかったからな」
アリエイル「お姉様、教えて頂いても宜しいですか?」
エリシア「「守り神」をか?」
アリエイル「はい、お姉様が例えられる神様のことを知りたいです」
エリシア「そうだな・・・」
〇星座
「守り神」の伝説はこの国だけではなく、世界中に伝わっている
数百年に一度、世界の何処かで神の子「まもりがみ」が生まれる
神の子は天から授かる世界の救世主
「まもりがみ」は、正しく育てば罪無き人々を守る善神になる
善神である「守り神」は多くの国で信仰されている
しかし悪意に染まれば悪神にもなり得る存在
悪に染まった神の子は「魔護神(まごがみ)」となり、悪意を生みだす存在になる
太古の昔、「魔護神」が幾つかの国を亡ぼしたという伝説も残っているくらいだ
そして、そんな悪神を信仰する国もある
〇大広間
アリエイル「はぁ・・・そのような神様だったのですね」
アリエイル「「守り神」様は女神様なのですか?」
エリシア「いや、記録上「まもりがみ」は女性に限らない」
エリシア「物語では女神として語られることが多いようだが・・・まぁ創作も混じっているかもな」
エリシア「因みに我がビルトニアの国教、シンゲツ教でも「守り神」を崇拝している」
エリシア「そして本部の神殿には「守り神」とする女神像もある」
エリシア「ゆえに国に益をもたらした者、特に女性を「守り神」の生れ変りと称する風習があるのさ」
アリエイル「なるほど、それでお姉様が「守り神」と呼ばれていらっしゃるのですね」
アリエイル「先の戦で多大な戦果をあげられたから」
エリシア「・・・戦果と言えば聞こえは良いが、しょせん人殺しだからな」
エリシア「「守り神」など恐れ多い」
エリシア「お父様の様に人類の敵である魔獣相手なら、英雄とも「守り神」とも呼ばれるだろが」
エリシア「私が胸を張れること等なにもないさ・・・」
アリエイル「そ、そんな事はありません!」
エリシア「!?」
アリエイル「先の戦は、隣国の理不尽な侵攻が切っ掛けだと聞きます!」
アリエイル「お姉様は国民を護ったにすぎません!」
アリエイル「お姉様は・・・お姉様は・・・」
エリシア「お、落ち着けアリエイル、食事の席だ」
アリエイル「も、申し訳ございません・・・」
エリシア「・・・」
エリシア「・・・いや、ありがとう」
エリシア「100万人の賞賛より、アリエイルが認めてくれたことの方が嬉しいよ」
アリエイル「・・・お姉様」
エリシア「さあ、食事が済んだら今日は早く休もう、また明日から勉強を頑張らねばな」
アリエイル「はい」
アリエイル「・・・」
アリエイル「お姉様、あの・・・」
エリシア「ん?どうした?」
アリエイル「大好きです♪」
エリシア「ぐぅはぁあ!!」
アリエイル「お、お姉様!」
(不意打ちぃいいい!不意打ちすぎるぅううう!)
アリエイル「お姉様!しっかり!」
エリシア「ア、アリエイル・・・大丈夫だ・・・」
アリエイル「で、でも、また鼻血が・・・」
エリシア「ちょっと・・・デザートのチョコが・・・多かった・・・だけ・・・」
アリエイル「お姉様ー!!」
悩めるアリィ君と守り神の話、とっても素敵なお話ですね。幼いながらも自らのあるべき姿を考えるアリィ君、なんて可愛らしい!心温まる展開を満喫していたところの、強烈なオチに笑いました!