2話 二人目の王(脚本)
〇睡蓮の花園
天界の男「閻魔よ・・・」
天界の男「やはり目覚めてしまったか・・・」
天界の男「仕方あるまい・・・」
〇学園内のベンチ
閻架「うーん・・・」
小野「どうされたのですか?」
閻架「うわ! びっくりした」
小野「読書をされていたのですね」
小野「その本は・・・『地獄図鑑』?」
閻架「ちょっと勉強しようと思って図書館から借りたんだ」
閻架「篁のおかげで記憶はあるけど、やっぱり実感がなくて」
小野「あれは私の把握している記憶を渡しただけですからね」
小野「私にも見せて下さい。どれどれ・・・」
小野「・・・閻魔王」
閻架「うん?」
小野「この本、捨てて下さい」
閻架「はあ!?」
小野「何ですか!この肖像画! 全然違うじゃないですか!」
小野「私はともかく、あなたがこんな顔で描かれているのが納得いきません!!」
閻架「ええ~っ!?」
閻架(そういえば記憶の中の閻魔王って 格好良かったもんなあ・・・)
〇学園内のベンチ
地獄には閻魔の他に九人の罪人を裁く王がいて、十王と呼ばれていた。
閻架「えっと、裁く順番として 1番目が秦広王(しんこうおう)、 2番目が初江王(しょこうおう)か・・・」
閻架「他の九人も俺みたいに転生しているのかなあ」
小野「あなたを追うように転生した者もいれば、」
小野「直接この世に降りたり、全く姿を現さなかったりする者もいます」
閻架「閻魔だった俺は罰で転生させられたってことだけど、一体何の罪を犯したんだ?」
小野「それが、私も存じ上げないのです」
小野「他の十王の中に、もしかしたら知っている者もいるかもしれませんが」
すると、小気味の良い音が校庭の一角から聞こえた。
小野「この音は、弓矢ですか?」
閻架「あっちに弓道場があるんだ」
小野「懐かしいですね 私も昔、たしなんでいました」
閻架(そういえば篁って元々平安時代の人なんだっけ)
閻架「見に行ってみる? 同じクラスの初江もいると思う」
〇道場
初江「見学に来て下さって嬉しいです」
初江「先生も弓道の経験があるんですか?」
小野「はい、千年以上昔ですけど」
閻架「わわっ、篁・・・先生!」
初江「あはは、先生面白いですね」
閻架「あ、あはは・・・」
小野「良かったら、勝負しませんか」
小野「一本競射で、より的の中心に近い方に当てたら勝ちというのはどうでしょう」
初江「わかりました! 受けて立ちます!」
閻架「なあ、何でわざわざ勝負を申し込んだんだ?」
小野「少々、確認したいことがありまして」
初江「はい、弓と矢、この手袋が弓かけです」
初江「先生からどうぞ」
〇道場
小野「行きますね」
弓道部員「当たった!」
弓道部員「先生すごい!」
閻架(さすが地獄の補佐官 やっぱり上手いんだ・・・)
初江「お見事です! 次は私ですね」
弓道部員「あー、残念。外れだ・・・」
弓道部員「でも、こんなに矢がぶれるなんて珍しいね」
初江「うっ・・・」
閻架「初江!?」
初江「ごめんなさい、急にふらついて・・・」
閻架「初江、しっかり・・・!」
弓道部員「俺も何だか変だ・・・」
弓道部員「うう・・・」
見ると、周りの弓道部員もバタバタと倒れていった。
閻架「何が起こっているんだ!?」
小野「これは、何者かに魂が奪われている!?」
閻架「何だって!?」
小野「このようなことが出来るのは、限られた者しかおりません。まさか・・・」
閻架「とにかく、皆を助けないと!」
閻架「でも、どうしたら・・・」
小野「浄玻璃の鏡で魂の行方を探してみてはいかがでしょうか」
閻架「浄玻璃の鏡って?」
小野「鏡に人の善悪の行いを映す閻魔王の能力です」
小野「こちらの世の鏡でも、今現在の魂を奪っている者の姿を映すはずです!」
閻架「わかった! この姿見用のでかい鏡を使って・・・!」
〇学校の屋上
〇道場
閻架「いた! 学校の屋上にいる!」
小野「向かいましょう」
〇学校の屋上
謎の男「・・・やっと会えたな」
閻架「初江や皆の魂を返せ!」
謎の男「断る、と言ったら?」
閻架「力ずくでも取り返す 篁、協力してくれ!」
小野「御意」
謎の男「小野篁・・・」
謎の男「本当にお前は、どこまでも閻魔の犬なんだな」
閻架「俺達の正体を知っている!?」
謎の男「ああ、知っているよ 裏切りの閻魔・・・!」
閻架「!?」
小野「閻魔の部下であることは光栄ですが」
小野「その言い方は気に入らないですね」
篁の手元に弓矢が顕現した。
閻架「俺も・・・!」
謎の男「炎を放ったら、俺の周りにある魂も一緒に燃えてしまうぞ?」
閻架「ぐっ・・・」
小野「ここは私にお任せ下さい」
小野「はっ・・・!」
閻架「えええっ!?」
謎の男「魂に向けて矢を放っただと・・・!?」
小野「いえ、この魂に神通力を注いだのです」
小野「さあ、あなたも目覚めの時ですよ」
小野「初江さん。いえ・・・」
小野「地獄の十王が一人、 初江王(しょこうおう)!!」
閻架「初江が、地獄の王!?」
謎の男「くそっ・・・! まさかお前が初江王の生まれ変わりだったとは・・・!」
初江「皆の魂を奪った罪、裁かせて頂きます」
初江「『罪の重さを計りましょう』」
謎の男「ぐわああっ」
小野「初江王は特に盗みの罪の裁きを得意としています」
小野「三途の川の濡れた衣によって、罪の重さを計るのです」
閻架「周りの魂が消えていく!」
小野「奪われた魂が元の持ち主の体に、戻っていくようですね」
小野「盗みの罪が祓えたようです」
小野「さあ、あなたの力でとどめを!」
閻架「あ、ああ!」
閻架(でも、人の魂を盗んだ罪は、地獄の業火が妥当なんだろうか?)
閻架(それに、何故この男はこんなことをしたんだろう?)
???「そこまでだ!」
〇学校の屋上
天界の男「ふう、間に合った」
閻架「誰だ!?」
小野「あなたは、天界の者!?」
天界の男「この者はとても傷付いて、このようなことに及んだのだ」
天界の男「心を癒せば、地獄に落とす必要などない」
天界の男「天界の力で保護しよう」
閻架「待てよ、それじゃあ・・・」
天界の男「全て、あなたのせいだ」
閻架「え・・・」
天界の男「閻魔王。あなたは天界の助けになるために、人間として生まれた」
天界の男「その心は、人々を救うために尽くすのだ」
閻架「俺の、せい・・・?」
天界の男「さあ、行くぞ」
魂を奪った男は、最後に俺のことをじっと見つめた気がした。
けれど、いつの間にか二人は姿を消していた。
〇学校の屋上
初江「閻架・・・」
閻架「初江、無事で良かったよ」
閻架「あれ、初江王と呼んだ方がいいのかな? でもやっぱり、初江は初江だ」
閻架「助けてくれて、ありがとう」
閻架「あのままじゃ、他の皆の魂を助けられたかわからなかった」
初江「私は閻架を助けるわ」
初江「そのために私は、転生して生まれ変わる道を選んだのだから」
閻架「初江・・・」
初江「だから・・・どうかそれ以上傷付かなくていいの」
閻架「あ、気付いていたんだ」
天界の男「『全て、あなたのせいだ』」
閻架「覚えてないから、わからないけど 俺のせい、だったみたい」
閻架「本当はまだ戸惑っているんだ 罪人を裁くのも、地獄ってのも」
閻架「人を救うために人間に生まれた、って言われたけど」
閻架「そんな俺が、地獄の再編をしてもいいのかなって」
初江「私もどうして閻魔王が転生したのか、詳しい事情は知らないの。でも」
初江「閻魔王はいつだって正しかった」
初江「苦しい決断も経験もしてきたけど、いつだって真っ直ぐあろうとしていた」
初江「だから閻架が正しいと思うことを信じて、頑張って」
閻架「ありがとう、初江」
小野(魂を奪う力を持つ者と天界の者・・・)
(きっとまた閻魔王の前に現れる)
小野「今のままのあなたでは、優しすぎる」
小野「一日も早く、王らしくなってもらわなければ」
小野「でないと他の十王が揃っても、地獄の再編を阻止されてしまう」
続く・・・
わあ〜!!大好きな十王の揃う話、最高に興奮します!!💕しかも篁さんもいる〜!!✨続き、楽しみすぎます!
初江王ってば美女…✨✨
推しは変成王なので登場がたのしみすぎます〜💓