真昼の吹雪

危機綺羅

2.吹きすさぶ雪の名前(脚本)

真昼の吹雪

危機綺羅

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〇教室
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(──まったく、常夏さんのせいで朝から疲れたわ)
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(真冬の姫君だなんて、好きで呼ばれてるわけじゃないのに・・・)
???「九冬ちゃーん・・・!」

〇黒背景
???「だーれだ?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「常夏さんでしょ。さっさと離れてくれる?」

〇教室
???「正解!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「正解? 私、本当に正解したの!?」
???「いやだなぁ、どこからどう見ても真昼ちゃんでしょ?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「どこをどう見たらいいか教えてくれる?」
???「360度、骨の髄まで真昼ちゃんだよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「骨の髄だけの間違いでしょ・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「もうっ! なら真昼ちゃん以外の何だっていうの?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「え、いや、常夏さん?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なら誰よ、そこの不審者!?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「いやー、いつもありがとうございます」
???「いえいえ、また呼んでください」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「本当に誰なの・・・?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「時々学校にいる人だよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「説明になってないのよ・・・」

〇教室
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「──今日はここまで。午後からの授業も気を抜かないようにな」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「いやっほー! お弁当の時間だー!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「九冬ちゃん、一緒に食べよ!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なんで私が、あなたと一緒に食べなきゃいけないの?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「・・・それもそうだね。じゃあ、一人で食べるよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「そ、そうよ。そうしてくれる?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(これでいいのよ。私は誰とも仲良くしない)
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(──あ、お弁当忘れてる)
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(朝、常夏さんが迎えに来てバタバタしたから・・・)
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「九冬ちゃん、もしかしてお弁当忘れたの?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・別に、常夏さんには関係ないわ」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「そんなことないよ! ほら、これ──」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「うん、美味しい!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なによ、自慢のつもり?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「うん、自慢してる!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「は?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「いやー、優越感でご飯が進むね!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「あ、あなたね、誰のせいで──」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「というわけで、これはお礼だよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「へ?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「さあさあ、一緒に食べようねー」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なんなのよ、もう・・・」

〇教室
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「九冬ちゃーん、一緒に帰ろー!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「・・・あれ?」

〇学校の昇降口
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(──なんとか捕まらずに済んだわね)
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「お、九冬! 今から帰るのか?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「太陽先生・・・!」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「・・・一人か? そろそろ暗くなるし、ちょっと心配だな」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「そ、それなら先生が一緒に・・・なんて・・・」
???「ここにいるよ、もう一人ね!」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「あ? なんだ真昼もいたのか──」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「いや、誰だよ!?」
「危うく置いて行かれるところだったよ・・・」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「流そうとするな! 誰だ今の!?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「やだなぁ、時々学校にいる人だよ」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「不審者の存在を笑って話すな」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「それより九冬ちゃん! なんで先に行っちゃうのさ!?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「私、九冬ちゃんを探して一回家まで行ったんだよ!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「そもそも待ち合わせなんてしてない──」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「家? 家まで行ったの!?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「ほらこれ、忘れたお弁当預かってるから」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「いらないわよ! 下校前に食べないでしょ!?」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「あー、真昼が迷惑かけてるようなら、俺から注意しておくが・・・?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「そんな、太陽先生のお手を煩わせるようなことじゃ・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「待った!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「な、なに?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「なんで私は常夏で、太陽ちゃんは太陽なの?」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「哲学か?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「呼び方だよ! 私にも真昼ちゃんって素敵な名前があるのに!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「──九冬ちゃん、私のことも真昼って呼んでよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「い、いやよ。先生は特別なの!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「えー、いいじゃんかー!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「ならさ、私も吹雪ちゃんって呼ぶから。それでどう!?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「それは・・・」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「おい真昼、九冬にも事情があってだな・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「──いいんです、太陽先生」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「自分で言いますから」

〇教室の教壇
クラスメイト「九冬ちゃん、下の名前はなんて読むの?」
クラスメイト「私知ってる! ふぶきって読むんだよね」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「そうとも読むんだけど、私は違うの!」
クラスメイト「じゃあなんて読むの?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「私の名前はね──」

〇学校の昇降口
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「ブリザードよ」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「え? フブキちゃんじゃなくて?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「そうよ、ブリザードなの」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「笑いたければ笑えばいいわ! 読み方を教えるたびに、同じ反応をされるのよ!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「中学校から通名を名乗ったわ。でも私の本名を知ってる人が言い触らすの!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「仲良くなったら名前で呼び合うわよね? でも私はできないの!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「だって変な名前なんだもん! みんな恥ずかしがって呼んでくれないの!」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「九冬・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・もう、私に構わないでよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「名前で呼び合えない友達なんて、欲しくないの」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「え? かっこいいじゃん、ブリザード」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「あのね! そんな同情されたって──」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「真冬の姫君、ブリザード・・・いいなぁ・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「本気で言ってそうね・・・」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「なあ、九冬」
常夏 太陽(トコナツ タイヨウ)「真昼は変わった奴だが、たぶん九冬と仲良くやれると思うんだ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「太陽先生・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「そうだよ! 私、変わってるけど仲良くなれると思うの」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「自分で言うの、それ・・・?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)(でも、私の名前を笑わなかったんだものね)
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「──真冬の姫君なんて、これ以上変な名前も欲しくないし」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「常夏さん、仕方ないからあなたと友達になるわ」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「ダメ!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なんでここで断るのよ!?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「友達なら、名前で呼んでくれなきゃね!」

〇教室
???「吹雪ちゃーん・・・!」

〇黒背景
???「だーれだ?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「常夏さんでしょ。早く離れて」
???「ぶぶー!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「は? 常夏さんでしょ?」
???「違いまーす。さあ答えて!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「・・・時々学校にいる人?」
???「吹雪ちゃん、なに言ってるの?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「理不尽だわ!」
???「ヒントは下の名前です」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「ああ、もう・・・真昼さんでしょ」
???「正解!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「まったく・・・こそばゆいことさせないでよ・・・」

〇教室
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「時々学校にいる人じゃない! もはやなにが正解なの!?」
「いやいや、私だってば」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なんでそんなもの着てるのよ・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「吹雪ちゃんを驚かせたくてさー」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「え、常夏さん?」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「じゃあ何なのよ、そっちの子は!?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「ご苦労様、ありがとねー!」
???「また呼んでねー」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「なんなのよ、もう・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「さっそくボロが出たね、吹雪ちゃん」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「は?」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「さっき私のこと、常夏って呼んでたでしょ!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「ダメだよ、素の反応に本音が出るんだから!」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「い、いいじゃない。まだ慣れてないんだから」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「私だって、ブリザードちゃんって呼ぶの我慢してるんだからね!」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「吹雪ちゃんがどうしてもって言うからだよ? こっちの方がかっこいいのに・・・」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「みんながみんな、あなたみたいな人じゃないからよ・・・」
常夏 真昼(トコナツ マヒル)「みんなが私だったら大変だよ」
九冬 吹雪(キュウトウ フブキ)「だから、自分で言うことじゃないでしょ・・・」

次のエピソード:3.太陽に焦がれて

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