〇電脳空間
風田（フウダ）探偵「親愛なる読者のキミよ！ よく来てくれた！」
風田（フウダ）探偵「実は聴取が 少しばかり難航していてね」

〇広い公園
風田（フウダ）探偵「殺されたのは二十代の男性」
風田（フウダ）探偵「現場は深夜の公園だ」
風田（フウダ）探偵「犯人は目撃者の存在に気づき 目撃者を突き飛ばして逃走」
風田（フウダ）探偵「つまり目撃者は犯人の姿を 手の届く距離で見たわけだ」
風田（フウダ）探偵「目撃者は、深夜徘徊のボケじ・・・」
風田（フウダ）探偵「んんっ・・・ お散歩中の高齢者殿だ」
風田（フウダ）探偵「おじいちゃーん！ 犯人、どんな人でしたかー！」
目撃者「あー？　あんだってー？」
風田（フウダ）探偵「は！　ん！　に！　ん！ どんな人でしたー！ ？」
目撃者「宇宙人じゃー！」
風田（フウダ）探偵「・・・さっきからずっと この調子なんだ」
風田（フウダ）探偵「通報を受けた警察官は」
風田（フウダ）探偵「現場付近にいた不審な人物三名に 職務質問をかけた」
風田（フウダ）探偵「目撃者はこんなでも 死体はちゃんとあるわけだからね」

〇keep out
風田（フウダ）探偵「一人目は」
風田（フウダ）探偵「深夜の公園で メン・イン・ブラックばりの」
風田（フウダ）探偵「真っ黒なスーツを着ている男！」
風田（フウダ）探偵「真っ黒すぎて、ほぼ見えない！」
風田（フウダ）探偵「二人目は」
風田（フウダ）探偵「見た目は普通のサラリーマンだが 薬物中毒で」
風田（フウダ）探偵「自分は宇宙人だと つぶやき続けている男！」
風田（フウダ）探偵「三人目は」
風田（フウダ）探偵「人気アニメ 『宇宙を駆ける郵便屋さん』に出てくる」
風田（フウダ）探偵「美少女宇宙人の コスプレをしている男！」
風田（フウダ）探偵「見た目じゃわからないが 宇宙人という設定！」
風田（フウダ）探偵「作中の衣装を 手袋まで完全再現！」
風田（フウダ）探偵「見ただけでは わからないだろうが この手袋は特殊な素材だ！」
風田（フウダ）探偵「いずれの容疑者も犯行時刻には 散歩中だったと語っており」
風田（フウダ）探偵「容疑を否認するも アリバイはナシ」
風田（フウダ）探偵「はたしてこの三人の中に 犯人はいるのか？」
風田（フウダ）探偵「はたまた本当に 宇宙人が犯人なのか？」
風田（フウダ）探偵「シンキングタイム・スタート！」

〇広い公園
風田（フウダ）探偵「では、正解発表だ」
風田（フウダ）探偵「おじいちゃーん！ 正解発表ですよー！」
目撃者「あんだってー？」
風田（フウダ）探偵「・・・お気づきの通り 目撃者は耳が遠い」
風田（フウダ）探偵「だから この人が 自分で宇宙人だと名乗ったところで」
風田（フウダ）探偵「目撃者には聞き取れない」
風田（フウダ）探偵「故に この人は 目撃者が言う『宇宙人』ではない」
風田（フウダ）探偵「さらに この目撃者は 目もあまり良くなくて」
風田（フウダ）探偵「黒服の男を見ても 闇に紛れてしまって」
目撃者「透明人間じゃ！」
風田（フウダ）探偵「・・・と言い出す始末だ」
風田（フウダ）探偵「宇宙人ではなく透明人間、とね」
風田（フウダ）探偵「故に この人も 容疑者から外れる」
風田（フウダ）探偵「では最後」
風田（フウダ）探偵「三人目のコスプレ男に 宇宙人と誤認される要素はあるか？」
風田（フウダ）探偵「宇宙人キャラのコスプレと言いつつ 実質的には郵便屋さんなわけだが・・・」
風田（フウダ）探偵「あるんだな、これが」
風田（フウダ）探偵「キャラに忠実な手袋だ」
風田（フウダ）探偵「目撃者は、逃げようとする犯人に 突き飛ばされた」
風田（フウダ）探偵「そのときの犯人の手の感触が 人間の手のものではなかった」
風田（フウダ）探偵「だから目撃者は 犯人が宇宙人だと考えたんだ」

〇広い公園
風田（フウダ）探偵「その後の警察の調べにより」
風田（フウダ）探偵「殺されたのは 麻薬の売人だと判明した」
風田（フウダ）探偵「事件の理由は」
風田（フウダ）探偵「客と間違えられて迫られたのが 怖かったからだそうだ」